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主モナ(P5)

最近どうにも心配なのが暁の立ち居振舞いだ。誰にでも優しくて聞き上手で思わせ振りな態度ばっかり取っていやがるから、みんながこいつに寄ってくる。それも老若男女も何も問わずだから恐ろしいもんだった。連絡はひっきりなしに来るし毎日誰かのものになりに忙しなく出掛けていく様はまさに魔性の男で、人たらしっていうのはこういうやつを言うんだなといっそ参考にすらなる。一度体はもつのかと訊いたことがあるが、「平気」と涼しい顔で一言だけ返してきた。まあ本人が大丈夫ならそれでいい。
……とはいかないのが現状だ。こいつは前述のとおりまさに魔性で、特に女の子に関しては憎たらしいことに引くほどモテモテなのだ。知ってる限り片手で数えられないくらいの女性に好意を向けられている。あんまり安易に気を持たせるのもどうなのかと思うし、いつかとんでもない修羅場になっちまうんじゃないかと考えると何故か本人よりワガハイのほうが心配になった。だいたい男なら一人の女の子に一途になるべきなんじゃないのか。ワガハイのアン殿一筋という姿勢を見習うべきだぜ、この男は。
そうして考えている間も暁はワガハイの横でベッドに寝そべってスマホをいじっていた。覗き込んでみると案の定女の子にチャットを送っている。嬉しい顔ひとつせず慣れきったような真顔なのが癪に障った。
「オマエ、いつか刺されるぞ」
呟いてみると、暁はこっちに目を向けてのほほんと微笑む。笑い事じゃないと思うが。自覚ってもんが足りていない。
「大丈夫だよ」
「へん、ワガハイどうなっても知らねーからな」
「心配してくれてるんだな」
言ってろ、と返して暁に背を向けて寝直す。出会った頃はもっと野暮ったくて冴えなくて何もかも不慣れって感じのやつだったのに、いつの間にかえらく垢抜けちまった。最初パレスの中で不安そうにワガハイに着いてきていたのももうずいぶん昔のことみたいに思える。
そうだ、今となっては人間関係も怪盗業もさっさと上手にこなしちまうこいつも、最初はよくワガハイのことを頼っていた。戸惑いを一心にこっちに向けてくるこいつの目は今でもよく覚えている。まあいろんなことに馴れてくれたおかげでパレスとメメントスの攻略なんかもかなり楽になって、取引相手としてはそうやって垢抜けてくれたのはもちろん喜ばしいことだ。それは違いない。ーー違いないはずなんだが、最近なんとなく面白くないような、妙な気持ちになる。
「モルガナ、怒ってる?」
ふと声をかけられる。それがどうも寂しそうな雰囲気の声だったから、仕方なく暁のほうに体を向けてやった。その眉がいつも以上に困ったみたいに下がっている。スマホはもういじってなくて、枕元に雑に置かれていた。
「怒ってはねーよ」
「よかった」
ああ、今の顔はちょっとなつかしいなあと思う。最初の頃の不安そうな顔と同じだ。例えばあの頃とか、満員電車でこいつが窮屈そうに縮こまってる時とか、クラスのやつらにひそひそ噂されてる時とか。ワガハイいつもぼんやり考えてることがあったんだ。
「なあ。オマエが女に刺されるのは自業自得だが……」
「うん」
「それ以外の事からは全部、ワガハイが守ってやるからな」
もうワガハイのほうがこいつより弱いのは分かってるし、こいつにはワガハイ以外にも守ってくれるやつがいっぱいいることも分かっている。けれど守ってやりたいことを諦めるのは嫌だった。なにせワガハイ男だし、紳士だから。……なんだかアン殿に抱くのと同じような気持ちだ。
「ありがとう」
暁は嬉しさをまったく隠そうとせず表情に出す。その笑顔があんまりに無防備だったから、これを見られるのはワガハイだけだったらいいのになあ、と柄にもないことを思ってしまった。


もなぴの鉄の一途な恋心をぺごくんの魅力MAX魔性の男スキルで揺れさせる瞬間見たくない!?見たい

ナルオド(逆裁4)

「みぬきはねえ、ぼくが二日酔いのときはいつもおデコにキスして早く治るおまじないをしてくれるんだよ」
何を言ってんだこの人は。近寄りたくないなとしか思えないが、時はすでに遅かった。この場から去ろうと背を向けた瞬間、ソファーに座っていた成歩堂さんに後ろから捕まえられてしまったのだ。力が強くていくら抵抗しても振り払えない。こんなことならもっと鍛えておけばよかった。
「でもそうだな、ぼくはオドロキくんほどおデコに自信がないからなあ。わざわざさらけ出すのもいやだな」
「まだ酔ってるんじゃないですか成歩堂さん」
「そう見えるかい」
見えますけど、むしろそうにしか見えませんけど。思いながら携帯をポケットから探しあて二日酔いについてネットで検索する。指が震えてボタンが押しにくい。背後で成歩堂さんが頭をぐりぐりと押し付けてくるのを感じながら何とか検索結果にたどり着いた。
「成歩堂さん、二日酔いにはオレンジジュースとチョコがいいらしいですよ。オレ買ってくるんで離してください」
「まだグレープジュースが残ってるからいらないなあ」
「いや、オレンジジュースじゃないと意味ないです」
「知らないのかいオドロキくん、グレープは万能なんだよ」
「じゃあグレープジュース飲んで治せばいいじゃないですか!」
彼の言葉は支離滅裂だ。いつも以上に意味がわからないしとりつく島もない。頼むから早く離してくれ、と祈りにも似た気持ちで軽く成歩堂さんの腕をはたく。しかしそのせいでさらに強く抱き締められていい加減泣きたくなった。いったいこの人はオレに何をさせたいんだ。
「そうだなあ、オドロキくんにはおデコじゃなくて唇にしてほしいかな、おまじない。してくれるだろ?」
冗談のような口調でも、冗談のような行動をこっちがしなければ離してはくれないということはよく分かった。やっぱりこの人は変わっていない、弁護士時代の映像で見たときのまま強引でズルくて怖い。オレは体の力を抜いて、彼の名前を呼んだ。
「何が見えてるんだか知りませんけど。もう全部分かってるならはっきり言ってくださいよ」
鎖だか鍵だかがどうせずっと表れていたんだろう。ハッタリでこの人に勝つことなんか当分は不可能だ、そんなことはとっくに分かっていた。
「おや。いいの?」
「はい」
もう半ばヤケクソで、暴くなりなんなり好きにしてくれとすら思っていた。どうせどこ行ってもこの人の前じゃオレは被告人だ、この人を好きになるというのはそういうことだ。ただこれが原因で事務所を辞めさせられて無職になったらどうするかとか、今はそんな心配ばかりをしていた。成歩堂さんはオレの背後で呑気に笑い声をあげ、オドロキくん、とオレに呼び掛ける。
「試して悪かったね。ぼくもきみが好きだよ」
「……殴っていいですか」
「二回目はいやだなあ」

小ネタ詰め

きゃーっ、と花も恥じらう女の子のような声を出してみぬきちゃんはオレにしがみつく。腹に回された腕を細いなあと思った。そうかまだ中学生だっけ。坂道はまだ続き車輪の回る速度は増して、なのにもっと速く、とねだられ苦笑する。「あ、オドロキさん、夕日!きれいですねー」「見る余裕ないんだけど」
(逆転4/おどみぬ)

雨ざらしの廃屋で破れて綿の飛び出たソファに影片が腰掛ける。勢いよく座るものだから埃が辺りに舞い上がった。マドモアゼルを庇いながら咳をする。輝く瞳のまま影片は僕を呼んだ。「お師さんの家は立派やなあ。おしゃれやし豪華やもん」なあマド姉、と微笑む影片にマドモアゼルは「そうね」と言った。
(あんスタ/宗とみか)

「羽風ーっ!」「なに、もりっち」高校の思い出ってのは自分で思っているよりもけっこう多くて、こんなのはその中のほんの一部だった。けれど一度思い出してみると意外に痛烈に輝いているから驚いた。この前同窓会で会ったからかなあ。記憶の中でもりっちが俺に手を振る。「羽風っ!」なに?もりっち。
(あんスタ/ちあかお)

大きな桜の木の下で亜双義がぼくに手を振っていた。その目が月明かりに負けず鈍く光る。歪んだ口元はぼくの名を呼んだ。何故か足を踏み出す気になれず、少し離れた場所から手を振り返す。「来ないのか?」曖昧に苦笑を返した。何だかお前が怖いんだ、現とは思えなくて。なんて言ったらきっと笑われる。
(大逆転/龍アソ)

「兄さん?」こっそり帰ってきたつもりだったが、気づかれたようだ。ルドガーの部屋の窓から細い月明かりが差し込む。「おかえり。……暗いな。電気つけて」「見えない」「ええ?分かるだろ、スイッチの場所くらい」分かるわけがないさ。こびりついた血の臭いだけはせめて気づかれないようにと祈った。
(TOX2/クルスニク兄弟)

「ルドガー最近すごく疲れてるでしょう?お節介かもしれないけど、これ良かったら食べて」そう言って渡されたものがこのレモンのハチミツ漬けだった。ドラマや映画で見たことがあるぞ、この状況。女子マネが片思いの男に渡すやつだ。この場合どちらも男である事にがっかりすべきなのだが、何故だか俺は素直に胸をときめかせていた。口に合うといいんだけど、と恥じらう姿が妙にかわいい、ああジュードお前、俺に新たな枷を作るのはやめてくれ。
(TOX2/ジュルド)

誰かに盗られるくらいなら、と今日も旅館のカラオケスペースでお客さんが歌っていた。結局宴会は朝まで続いたらしい。私は学生という特権もあって途中で解放されたけど、朝にみんなの話を聞くとそれはもう大変だったらしかった。「よかったねー雪子、うまく逃げれて」「ほんとだね」私の話に千枝は今日も笑ってくれる。これもいつまで続くか分からない。誰かに盗られるくらいなら、その続きにね、ねえ千枝私、共感しちゃったの。きっと怖がられちゃうね。一生言えない。
(P4/千枝雪)

龍アソ未完(大逆裁)

胸の谷間に酒を注いで客に呑ませる、という何とも下衆な楽しみ方が花街で流行しているらしい。亜双義は笑いながら、実に珍しくそんな猥談を繰り出してきた。動揺で軽く酒を吹き出すと汚いぞとまた笑う。顔にこそ出ていないがかなり酩酊していることが言動ではっきりと分かった。ぼくはまだそこまで酔ってはいない、はずだ。たぶん。
「キサマはどうだ、そういうのは」
向かいに座っていた亜双義はぼくの横へ移動すると乱暴に肩を組んだ。こいつ意外に絡み酒なのか、と思いながらそろそろと目を逸らす。まだ半分ほど残っている酒の水面を手持ち無沙汰に揺らしていると、突然耳にふうっと息を吹き掛けられた。ひい!と情けない声を出して倒れるように後退りをする。
「な、なっ、何を……!」
「まあ見ていろ」
ぼくが耳を擦って何とか感覚を忘れようとしている中、何故か亜双義はサスペンダーを両肩から落としシャツの釦を外し始める。行動の意図が少しも分からずただその様子を呆けながら見つめている間にその体がシャツすらも取り去った。と思えば、次になんと両手を使って胸を寄せ始めるのである。思考は完全に停止した。何なんだ、何をしているんだ、ぼくの親友は。
「成歩堂、注げ」
「……な、何を」
「酒だ」
口の中で声がひきつった。泥酔じゃないか、しかも明日接するのが気まずくなるような種類の酔い方じゃないか。というか酒が勿体ないし胸板が厚いとは言っても花街の女性程の谷間があるわけがないし、ああどの要素から手をつければいい?
「それとも下にするか?」
そう言って視線を下に向ける亜双義に慌てて「上で!」と返事をした。どうして食い気味にこんな宣言をしているんだと冷静に自分を鑑みるけれど、だって下だなんてあまりにも、あれだろう。とんでもないだろう。まあ上でもとんでもないのだが。
「はは、キサマもやる気じゃないか。では酒を注いでもらえるか」
やる気ではないよと訂正する気力すらない。首をガクンと縦に下ろして長い嘆息を拵えながら自分の杯を手に取った。ここまで来たらたぶん何を言っても聞いてはくれないと思う。たちの悪い酔っ払いとはたいていそういうものだ。どうか明日にはきれいさっぱり互いの記憶が消えていますように、そう願ってぼくは杯を傾けいったん空にしてからまた酒を注いだ。
畳を膝で擦りながら亜双義の目前にまで近付く。寄せられたことにより造られたほんの僅かな、些細でさりげない地帯をじっと見つめる。この酒を注いだあとは、ぼくの出番ということだよな。いや出番というのもおかしな話だが、まあつまりぼくが亜双義の胸板に溜まった(溜まるのだろうか?)酒を呑むということである。亜双義の体に顔を埋めて、である。……とてつもなく恥ずかしい。


俺とお前と出来心

ミヅクク(ポケモンSM)

「ミヅキもとうとうチャンピオンになったなあ、おめでとう!記念に何かプレゼントをさせてくれないかい?何でも好きなものを言ってくれ」
言ったら、ミヅキは微笑みを引っ込めて考え込むように俯いた。ひょっとしたら言いづらいものなのだろうか。「本当に何でもいいよ」と言葉を付け足してもその顔は上がらない。気を遣わせてしまっているかなあ、と少し反省しながら山の向こうに目を向けた。風がさわさわと凪いで心地が良い。ここでこの子と話したのも最近のことなのにずいぶん昔のことのように思えた。ポケモンリーグのことやポケモンとトレーナーに対しての思い、それを話したらこの子は笑ってくれたな。夕日に染まった頬をはっきりと覚えている。
「本当に何でもいいんですか?」
不意にミヅキがそう言ったので、慌てて視線を戻しながらもちろんと返す。彼女は唇を引き結び、ようやく顔を上げた。切羽詰まった様子でぼくを見ている。
「博士がいいです」
よく通る声だった。目がぼくを一心に捕らえて逸らされない。強い風が吹いて、彼女の少し伸びた髪の毛が揺れた。初めて会った日とは比べ物にならないほど大人びた、少女らしからぬ表情を浮かべている。子供の成長なんてあっという間だ。寝て夢を見て起きたら子供を辞めていた、そんな子だって少なくはない。その中で彼女は特にたくさん旅をしていろんな物を見ていろんな夢を見たのだ、大人にならないはずはなかった。ぼくはたぶんそれに一役買ってしまったのだろう。そういえばあの日、君は耳まで赤くなっていたっけ。
「私と浮気してくれませんか」
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