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主♂N(BW)

迷って迷ってぐるぐる回って、辿り着いたのがキミだったんだろうね、なんてまた電波なことを口走る彼は、今とても上機嫌なようだ。
ボクらは何度人生を始めて、そして終わったんだろうね。そんな哲学的なことを言われても、ただの子供の俺にわかるはずもない。あの博識のチェレンさえ答えなんて知らなさそうなことだし。
そんな難しいことばっかり考えてて頭痛くならないの?と訊いてみると、考え事が趣味なんだ、なんて天才みたいなことをのたまいやがった。あ、実際この人頭いいんだっけ?なんか俺、この人の抜けてるとこばっか見てるから実感湧かないな。
でもね、と彼は言葉を言い放つ。はいなんでございましょうか、こうなりゃあんたの電波トークにとことん付き合ってやる。
『キミと出会うまでは、ボクはこんな考えてもわからない問題はあまり考えなかったんだよ』と、まるでボクの電波はキミのせいだよみたいなことを言われてしまった。なんだよ俺を電波メーカーみたいに言いやがって。
『今まで数式を解くことや、ボクの行動で未来がどう変わるか、そんなことばかりに頭を使っていたんだけど、キミに出会ってからは、どうして人は人をこんなに好きになるのかとか、どうしてキミといるだけで世界が綺麗に見えるんだろうとか、そんなことばっかり考えるようになった』となかなか長い台詞を口にした彼は、その端正な顔に幸せそうな笑みを浮かべた。
えー、うん、つまりこういうことか。もともと電波だった彼に俺が恋を教えてしまったせいで、彼の電波っぷりに拍車をかけてしまったと。ああ、やってしまったかもしれない。
まあでもあれだ、もういいよ、どれだけ電波になっても。あんたも大概俺にべた惚れだけど、俺もあんたにこれでもかってほど惚れてんだから。

トウヤ+トウコ未完(BW)

「人間って面倒くさいわね」

久しぶりに帰った自宅のリビングでポケモン数匹と戯れていた俺に向かって、さっきから頬杖をついて上の空だったトウコが突然そんなことを呟いた。またこの女はなんなんだいきなり。双子のはずなのに、たまにこいつの思考がわからないときがある。あれか、哲学を語りたい時期か。中二病ってやつか。

「俺はおまえの相手するのが面倒くさいよ」

本音をぶちまけると、トウコがぼそりと『チョロネコ、いあいぎり』と呟いた。その言葉に呼応して、さっきまで俺に撫でられていたチョロネコが目を光らせてじりじりとにじりよってくる。ついでにこのチョロネコのレベル:85。

「嘘ですお姉様すいませんでした」

フローリングに土下座して必死に懇願する。鬼姉はよし許そう、とどっかのお偉いさんのように腕を組んで頷き、チョロネコにストップをかけた。今のこいつに似合う四字熟語は独裁政治で決まりだな。

「んで、どのへんがめんどくさいってんだよ」


このあと何を書こうとしてたのかが思い出せない

主♀ベル未完(BW)

「ふええ…」

ポケモン勝負で負けたあと、ベルは必ずこんな風に弱った声を出す。目は潤んでいて、今にも泣きそうでそわそわするけど、彼女はなんとかこらえて『やっぱり強いね!』と笑う。ああもうなんていじらしくて可愛らしいのか。今すぐ抱きしめておでことかほっぺたとかそこら中にキスの雨を降らせたいけど、そこはなんとか我慢して『そんなことないよ』と笑った。
別れ際、彼女はそれはもう最高の笑顔で私に手を振るもんだから、思わず頬がだらしなく緩みそうになったけど、頑張って頬を引き締めて普通の友達としての笑顔を作った。彼女が去ったあとも、私は今日の彼女の可愛さを反芻して幸せな気分に浸っていたのだった。
まあ、要約すると。

「ベルって可愛すぎない?」
「……ですね…」

私のベルについての話を約1時間聞いてくれていた優しい弟、トウヤはなぜか疲れきった表情で俯いて、力なさげに返事をした。

「どうしたのよトウヤ、調子でも悪いの?」
「原因トウコなんだけど…」

なんで?と尋ねた直後に、台所に立っていたチェレンがおぼんにお茶を乗せて居間に戻ってきた。『はいお茶』と慣れた手つきで机に湯のみを置いていくチェレンは、将来いいお嫁さんになりそうだった。ていうかここ私たちの家なのになんでチェレンがお茶淹れてるんだろう、という突っ込みはもはや私たちの間では愚問だ。

「…で、またベルの話?」

おぼんをテーブルに置いて、席につきながらため息をつくチェレン。なによ、面倒くさそうな顔しちゃって。薄情な幼なじみね。

「毎日おんなじこと一時間以上話されるトウヤの身にもなってあげなよ…。ほら、ものすごい残念な顔になってるよ」

チェレンがちらりと視線をやった先のトウヤは、それはそれは疲れ果てたような表情をして机に目線を落としていた。うわあ…これはさすがにちょっと申し訳ない…。

「ご、ごめんね、トウヤ…ベルが地上に舞い降りたエンジェルすぎてつい…」
「いやいいよもう…慣れてるし…」

そう言いながらも目前の弟ははぁーとやたら大きなため息をついて、出されたお茶の一気飲みを始めた。やけ酒ならぬやけ茶するぐらい疲れてんじゃないの!そんなんならもうやめてくれって言われたほうがマシよ!
火傷しないでよとチェレンに声をかけられながらお茶の一気飲みを完遂したトウヤは、ぷはーっというおっさんみたいな挙動をかまして湯のみを勢いよく机に置いたあとに、真剣な眼差しを私に向けた。

「で、けっきょくトウコはベルとどうなりたいんだよ」
「…へ?」
「ああ、それはぼくも訊きたい」

チェレンまで私をじっと見つめてくる。私ができることと言えば、瞬きをすることぐらい。
考えたこともなかった。私がベルとどうなりたいか、なんて。ただベルが可愛くてしょうがなくて、ずっと隣で見てられたらいいのになあって思ってただけで。

「トウコはベルと付き合いたいの?それか見てるだけで満足なの?」

チェレンが私に問いかける。
私とベルが、付き合う?そんな現実味の欠片もない話、あるわけがない。じゃあ私は見てるだけで満足なのか。普通に友達として傍にいて、恋の悩みとか聞いてあげて、あの子が誰かと結婚するときは笑って『おめでとう』って祝福して。それで私は、満足だと。幸せだって言えるのかしら。

「…よく考えとけよ」

何も言えない私にそう言い残して、トウヤが席を立った。遅れてチェレンも席を立って、リビングをあとにする。私はといえば、ただ俯いていることしかできなかった。


「あ、トウコ!」
「あ」

後ろから声をかけられる。

主♂チェレ未完(BW)

「この前さ、綺麗なお姉さんと観覧車に乗ったんだよ」

とある日。久しぶりにカノコタウンに帰ってきたぼくたち幼なじみ三人は、それぞれ自由に故郷を懐かしんでいた。
お昼になったとき、今日はうちでお昼食べなよ、とトウヤがしつこく言ってくるから、断る理由もないかなと思い、ぼくはトウヤの家にお邪魔した。ベルは誘わないのと訊いたら、さっき誘ったけど後で来るって言ってた、と彼は言った。他にも様々な雑談を交わしながら、ぼくらはリビングの席につく。キッチンから『今作ってるからもうちょっと待ってね』とトウヤのママの声がした。わかりましたと返事をしてから、ところでお昼ご飯はなんなのとトウヤに訊いてみる。オムライスだそうだ。トウヤのママが作った、シェフ顔負けのオムライス。そんな贅沢なものをお昼ご飯に食べられるぼくは幸せ者だなあ、と少し満たされた気持ちになっていたぼく。そんなぼくに彼が言ったのが、最初の一言だった。
綺麗なお姉さんと、観覧車。観覧車とは、ライモンシティの観覧車のことだろう。あれ、確かあそこの観覧車って二人乗りだったよな。
トウヤはやたら嬉しそうににやにやと頬を緩めながら、恍惚の表情でそのときのことを語る。

「いやさ、秋になったからもう山男いないかなーって思って観覧車に行ってみたんだよ。そしたらOLの綺麗なお姉さんがいてさ、一緒に乗ってくれない?なんて言うからさ、つい乗っちゃったんだよ」
「……な」

密室。男女。2人っきり。ここから導き出される真実って一つじゃないか…?ぼくはそういうのにあんまり詳しくないけれど、そんなシチュエーションでやることならわかっている。それに、トウヤはやたら嬉しそうにしてるし。

チェレンに嫉妬させたかったらしい
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