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「いやいや参りましたわハム子サン、まさか俺っちにハニートラップを仕掛けるとは」
街を歩いていると急に公子が俺の手を取った。おいどうしたと尋ねるが公子は鼻歌を歌うだけで返事をしない。指の間に細っこくて小さい指が割り入ってきて、がっちりと隙間を埋められてしまった。手の感触や温度が充分すぎるほどに伝わってくる。……もう一度言うがここは街中だ。
「綾時」
※キタローがおかしいです
夏休みのただ中、珍しくみんな出払ってしまっているロビーで、これもまた珍しく僕は下岸古さんと二人きりになっていた。向かいのソファに座る彼はじっと座っているのみで、何かをする気配もない。考え事でもしているのだろうか。普段からこういう風によく何かを考えているところを見るけど、いったい何を考えているんだろうなあ。謎に満ちた彼のことなので、きっと僕には理解できないような難しいことを考えているんだろう。まあ僕は僕で読書感想文の宿題のための課題図書を読まなければならないし、邪魔にならないように過ごしていよう。そう思いながら、古びた貸本のページをめくった。
それから30分程経って、不意に向かいで立ち上がる気配がした。そのまま歩いていった下岸古さんになんとなく視線を向けると、彼は一度別室に姿を消したが、すぐに戻ってきた。手には新しく紅茶のパックとスティックシュガー、それにマグカップが増えている。マグカップの数は…2個?
「紅茶…」
そう言いながら突然下岸古さんは顔をあげて僕を見た。ばちりと視線がかみ合ってしまう。驚いて目を逸らせなかった僕に対して、彼はすっと目を逸らしてしまった。
「…紅茶、飲む?」
天田と仲良くなりたすぎてどうしたらいいかわからないキタローちゃんを書きたかったんですねぇ〜