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ジュアル(TOX)

冷たいようでいてひどく暖かい。僕はこの大きな手がとても好きだ。時には僕を傷つける手、けれどいつも僕を守ってくれる大切な手。できることなら毎日どんなときでも握って、繋いで、絡めていたい。でも彼は繋ぐどころか握ることさえ許してはくれなさそうだから、だから僕は、別の好意の表し方を考案した。

「それが舐めること、だと?」
「うん」
「意味わっかんね…」

はあ、と自由な片手で顔を覆い大仰にため息をつくアルヴィン。珍しく裏をちらつかせるような笑みを浮かべることなく、本音だとすぐにわかるような呆れ顔を僕に晒していた。もしかして、焦ってたりとか、するんだろうか。そうだったらちょっと嬉しいな、なんて思ってしまう。だってアルヴィンの素顔をちらりと垣間見ることさえ多くはないこの僕が、アルヴィンの内面を引き出してるということになるんだから。逃さないように両手でしっかりと掴んである大きな手がほんのり汗ばんでいるのは、僕の勘違いじゃないよね、と胸中でひっそり呟いた。

「しっかしグローブまで外してくれちゃってまあまあ…これ付けんのけっこう面倒なんだぞ」
「ふうん」
「ふうん、て、おたくなあ」
「あとで僕が付けてあげるからいいでしょ」
「いや、よくねーって、ちょっジュードおま、話聞けよ!」

べろり、指の間を舐めあげてやる。驚きで強張る筋肉の動きが微かに伝わってきた。26歳のおとこに抱く気持ちとしては間違いかもしれないけれど、かわいいなあ、なんてつい感じてしまう。ごつごつした人差し指を口に含んでわざと音を立てながら舌を絡めると、上から舌打ちのような音が聞こえた。見上げると、揺れるひとみと視線がかち合う。ねえアルヴィン、顔があかいよ。

「こっちみんな」
「やだ見たい」
「みんな、って」
「いやだ」

みるよ。アルヴィンのそんな表情、なかなかお目にかかれないんだから。なんて言いながら、目線はそのままに指を一本一本くわえこんで丁寧に舐めていく。ジュード、と吐息たっぷりに紡がれる、余裕のないことばに対して募ったのは途方もないいとおしさだ。すっかり唾液でべとべとになってしまったアルヴィンの手から口を離し、じっとそれを見つめる。なんだか妙に淫猥だ、なんて思考が脳内でぐるぐる回った。やっと解放されたかと息を吐くアルヴィンの頬はやっぱりまだあかくて、耳さえ染まりかけている。かわいいなあ、2度目の呟きをまたも内心で行った。そしてもういちど彼の手を口に含む。うわ、と小さく漏らされた声は勘弁してくれという言葉にさえ聞こえた。ごめんね、まだ解放してあげないよ。人差し指の先端に軽く歯を立てる。びくつくアルヴィンを見てなんだか心が踊った。中指や小指なんかも、歯が当たるか当たらないかの強さで甘く噛んでいく。指先が小刻みに震えていた。見上げたアルヴィンはほんとうに恥ずかしそうに、あかくあかく色づいているもので。いま好きだよなんて言ったら僕はただの変態になってしまうんだろうか。
薬指にきつめに歯を立てればアルヴィンは僕の名前を呼んだ。ここから先は僕らだけの秘密なのだ。


なんていうかコレジャナイ

晶冠未完(輪ピン)

なあ僕って陽毬に似てるだろ。なんてね、ばかなことを言ったもんだ。だからなんだって言うんだろうね。

「晶馬?どうしたんだ」

兄貴は困惑を包み隠さず僕の前で露呈させる。きれいに整った爪が畳を掻いた。兄に覆い被さる僕は今、どんな顔をしているんだろうか。切羽詰まったような、余裕のないような、そんな顔をしてるんだろうなあ、どうせ。いつも兄貴の前ではどうやったって格好がつけられない。

「なんなんだ晶馬、プロレスごっこなら遠慮しとくぞ」

はは、と零された笑みが緩やかに空気に融ける。優美を感じさせるその微笑をいったい今まで何人の女の子に見せてきたんだ、なんて馬鹿げた問いが頭に浮かんだけれど、当然すぐに脳内から抹消した。そんなことを訊いてもどうにもならないんだ。

ジュアル未完(TOX)

優等生がなんかしらんけどうまそうなものをもくもくと食っていた。うまそうなものと言っても少しだけ赤みがかった白く小さい謎の物体だったのだが、俺にはそれがどうにもうまそうなものに見えた。なんでか考えようと思ったがめんどくさいので思考を一時中断する。器用に優雅に、まるでどこぞのお貴族のようにフォークとナイフを使って白いものを切り分けるジュードに声をかけた。なあジュードくん、それ俺にも一口くれよ。なんて言ってみるが一口で済ませる気はさらさらない。ジュードが俺にフォークとナイフを渡した瞬間白いそれは上品な皿の上から姿を消すのだ。親切心を利かせたばかりに自分の食べ物を全部奪われたジュード少年は俺にどんな態度を示すだろうか。怒るか泣くかそれとも許すか。最後のはすこし甘いか。

「いいよ」

俺の耳に優しい柔和な声が響いた。響いた?俺の靴音さえ響かなかったこの場所で、どうしてジュードの声は響くんだろうか。それにまず根本的な問題なんだがここはいったいどこなんだ。真っ白で何もない、しかし高級感漂う机と椅子、そしてやたらと平静にディナーを嗜むジュードは存在している。


息抜きに書いたうんこ雰囲気文だからかなり意味不明
ジュードくんの包容力のおかげで丸くなるアルヴィンが書きたかったような気もする

眞悧と冠葉(輪ピン)

渡瀬眞悧は俺の胸に人差し指を突きつけた。制服と皮膚の底に隠したものを探り当てられたような気分だった。赤い瞳が俺の緑を染める。桃色の長髪がふわりと揺れた。綻びた口元は相手を安心させるためのものなのか、相手に恐怖を与えるためのものなのか。一概に笑顔といってもたくさんの種類があるが、渡瀬眞悧の場合はその笑顔がどれに分類されるものなのか、少なくとも俺には区別がつかなかった。渡瀬眞悧はただゆるりと笑っていた。

「どうだい?」

見た目のわりに低い声が鼓膜を揺らす。何が、とは奴も言わなかったし俺も訊かなかった。掠れた声を聞かれたくはなかったのだ。だから俺はただ黙って渡瀬眞悧を見つめていた。奴の赤を俺の緑で染めあげるために。しかし奴の瞳はいつまでも真っ赤なままだった。そうして赤が細められる。とん、奴の人差し指がついに俺を突いた。

「シビれるだろう?」


(^O^)?

晶冠未完(輪ピン)

「おとなになったらひまりをおよめさんにもらうんだ!」

そう言って陽毬の手をとり笑う幼い兄貴の顔は今も鮮明に思い出すことができた。それに対して意味がわかっておらずただにっこりと笑った陽毬の顔も、二人を見て和やかに微笑む両親の顔もしっかり記憶している。ただ、その直後に僕が兄貴に言った言葉が、どうしても思い出せなかった。兄貴の左手と陽毬の右手、両方をとったところまでは覚えている。けれどそこから先の記憶がどうも曖昧だ。僕はあのとき、なんて言ったんだっけ。
陽毬の退院が近づくある日、いつもどおり男二人の華がない朝食の席で、ふとその話題を切り出してみた。喉元まで出掛かった答えがどうしても気になったのだ。きっと大したことはないものだったんだろうけど、このまま忘れっぱなしにしておくのは少々腑に落ちなかった。玉子焼きを掴む箸の動きがぴたりと止まり、すっとした目元が珍しくぱちくりと見開かれる。僕と同じ色を持つ瞳いっぱいに僕の姿が映った。

「また懐かしい話を持ち出してきたな」

かなり昔の話だし、そんなこととうに忘れてるんじゃないだろうかと懸念していたけれど、どうやら兄貴はあのときのことをちゃんと覚えているらしかった。陽毬関連のことに関してはやけに記憶力が優れているところは前から変わっていない。わりと長いまつげを伏せてずず、と味噌汁を啜る兄貴に問いかけてみる。

「あのとき僕がなんて言ったか、兄貴覚えてる?」

漬け物をこりこりと音を立てて食す兄貴は、それを最後まで咀嚼し飲みこんでからふっと口角を上げた。いつも女の子に向けるような優しい笑顔じゃなく、僕専用の、意地の悪いほくそ笑み。

「ああ、覚えてる」
「…僕、なんて言ってた?」
「言ってもいいのか?」

何を言ったんだ、あの日の僕は。少なくとも、兄貴に僕をからかうためのネタを提供してしまったことは間違いない。聞きたいような聞きたくないような、狭間で気持ちがゆーらゆらと揺れる。兄貴は僕の悩める姿をにやにやといやらしい笑みを維持したまま見つめていた。ああもう本当に何を言ってしまったんだ僕は。気になるけれど聞くのが死ぬほど恐ろしい。味噌汁から立ち上る湯気を見つめ一瞬迷った結果、僕が出した答えはなんとも臆病なものだった。知らぬが仏ということわざの使い時はきっと今だ。

「…やっぱいい」
「なんだ、いいのか?つまらんな」


僕は冠葉をお嫁さんにもらうよ的なことを晶ちゃんに言わせたかったんですが迂闊に高倉家の過去が書けなくて詰んだ
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