小ネタ詰め

・大逆転

「りっぱなぼく、ゆるましりませんかっ」驚くほど小さいぼくがこっちを見上げながらそう話す。ぼくは彼を抱きかかえ、ずいぶん広くなった船室の窓から海を見せてやった。「ぼくも探しているんだけど見当たらないんだ。まだどこかにいる気がしてならないのに」小さなぼくは不思議そうに首を傾げている。
(龍ノ介とゆるのすけ)

「ボス、これから何処に行くの?」「パリだ。知ってるか?」「…どこ?」「フランスだよ」それっきりボスは黙ってしまった。船の中の窓の外を見つめながら考え事してるみたい。「アイリスたちには次いつ会えるかな」「すぐ会える」「本当に?」ああ、って言ってほしかったのにボスは黙ったままだった。
(グレグソンとジーナ/フランス行き成功ルート)

花屋の前で立ち止まる彼は一輪の花をじっと見つめている。ボクはすぐには声はかけない、なぜなら全てお見通しだからだ。アヤメといったか、キミの妻は。英語で何というかを知らないほど名探偵は無知ではない。美しい花だね。そう呟くのは胸中だけだ。数秒の後、ボクは無知のふりをして彼の名を呼んだ。
(ホームズとミコトバ)

ある日、ホームズが女になった。言葉どおりの意味だ。もちろんどうしてそうなったのかと尋ねたが返ってくるのは専門外の科学知識ばかりで(むしろ専門にしている人間がいるのかと思うほど聞いたことがない単語ばかりで)、医者としての尽力はおそらく困難だと言えた。「まあ、じきに戻るだろう」安心したまえ、そう言って彼は笑ったので、一旦は彼を信じることにする。というかそれ以外にどう対処することもできなかった。「しかしどうにも落ち着かないな、無いものがあってあるものが無いというのは」「それは、まあ。そうでしょうね」「特に胸なんて猛烈に窮屈だ」「まあ…そうでしょうね」
(ホームズ♀とミコトバ)

ある日突然主席判事から預けられたこの妙な猫、一度も鳴かなければ誰か他人に懐くことも全くと言っていい程になかった。私自身も犬と蝙蝠以外の動物には疎く扱いがいまいちわからない。目が合うと逸らされるので、少なくとも好かれてはいないようだった。「あ、それ違うの。むしろ好かれてるなんじゃないかな、死神くん」ティーパーティーを開くから来てほしい、と私を誘った少女に流れでこの話をすると、彼女はその怜悧な瞳を湛えてハッキリとそう言った。「……好かれている?」「ワガハイもあたしと目が合うと逸らすんだけどねー。猫を研究してる人の論文を読んでみたら、それは嫌いだから逸らしてるんじゃなくて『この人は敵じゃない』って認識してるから目を逸らすんだって。つまり仲間って思われてるってことなの」よかったね死神くん。そう言って彼女は私にニコリと微笑んだ。その表情の眩しさを何となく正面から受け止めきれず目を逸らす。嫌われてはいない、果たして本当だろうか。考えながら一口嗜んだハーブティーは常よりも美味に感じられた。
(バンジークスとにゃめん)


・その他

「どういうつもりだね?」突然ベッドに押し倒された信さんは、まず最初に驚いた顔で俺を見上げた。しかしすぐに得意のふてぶてしい笑みを浮かべてこちらに微笑む。ずっとあなたが好きでした。そう言いながらズボンのジッパーを下げれば、彼の口角はさらに持ち上がった。額には僅かに汗が滲んでいる。
(逆検2/俺×信さん夢小説(?))

「ルドガーお前セックスのときにユリウスって呼ぶのやめてくれないか…胃が……」「え!?ご、ごめん家族サービスのつもりだった…………」「斬新だな…」
(TOX2/ユリルド)

「了ちゃん好きな子いる?」「番か?いない」「?えっと、違うよ」「なら何だ。恋というやつか。あれは非効率だ。興味がない」「でも好きな子いると楽しいよ」「…お前にはいるのか」「へへ」いるのか、誰だ。問い詰めても答えなかった。相手を殺してやりたいと思ったが何故そう思うかわからなかった。
(クラデビ/明と了)

ホームズとミコトバ(大逆転)

 

「ああ、実にヒドい夢を見た! 得体の知れない巨大な何かがボクの体の上にのしかかってだな、口に大量のセッケンを捩じ込もうとしてくるのだよ、キミ! 必死に抵抗するんだがうまく動けなくてね。いやあ大変だった、ほら見てくれよこの寝汗」
そう言ってホームズは額に貼り付いた髪を指差したが、それを言うのであれば私の髭もペタリと湿っている。夜中に突然叩き起こされ倫敦の闇をひとしきり疾走させられては互いにこうなるのも無理はないだろう。月を背負うホームズの目が爛々と輝いている。
「まあ、ここまで走ればもう悪夢も振り切っただろう。キミに魔の手が伸びることもない。安心したまえ!」
「……それは有り難いですね」
苦笑する私に対して彼は得意気な顔を崩さない。彼の突飛には耐性があるので、私も今更そこまで苛立ちはしなかった。恐らく昨夜にアルカロイドでも呷ったのだろう。
物一つ喋らない倫敦の街で、ホームズの「恐ろしかった」という呟きだけがこだまする。彼は己の体を両手でさすりながら嘆息しているが、それを見ているうちにだんだんと笑いが込み上げてきてしまった。
「おいおい、薄情だねミコトバ。友人がこんなにも怯えているというのに」
「ああ、いや、すまない。……ところでホームズ、妖怪というものを知っていますか」
「ヨーカイ?」
なんだいそれは。そう言ってホームズは頭に疑問符を浮かべる。確かに我が国以外でこの概念は親しまれていないだろう。
「妖怪というのは日本で大昔から伝えられている民間信仰なのですがね。まあ、幽霊をもう少しデタラメにした存在とでもいいますか」
「幽霊よりデタラメ? ハハ、まるでボクだな」
「……ははは!」
告げようとしていた言葉を先回りで取られてしまい、思わずまた吹き出してしまう。
そうだ、そのとおり。今ここにいる彼は幽霊より、いや妖怪よりデタラメな男なのだ。出会い頭に握手をしただけで私の全てを突き止めてしまったかと思えば、はちゃめちゃな推理で周りの者を心ゆくまで翻弄する。今日のように突拍子のない行動を取るのも今に始まったことではなかった。しかし私はそのどれもを不快に思ったことなどないのだから、ああまったくデタラメだ。そんな男が肩を震わせ恐怖している姿は、彼の言うとおり薄情かもしれないが可笑しくて仕方がなかった。
「幽霊より妖怪より、キミが一番デタラメですよ。キミより恐ろしいものなどこの世にいないのだから、そんな悪夢くらい可愛いものじゃないですか」
笑いの余韻が残ったままそう話す。ホームズはしばらく目を丸くしながら私を見つめていたが、やがて上機嫌そうににこりと微笑んだ。
「いや、いや。それもそうだな相棒。この名探偵以上の脅威などこの世に存在しないというのに、いったいボクは何に怯えていたんだか!」
礼を言うよと呟くとホームズはその場でくるりとターンした。こめかみに浮かんだ汗は月の明かりに照らされかすかに光っている。もう帰りましょうか。放った言葉は夜に広く溶けていった。私に返ってくる視線は静かに肯定の色を示す。
「ミコトバ、くれぐれも隣に気をつけてくれよ。キミの相棒は化け物だからな」
「ハハ、取って食ったりでもする気ですか?」
「それもいいな! キミはウマそうだからなあ」



電気のモノノケダンスを聴きながらかいたことはかろうじて覚えている

ホームズとミコトバ(大逆転)

「ホームズさんは昔からこういう人だったのですか?」
アイリスちゃんが作ってくれた御馳走へ上品に手をつける御琴羽教授にそう問い掛けてみる。彼は食べている物を飲み込んだあと丁寧に紙で口を拭うと、そうですね、と考え込む仕草を見せた。すると横でそのやりとりを見ていたらしいホームズさんが陽気な様子でこちらに割り込んでくる。
「なんだいミスター・ナルホドー。昔からボクが立派な名探偵だったかって?久々に聞いたな、愚問というモノを。さあミコトバ、華麗に答えてやってくれたまえよ」
「これでも昔よりはかなり落ち着いたほうかもしれませんね」
ホームズさんの囁きを華麗に無視した教授はぼくにニコリと微笑みながらそう言った。落ち着いているのか、捜査中に動き回ったりある日急激に落ち込んだりととにかく忙しない今のホームズさんが。しかも『かなり』落ち着いているという。とすれば昔の彼はいったいどれほど破天荒だったのだろう。ぼくの思案を完璧に読み取ってくれたのか、教授は昔のホームズさんについて話し始めてくれた。
「昔のホームズはなかなか困った男でしたよ。何より若さが有り余っていましたから、今以上に活発かつ感情の波が激しくてね。まあ、推理に関しては当時から鋭すぎるほどでしたが」
「うわあ、そうなんですね」
是非とも会うのはエンリョしておきたいな。そう思ったのがバレてしまったのか、「キミはサラリと失礼だね」とホームズさんが拗ねたように呟いた。あまり人の心を読まないでほしいものだ。
本格的にいじけてアイリスちゃんに遊んでもらいに行ったホームズさんを尻目に、御琴羽教授は微笑みながら紅茶を嗜んでいる。アイリスちゃん、また腕を上げたな。そう思いつつぼくも二杯目を注ぎ足そうとした時、ふと教授がぼくの名を呼んだ。学生に染み付いた本能だろうか、教授に名前を呼ばれると必要以上の大声で返事をしてしまう。教授はぼくのそれにも慣れた様子で頷き、向こうのホームズさんをちらりと一瞥した。
「先刻はああ言ってしまいましたが、彼はずいぶん頼もしくなりましたよ。人の奥の面をよく見るようになりましたし、父親としても立派になった」
「そうなんですか?」
「ええ。面と向かって言うのはなかなか気恥ずかしいのですが、彼は自慢の相棒ですよ」
少し照れくさそうに笑う教授の顔はとても珍しいもので、本当に二人は仲の良い友人なのだということを改めて実感する。あのホームズさんとあの御琴羽教授が友人だなんて初めこそ驚いたものだったが、お互いどこか惹かれるところがあるのだろうな。
「ホームズくん、お茶が入ったよー!」
奥の部屋からアイリスちゃんの声が響いた。その瞬間何故かぼくの体がガタリと揺れる。いや、ぼくの体ではなく椅子自体が揺れたのだ。まさかと思いつつ後ろを覗き込むと、予想どおり柔らかそうな金の髪がそこに蠢いていた。御琴羽教授は少しだけビックリしたような顔をしたが慣れた様子ですぐに元の調子に戻る。
「ホームズ。盗み聞きですか」
「……ううん、人聞きが悪いな相棒。聞き耳を立てていたと言ってもらおうか」 
何が違うんだと困惑するぼくの横で教授が苦笑している。アイリスちゃんがもう一度ホームズさんを呼び、彼は軽快に奥へと手を振り返す。
「さて、光栄な言葉も頂けたことだしボクは退散するよ。我が娘の世界一ウマい紅茶をどうぞ楽しんでいってくれたまえ」
「次はあたりをよく確認して話すことにしますよ」
軽口を叩いて少し笑ったあと、ホームズさんはひらりと片手をあげアイリスちゃんの元に歩いていった。御琴羽教授はにこにこと微笑みながらまた紅茶を優雅に味わいだす。ぼくもまた先刻のようにお茶を嗜むことに徹しようと思ったが、しかし。偶然にもぼくは見てしまった。アイリスちゃんの元へ戻っていくときのホームズさん、その口元には堪えきれず溢れ出したような笑みが浮かんでいたのだ。子供が親に褒められた時のようなひどく幼い顔だった。ちょうど御琴羽教授が目を逸らした瞬間だったのでぼくしかアレを見ていない。何となく、ぼくが見てしまって良かったのだろうか、という気分になる。
「成歩堂くん、もう紅茶は良いのですか」
そう声をかけられて慌てて"かっぷ"を手に取った。ちらりとホームズさんのほうを見やれば、彼はもういつもどおりの『ホームズさん』の顔をしてアイリスちゃんや寿沙都さんと笑い合っている。なんだか少し気まずい感情を持ち得ながら飲んだ紅茶は、しかしいつもどおり美味しいので唸る他はなかった。

72文字短文まとめ

お題お借りいたしました(cistus.blog4.fc2.com
元は65文字制限なのですが段落の区切り?的に書きやすかったので72文字で書いてます…すみません
基本大逆転/P5/TOX2です ジャンルバラバラだしいつも以上に自分だけ楽しい感満載ですが超超超楽しかったです!
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01. 告白(P5/主喜多)
「キャンパスに君を造れば常に共にいられると思ったんだが、どうにも君が描けない。悪いがもう少し眩しさを抑えてくれないか」知るか、と熱い顔を背けた。

 02. 嘘(大逆転/龍ノ介+アイリス)
また変な物買ったの、と言われて内心どきどきしながら買ってないよと返した。嘘でしょと切り捨てられた。アイリスちゃんの目がきれいな怜悧に光っている。

 03. 卒業(P5/主モナ)
卒業式の帰りに親と高い寿司屋に行った。モルガナのために幾つか寿司を持ち帰り家に帰る。「お疲れさん」そう言って出迎えられ、なぜか泣いてしまった。

 04. 旅(大逆転/龍アソ)
下調べだと言って連れてこられた船着き場、真夜中の港はあまりに寒い。「五十日か」「ああ」長いな、と口に出さずに思った。月は灯り代わりにもならない。

 05. 学ぶ(大逆転/龍アソ)
「哲学は好きか」急な質問に首を振ったら男は笑った。「オレは哲学の権威だ」キサマを叡智とすればな、とぼくの頬を撫でる。それならぼくもではないのか。

 06. 電車(P5/主モナ)
箱に詰められたニンゲン達が揃って機械を見ている。鞄を抱きしめる暁は今日も隅で縮こまっていた。きっと窮屈で憂鬱だろう。ワガハイが守ってやるからな。

 07. ペット(P5/主モナ+モブ)
転校生は正直噂よりヤバい。机に猫入れてるもん。「晩御飯何にしようか。…え、寿司?」猫相手に一人言を繰り返す転校生の後ろで俺は今日も震えている。

 08. 癖(P5/怪盗団)
勉強会という名目で集まった仲間は気づけばペン回し練習団へと変貌していた。皆挙って俺に指南を仰いでくる。「ジョーカー、次二刀流やってよ」無理だよ。

 09. おとな(大逆転/ジーナ+グレグソン)
大人なんか嫌い、って言ったらボスは笑った。「そうだな。大人なんか大抵ロクでもない」「ただ稀にアタリもいるぞ」見極めろ、言ってアタシの頭を撫でた。

 10. 食事(大逆転/龍シャロ)
「あっ、またなの」水槽を見たアイリスちゃんが悲壮な声をあげる。「またホームズくんがなるほどくんを食べてる」隣ではホームズさんが上機嫌に笑った。

 11. 本(大逆転/亜双義)
激情は凶器だ。印字された言葉を噛み砕いていく。Aは何故Bを刺殺したか。無論憎しみに抗えなかったからだ。愚かだと一笑に付すには、まだ確信が足りない。

 12. 夢(逆転4/オドみぬ)
「今夜みぬきの夢に招待してあげます」そう言われた夜、オレは彼女と空を飛んだ。街のネオンが足元で眩しく光っている。「オドロキさん、震えてますね!」

 13. 女と女(P4/千枝雪)
「千枝にはわからないよ」言えばあなたは目を丸くして子犬のような声でわたしを呼ぶんだと思う。それがわかってるのに言いたいの。千枝にはわからないよ。

 14. 手紙(大逆転/スサハオ)
「す、寿沙都ちゃん、それ…」「この間悪漢に襲われかけていた女性をお助けしたら後日こちらを頂いて…」「…そっか、恋文って手があったんだ…」「え?」

 15. 信仰(V3/転アン)
「転子にも神様はいるよ」「いません!」夜だから声が響いてしまう。こんなの夢野さんに聞かれたら終わりだ。「いるよ。秘密子そっくりの神様だよ」

 16. 遊び(V3/最王)
「けっこう深いなあ」王馬くんはナイフで傷ついた手を揺らす。「…自業自得だろ?」「おっ、負け犬の遠吠えってやつ?何と言おうとキミは負けたんだよ」

 17. 初体験(V3/是清)
「14の夏だネ。彼女は中学の先輩で、姉さんに少し似ていたんだヨ。もし彼女と姉さんが会えるならすぐに友達になるだろうと思ったのサ。…忘れられないネ」

 18. 仕事(大逆転/龍ノ介+アイリス)
屋根裏から降りるとアイリスちゃんが紙に何かを描いていた。絵遊びかな。「何を描いてるの?」「解剖の図解なの」…何だか急に申し訳ない気持ちになった。

 19. 化粧(大逆転/ホームズ+ミコトバ)
「ミコトバ、そこの口紅とってくれ」「ええと…これですか」「ああ違う!そこの横のだ!色でわかるだろう!」「…何故だか妻との会話を思い出しますよ」

 20. 怒り(V3/最原+百田)
「やるじゃねーか、終一」それが自分を殴った人間に告げる言葉か?違うだろう、そうやって笑うのも間違ってる。拳を再度振り上げた。僕は怒ってるんだ!

 21. 神秘(大逆転/スサハオ)
龍太郎さまが帽子を取って髪を解いたらあたしの朧気な想いも消え去ると思っていた。でもどうしたらいいの、今ここにいる寿沙都ちゃんにまだ胸が高鳴るの!

 22. 噂(TOX2/ヴィクトル+モブ)
「私に何か言いたいことでも?」ヴィクトル社長は仮面の下の鋭い瞳を私に向けた。思わず足が竦む。きっと噂は本当だ。元社長も室長も、彼が殺したのだ。

 23. 彼と彼女(TOX2/アルレイ)
「なあ、編集長になるのやめねえ?」「ええ?なんで」「だってお前忙しくなったら誰が俺と遊んでくれるんだよ」「エリーゼとかエルとか誘いなよお!」

 24. 悲しみ(大逆転/亜双義)
母の骨は小さな箱に欠片程のみ納められた。その箱の何と軽いものかと驚く。結局人など焼かれれば同じ形になるのだ。善人も悪人も皆、無機質な白に戻る。

 25. 生(大逆転/龍アソ)
帰国してすぐ「桜が見たい」と言い出した亜双義はぼくを桜並木の下に連れ出した。「花は見上げるに限るな」枕元等に飾るべきではない。言って笑っていた。

 26. 死(大逆転/シス+ロイネ)
「メス一本で全て分かるのは面白いでしょう」「うん。ママのことも開きたい」「でもそれじゃもうママと話せなくなるわよ」「…じゃあもう少し先にする」

 27. 芝居(P5/主明)
「本当に人を騙すのが上手だな」言って明智が笑っている。友達みたいな顔で夢に出てきてくれるとは思わなかった。「お前には負けるよ」「…言えてる」

 28. 体(TOX2/ユリルド)
兄の体は日毎に侵されていくが、目に見える残り時間は俺達の絆を強くしてくれた。前より話すようになったし笑顔だって増えたのだ。…ハッピーエンドだろ?

 29. 感謝(TOX2/ユリルド)
最後にありがとうと言いたくて口を開いたが声が出なかった。体も動かない。弟が何か言っている。泣き出しそうなのに涙を堪えている。ああ、強くなったな。

 30. イベント(大逆転/バンジークス+従者)
「万博か」無意識に呟いてしまい咳払いをする。従者に聞こえなかったかと後ろを見ると、マントを着込んだ彼と目が合った。彼は無言で私に外套を差し出す。

 31. やわらかさ(P5/主モナ)
女性は胸は柔らかいので好きだが、それよりも柔らかいものを俺は知っている。「オマエ最近出歩かねーな」「モルガナのせいだよ」というか肉球のせいだよ。

 32. 痛み(逆転4/オドみぬ)
「帰りましょう」パパが心配しますと言ってみぬきちゃんは笑った。月の光がその細い肩を照らしている。帰りたくないなんて言えないよな、兄貴なんだから。

 33. 好き(大逆転/ホームズ+ミコトバ)
難事件の解決後、疲れ果てたミコトバは黙って馬車に揺られている。「もう朝だな」「そうですね」日の光に照らされる横顔を眺めているのは嫌いじゃない。

 34. 今昔(いまむかし)(大逆転/ホームズ+ミコトバ)
「頭がすっかり白くなったな」ゴマシオアタマというやつか!そう笑う彼の目元にはかすかに皺が刻まれていた。お互い歳を取ったが、それすら少し喜ばしい。

 35. 渇き(大逆転/ホームズ+ミコトバ)
注射器をバラまき倒れていたホームズを叩き起こすと「足りない」と一言呟きまた昏倒してしまった。近頃事件の依頼が来ていないからだろう。ああ頭が痛い。

 36. 浪漫(大逆転/寿沙都+悠仁)
「おとうさま、それは邪道でございます」昔話でもしようと言えば娘は険しい顔でそう返した。「浪漫とは紙で読むものでございます」「…す、すみません」

 37. 季節(大逆転/龍アソ)
「過ごした時間はそこまで長くもないというのに、四季のどこを思い返してもキサマが居る」亜双義のその言葉を聞いて、そういえばぼくもだな、と思った。 

 38. 別れ(P5/主モナ)
悲しい夢を見たと言って暁がワガハイを抱きしめてきた。「死ぬなら俺の傍で死んで」「どこにも行かないで…」ワガハイは優しいから、返事はしてやらない。

 39. 欲(大逆転/龍アソ)
靴を履いていたオレの頭を突如押したのは親友だった。「おまえにもつむじはあるのだなあと思って…」つい欲が、と苦笑している。後で仕返さねばなるまい。 

 40. 贈り物(大逆転/ホムアイ)
小さな生き物はこの腕の中で何が面白いのかニコニコ笑っていた。手を触ると指を強く握られる。「離してくれないか」言ってもアイリスはただ笑うのみだ。

ホームズと寿沙都未完(大逆転)

「事件の記録を書いたのがすさとちゃんのパパってことは、すさとちゃんのパパは医学博士なんだよね?」
「ええ。そうですよ」
その二言から始まったアイリスとミコトバの医学議論は数十分経った今現在も途切れることなく進行されていた。10歳と45歳の交わす会話とは思い難い高度な見識と単語がひたすらに飛び交っていて、二人の表情は非常に充実していると言いたげに輝いている。ボクはその光景をずっと隣の部屋から覗いているのだがお互いこちらに気がつく素振りもなかった。いや喜ばしいことである、娘と友人がああして楽しげに会話を弾ませているのだから。喜ばしいことであるのだが、しかし何だろうかこの途方もない孤独感は。なぜボクに構ってくれないのだ彼女たちは!ああこんな荒んだ気分の時はキャラメルがいっそう甘く感じるのだ、と胸中で呟きポケットから我が友人を取り出したその時、背後からボクと同じような空気を醸し出す気配を?
??じた。振り返ってみると、そこには何とも言えない表情でミコトバとアイリスを見つめているミス・スサトの姿がある。彼女はワンテンポ遅れてボクの視線に気がつくと、少し慌てたようにこの名探偵の名を呼んだ。
「あ、あの。決して楽しそうなお二人がうらやましいなどと考えていたわけでは……」
何故かあたふたと言い訳を始めるミス・スサトもどうやらボクとまったく同じ心境のようだった。最愛の父と妹のような存在が仲睦まじく、しかし自分の与り知らぬ言語で意思を疎通させているのだ。心のどこかで感じているはずの寂しさがきちんと泳ぐ視線と落ち着かない指の動きに表れている。ボクは彼女に歩み寄り、その細い肩にそっと手を置いた。そしてぐいと顔を近づけ、「きゃあ」とか細い声を出すミス・スサトの美しい漆黒の瞳に寂しげなボクを映り込ませる。
「ええ、ええ。分かっていますよミス・スサト。あれはボクらを差し置いてあんなに楽しげに話している二人が悪いのです」
「ほ、ほ、ホームズさま、顔が少々近すぎるかと……」
「彼らも彼らですよ。ミコトバは娘と友を、アイリスは父親と姉のような存在を置き去りに盛り上がりつづけているわけですから。二人がああいう態度を取るのならこちらにも考えがある」
「か……考えとは?」
眉を下げ困惑した様子のミス・スサトがそう問いかけてくる。ボクはピンと人差し指を立て、もちろん、と囁いた。
「彼ら以上にボクらが仲睦まじくしてやるのですよ、まるで親子か何かのようにね。何なら『おとうさま』と呼んでくれて構いませんよミス・スサト!」
「ええっ……!そ、それは何というか、恐れ多いと申しますか……」
「遠慮なさらずに。さあ、今だけはボクを父だと思って!」
戸惑いをこれでもかというほど顕にするミス・スサトにもう一度「さあ」と促しを入れながらウインクをひとつ差し上げる。その瞬間、後ろから「ホームズ」とボクを呼ぶ声がした。
「先刻からずっと丸聞こえなのですが」
「ホームズくん、うるさいの」
振り返ったボクに対し我が相棒と我が娘はほぼ同時に口を開きピシャリとそう言い放った。冷えた視線が体に突き刺さる。
「放っておいてくれたまえ。ボクは今ミス・スサトと親子としての交流を深めているところなんだ。キミたちはキミたちで知的な交友を楽しんでいればいいじゃないか。ねえミス・スサト」
「うううん、同意はいたしかねますが……」
「もう、すさとちゃんのこと困らせちゃダメなの。ねー、すさとちゃん」
アイリスは呆れた声でそう言った直後、こちらへと歩み寄りボクの手を握った。「それにホームズくんはあたしのパパでしょ?」



オチ!おいオチ!し…死んでる
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