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龍アソ未完(大逆裁)

おめでとう!と杯を交わし合って盛大に祝いを遂げた夜、半ば引きずられるようにして部屋へと招かれた。一歩足を踏み入れた瞬間に布団へと突き飛ばされ、そこから先は言わずもがなといった感じの様相を呈している。ぼくを気丈に見上げる亜双義の喜ばしげな眼差しが、こちらからすれば猛毒だった。ああ今毒のことは思い出したくない、違う例えにすれば良かった。
「この三日は想像を絶するほど耐え難いものだっただろう」
「よくこらえた」
「さすがはオレの相棒だ」
どんどん態度と言葉が軟化というか、柔らかくなっていく。ついでにぼくに向ける視線も驚くほど甘いものになっていた。先刻まで書き留めておけだとかチョコザイなるなんとかだとかぼくに言っていた男とはまるで別人のようだ。頬を撫でられるたび溶けそうになる。なんとか理性を繋ぎ止めるため顔を逸らし肩口に光る汗に目をやったけれど、確実に逆効果でしかなかった。


オチわすれた!イエーーイ

龍アソ(大逆裁)

また明日と気軽な言葉を言い交わして、そのまま亜双義の住む寮に踵を見せた。春の夜は真冬なのではないかと思うほどに体が凍えて、気休めに手を擦り合わせて歩く。吐く息は白くこそ染まらないものの、やけに熱くあたりに漂った。自分の足音を聴きながら何歩か足を進めて、そろそろ部屋に戻って洋燈でも灯しているだろうかと何気なく振り返る。そうしてぼくは前に踏み出す足を下ろし、目を大きく見開いた。
亜双義は未だ寮の入り口に佇み、ぼくのほうに顔を向けていた。暗がりなので表情こそ窺えないけれど、夜風に合わせて髪と鉢巻とが揺れている。その肩には無造作に上着が羽織られていた。果たして振り向いたぼくに気がついているのだろうか。それくらい静かな姿だった。
きちんとした男だな、と思う。きっとぼくの後ろ姿が消えてなくなった頃にようやく部屋に戻り灯りをつけるのだろう。それは確証というよりは確信に近い、根拠のない決定だった。このままあの男の元に引き返して、今が出来上がるまでの昔話を訊いてみたい。けれどぼくは帰らなくちゃならない。
軽く笑みながら手を振る。振り返されることはなかった。それでも此方を見つめる真摯なまなざしは月にも負けず明るく灯っている。


亜双義が帰り際の後ろ姿を長いこと見送るのは龍ノ介だけだけど龍ノ介はそれに気づかずにうわコイツまじめだな……って思うっていうすれ違いホモラビリンス的なアレなんですけどぜんぜん伝わんねーなコリャ!?
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