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足立と特捜隊未完(P4)

君たちは僕の人生に思う存分クツ跡をつけていくがいいさ。赤と黒に覆われた、逆に言えば赤と黒しか存在しないこの世界を踏み荒らせばいい。そして僕の足跡を見えなくすればいいんじゃないかい。君たちはそれを望んでるんだろ?なら好きにしてみせてよ。でもね、その場合君たちは人殺しになってしまう。ひと一人の人生を消してしまうんだからね、そりゃあそれはもう殺人に等しい行為だよね。そのことに気づかなかった、なんてことはないよね?ただ見ないふりをしてやり過ごしてきたんだろう?


厨二臭が

晶冠(輪ピン)

僕の密かな想いはまさしく夜行列車だ。古びた車内のなかで無機質に存在する固い椅子に、静かに腰を下ろしているようなそれだった。がたんごとんと一定のリズムで僕らを揺らすそこでできればまっかな愛に似せた果実を分け合いたかったけど、残念ながら僕はそうすることができなかった。単純な話、僕は目の前のおとこに対するための果実を持ち合わせていなかったから。愛による死、死を選択するほど想う愛が存在しなかったということ。それに、たとえ僕が愛のために死を選択しようとも、そうしたいと願おうとも、目先のそいつがそれを否定した。選択する相手は俺じゃないだろうと、優しく諭すのだった。僕にはあった、選択する自信が確かに。けれど言葉を発することのないまま閉口する。人には優先事項というものがあって、僕のそれの一番は、彼じゃなかった。彼にとっての一番も僕じゃない。ふたりの一番は同じだった。まるで脳が繋がっているように、本当に僕らが繋がっているかのように。誰のために何をするかと問われれば、形は違えど同じ結論に二人は導かれるのだ。僕は、あの子のためだからと言ってすべてを捨て置くことはできない。けれどそれではいけないんだ、それじゃあの子を守れない。果実はふたつもみっつもない、たったひとつ。手のひらに降り落ちたそれだけ。僕の一番はきっといつだって不動のもので、僕が探し求めているものは、僕がどれだけ願ったって手に入ることはこの先もずっとない。だから僕は口を閉ざしてしまった。甘いにおいも何も漂わない、時が止まったような空間の中で、僕を見つめる冠葉は優しく微笑んでいる。兄貴、の顔を、しているのだ。さながら宇宙のような兄のおもいを弟の僕が読み取ることはできない。弟じゃないのなら読み取ることができるんだろうか、なんて忌々しい思考は殺してしまわなければならなかった。悲しみにも暮れられない僕は窓の外に視線を放り投げる。散り散りの星が瞬いていた。向かいの兄貴は長いまつげをはためかせ同じように窓に視線を向けている。それからぽつりと、おまえのにいちゃんになれてよかったよ、と。優しく追い討ちをかけるのだった。目を瞑って、うんと返事をすればそれまで。いまここにいるのはただの双子の兄弟だ。僕も兄貴の弟になれてよかったと、そんな答えしか用意はされていなかった。いつか僕の想いも事象の地平線に成り変わることができるだろうか。なにもかも封じこめておけるようになる日が来るんだろうか。いや、そうならなくちゃだめなんだ。そうだ、カンパネルラに恋したジョバンニなんて話は聞いたことがない。


そのうち書き直したいなあ

高倉晶馬(輪ピン)

僕は愚かに思考していた。海に沈むんだみんな。難破船に乗り込んで幾ばくか時が経って、もうそこが家になりかけていたというのに。突然崩れだした。そういえば僕は僕というひとりの人間であり個体であり子供なのだ。冠葉は冠葉という人間であり陽毬は陽毬という人間なのだった。白い憂いを握りしめて土を蹴ることしかどうせ僕にはできやしない。僕は高倉晶馬だ。そして今日も表札には三人分の愛と戒めが詰め込まれている。僕の元素はガムテープの下に眠っているだけだ。そうすることで僕たちはカラフルになれたのだから。カラフルにならなければいけなかった、と言ってしまえばそれで終わりだけど、モノクロよりはいいじゃないか。僕たちの見えない糸も蛍光色で塗ってしまえばいいんだ、そうすれば糸を辿っていつでも会える。ああビビッドにすべてを任せてしまいたい、それが意図だなんて信じない。
でも、ひとつ、考えたことはあった。果たして僕たちはそれぞれの意志をほんとうに「僕たちの総意」と言い切ることができたのか。直列の思考回路を望んだって並列にしかなりえない人間たちの脳のつながりの中で、僕たちだけは違うと主張できたことはあっただろうか。なかった。そんなはずはないのだ。僕は誰にもなれないしあの子だってあいつだって何者にもなれないだろう?総意なんてうそっぱちなのだ。総じた意なんてこの世界には存在しない。僕は高倉晶馬だ。あいつは冠葉だ。あの子は陽毬だ。当たり前のことに気づけばとうとう僕はひとりになってしまった。励ますように回る換気扇が怖くて仕方がない。さて、これから僕は足掻かなければならないのだろう。


どんより晶ちゃん
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