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紫ネズ未完(6番)

「きみはぼくの気持ちをただの興味だと言ったな」
「物珍しいものを見て舞い上がっているだけだと言った」
「ぼくはきみに惹かれているわけでもないし、愛しているわけでもない。そう、言ったよな」

埃が舞う室内で男の言葉が共に舞った。そう広くないベッドに男二人分の体重がかかる。ぎしりと軋む音が鼓膜を犯した。視界の端で燃える蝋燭の様は今の紫苑の瞳のようだとぼんやり思う。果たしてその話題は俺の読書を中断してまで話さなければならない重要なものなのか。そう言いたかったはずなのに、何故か喉の奥で言葉がつっかえた。唇が乾いていることに気づいたのはその直後だ。ぺろりと舐めあげると、紫苑の炎が勢いを増した、ような気がした。そこでおれはいま紫苑がとっている行動の意味を少しだけ悟ってしまう。もしかして、あんた。呟こうとして薄く開いた唇に紫苑の指が押し当てられた。白く細い頼りなさげなそれが、つうっと形を確かめるように唇をなぞる。驚いた、あまりにもなまめかしい動きをしてみせるものだから。

「ネズミ、あれからぼくは考えた。本当にぼくはきみに惹かれていないのか、きみを愛していないのか。考え抜いたよ。その結果導き出した答えは、なんだったと思う」
「やっぱり勘違いでしたー、ってか?」
「そう、見えるか」

炎が燃える。あかい炎が、しっかりとおれを捕らえている。
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