ある日所用で検事執務室を訪ねると、ぼくを迎え入れた亜双義の頭に猫の耳がついていた。よく来たな、といつもどおりの平静さでそう言った亜双義だが、しかし頭上のそれは小刻みに動いているしなんなら腰のあたりから黒い尻尾がニョロニョロと伸びている。当然ながら頭には大量の疑問符が浮かんだ。
「あの。どうしたんだ、それ。アイリスちゃんに貰ったとか?」
「いや、人工的な物ではない。生えてきたのだ?」
「……うん?」
「朝起きるとこうなっていた。耳も尻尾も本当に付いているものだ」