小ネタ詰め

お題お借りしました(shindanmaker.com/375517)


・モブサイコ

「律、つらいんでしょ」ばれないようにしていたのに兄さんの視線は全てを見透かしていた。彼を咥え込んだところがじくじくと痛む。それでもどうしてもやめてほしくなかったから困った。「大丈夫だよ。続けて」「律」「幸せなんだ」兄の眉が下がる。困らせていることが少し嬉しいなんて、初めて思った。
(モブ律/お題:無理をするのは得意)

いつから好きだったかと訊かれてもそんなの覚えていない。執着と嫉妬と少しの憎悪を抱えるうちにいつしか恋愛が付与していた、恋の中でも恐らく最低の類だ。あなたはきっと僕と同じ想いではないでしょう?「好きだよ、律」本当に?なんて聞き返してしまいそうな自分が嫌いだ。でも嬉しいのは本当だよ。
(モブ律/お題:素晴らしく救われないだけの、恋愛話)

想い人の結婚式の前日に『卒業』なんて観る愚か者は世界中で僕だけだろう。逃げようなんて言えるほど盲目ではないし相手も絶対に僕の手を取ってくれないのに。主役とヒロインの笑顔が脳裏にこびりついている。あと少しで式の時間だ。ちゃんとスピーチ練習しておいたよ。楽しみにしておいてね、兄さん。
(モブ律)

最近よく酒量を見誤る。鈴木が電話したようで、居酒屋で潰れた僕を兄さんが迎えに来てくれた。「珍しいね。こんなに飲むの」隣を歩く彼が呟く。そんなことないよ、あなたが結婚してからは毎夜こうだ。「兄さん」兄にそっと手を差し出す。暫くして意図を察した彼は「今日の律は甘えただなあ」と笑った。
(モブ律/お題:手だけつないで)

「なんであんなこと書いた?いつもは真面目なのに」至極おおまじめに書いた結果ですよ。と言ったら説教が長引いてしまうだろうなと思い口を閉ざすことを選んだ。「お前は優秀なんだから、将来のこともきちんと考えられるはずだ」笑ってしまいそうだった。いくら優秀でも基本でなければ意味がないのに。
(モブ律/お題:その言葉が、重い)

あ、僕はもう普通の恋愛はできないんだな、と明白に確信した。唐突な自覚を前に為すすべもなく笑うことしかできない。兄さんは舞台のセットみたいに大きな月の下でいつものように僕の名前を呼ぶ。この先、他の何がこの光景に勝てるのだろうか。僕の世界を定めるのは僕じゃない、いつだってこの人だ。
(モブ律)

事故や自殺のニュースが流れると兄さんはたまにじっとテレビを見つめる。画面には事件現場と現場の様子を伝えるキャスターがいるけれど、きっと兄さんは違う何かを見ていた。僕はその時、いつも所在がない。かける言葉のひとつも持たず兄の横顔を眺める。この瞬間、僕はいつも死んでしまいたくなった。
(モブ律)

僕にはきっと兄さんの遺伝子が足りていないのだ。だからこんな銀色の塊ひとつ曲げることができない。あなたをもう少しだけ僕の中に取り入れることが出来たなら、僕はきっと基本のラインに立てる。パンツをずらしてそこを口に含むと彼が呻き声を漏らした。朝まではまだ長い。兄さんは、きっと起きない。
(モブ律)

「好きな人?……ああ、いるよ」誰だよ教えろよ、とか、言える雰囲気ではなかった。その時の影山は大人みたいな顔をしていて、俺は自分がすごく子供であるように思えた。影山の頬にオレンジ色の夕日があたっている。それを見て初めて影山が女子に騒がれる理由がわかった。……帰り道で少し泣いた。
(律とクラスメイト)

影山が卒業式の答辞に選ばれた。生徒会長をしていたんだから当たり前といえば当たり前だ。式の当日、すました顔についた育ちの良さそうな小さな口から綺麗な言葉がつらつらと響く。だが俺は知っているのだ。影山、お前、確か一年前。その口で男とキスしていたことがあるだろ。放課後の教室で。しかも相手は兄貴だった。何の変哲もない、お前とは正反対の凡庸な、いかにも『モブ』という風貌の兄貴。なあ影山、どうしてよりによってあいつなんだ。……俺だってモブだよ。「僕達は今日、この学校から卒業いたします」
(律とクラスメイト)

霊幻さんが炎上した。心配だ、あの人はきっと見た目ほどは強くないから。マスコミは彼の経歴を好き勝手に書き連ねて下劣な印象操作ばかり行う。違う、違うだろう!霊幻さんはもっと善良で友好的で美しい方だ、そうだ、俺だけは知っている。俺だけはあの人の全てを分かっている!
今日、霊幻さんが記者会見を開くと知った。俺は急いで会場へ向かう。電気屋店頭のテレビには無数のカメラに囲まれたあの人が映っていた。なんて苦しそうな表情なんだ。霊幻さん、待っていてください。俺だけはあなたの味方だ!あなたは確かに俺を悪霊から救ってくださった、そして俺に微笑んでくださった。俺はあなたを理解している。あなたを孤独から救い出せるのはもう俺だけなのだ。
会場の近くまで来た俺は、そこで霊幻さんを見つけた。彼の隣には学生服の少年が立っている。彼は確か、相談所の受付にいた子供だ。霊幻さんはその子供を見下ろしかすかに眉を下げる。そのとき俺は悟ってしまった。ああ彼は、彼はもう救われたのではないか。俺なんて居なくても。あの子供が、彼を世界から掬い上げたのではないか。待ってくれ、じゃあ俺は何だというんだ?俺だけが彼を救えるはずではないか。息を切らしてここまで来た俺は、彼の隣に立つべき人間であるはずの俺は。あ、そうか。俺は最初からどこにもいなかったのだ。いなかったんだな。はは、はははは。俺は彼の何でもない、俺は、……。…………。
(霊幻と客)

「師匠に恋人ができたら嫌だって思うの、変ですか」5月11日の23時58分、うちに泊まりに来たモブ(なんともう19歳)はいま俺に覆い被さっていた。取り落とした自分のケータイがシーツの海で惑いつつ画面を光らせている。俺を見下ろすモブの指は震えながら唇に触れてきた。あ、日付、変わる。「好きです」
(モブ霊)

気がつけば師匠と電車に乗っていた。師匠は窓から差し込む夕日を眩しがりながら僕に笑いかけてくる。間もなく○○ですという車掌さんのアナウンスを聴くと、彼は僕に「次で降りるんだろ」と言った。そうか、そうだったかもしれない。師匠はどこで降りるんですかと訊いたら、俺は終点まで乗るよと返された「あの、師匠」「ん?」「この電車ってどこまで行くんですか?」師匠は答えなかった。
(モブ霊)

告白なんてされようものならそれはもう困ってしまうのだが、そう考えるほどいつ来るかいつ来るかと気にしている自分がいることが一番困りものだった。しかもあいつ、案外胸にしまおうとしていやがるのだ。隠し通すつもりならもっと嘘がうまくなれ。これじゃ毎日告白されてるのと同じなんだよ。
(モブ霊)

僕はこの人をここに残していって本当によかったんだろうか、と思ってしまった。そのあとすぐ、あんまり傲慢なことを考えた自分にびっくりした。この人の人生が僕次第で変わるなんて、そんなことあるわけないのに。でも思ってしまったのだ。だってこの人、昔より作り笑いが上手くなっているから。
(モブ霊)


・ヒプマイ(一左馬)

「よおく見とけや、自分がクソ童貞じゃなくなるとこをよ」下半身に何も纏わず俺に跨る左馬刻さんは、自分でも可哀相になるぐらい血の巡った俺のそれの先端に入り口をあてた。その唇にはいつもどおりに煙草が咥えられている。もう何がなんだかわからなくて泣けてくる。「は。おてて繋いでてやろうか?」

左馬刻さんの腹は固くて温かかった。腹筋をなぞってから脇腹を触ると、おい、と目の前の人が俺の名を呼ぶ。「もっと色気出せ。おままごとじゃねえんだぞ」必死なんだよこれでも、という目を向けるとその瞳は可笑しそうに細められた。「何ビビってんだ。セックスしてえんだろ?腹括れよ、いちろーくん」

腹から絶え間なく流れる血が目印のように砂に滲んでいく。一郎は岩場に俺を座らせた後、屈んで俺の腹の傷をじっと見つめた。やがて傷だらけのその手が傷に触れる。掌についた血を舌で舐め取る一郎に、おい、と声をかけた。「なんで撃った」目の前のガキは少しだけ笑う。「俺にはあんたしかいないから」


・その他

ショルダータッチからの「Hey」ね、OK。自慢の甥として完璧にやり遂げてみせるよ、おじさん。…相手はお腹の出た中年だけど。「どうした?」彼は不思議そうにこっちを見つめ返してくる。しかもこの先を想定していなかった僕の焦燥など知らず、ニコリと微笑んできた。…おじさん!次どうすればいいの!
(スパイダーバース/マイピタ)

「他の俺とセックスしたことある?」投げられた言葉に耳を疑う。慌ててキッチンに立つルドガーを見るが、こちらに背を向ける弟の表情は窺えなかった。「するわけないだろう」「そっか」トマトを刻む包丁の音がやけにクリアに聴こえる。刃に付く赤は恐ろしく鮮やかに光った。「嘘ついてたら殺すから」
(TOX2/ユリルド・キャサリンパロ)

「『マックス』もかなり定着してくれて嬉しいよ。皆もう私の本名なんて覚えてないんじゃない?」「覚えてるよ!マクシーンだろ」直後、あまりにも間髪入れずに答えてしまったことを後悔した。けどマックスは相変わらずそれを受け流す。周りの微かなざわつきを肌で感じて、いたたまれず咳払いをした。
(ライフイズストレンジ/ウォーマク)

ウォーマク(LIS)

クロエ・プライスが死んでからマックスは少し変わった。何がどう変わったかというのを明確に定義することはできないけど、確実に何かが前とは違っている。科学は万能、とは言っても彼女の感情を求める公式なんてどこにもない。『マックス』に何が加えられたのか?それはきっとナトリウムでもカリウムでもないんだろう。ただひとつ分かるのは、彼女はすごく綺麗になったということだ。
「どうしたの、ウォーレン」
急に立ち止まった俺に振り向く彼女の頬が橙に染まっている。
「マックス、すごく唐突なんだけど」
「うん」
「俺は君のことが好きなんだ。よかったら、俺と付き合ってほしい」
やっと言えた、と思った。まだ出会って一ヶ月程しか経ってないのに。時間の狭間でようやくたどり着いた一瞬間であるような気がした。
風が柔らかく吹いてマックスの髪を揺らす。彼女の特別な瞳に俺が映っている。シャッターを切るみたいに瞬きをしたマックスは、やがて世界の真実みたいなその眼差しで俺の感情を定義した。
「うん、知ってる。……キスしようか」

モブ律(MP100)

兄さんから紹介されたその人は芯の強そうな美しい女性だった。この人との結婚を考えている、と兄は僕に伝える。なんだか高嶺さんに似ているね、あと雰囲気は少し霊幻さんと同じものを感じる。やっぱりこの人はこういう人間が好きなんだ。よろしく、と手を差し出され笑顔でそれを握った。
兄さんはその女性のどこが素晴らしいかをたくさんの時間を使って僕に話した。彼女はそれを照れくさそうに聞きながらも、頬を赤くして喜んでいた。僕は適切な相槌を打ちながら微笑んでいる。膝に置いた手をきつく握りしめながら。時計の秒針の音がいやにうるさく鼓膜に響いた。兄さんが僕の名前を呼ぶ回数をなんとなく数えていたけれど、今日はあまり呼ばれないから途中でやめてしまった。
「茂夫くんとの出会いは運命だなって、ちょっと思ってるんです」
恥じらいながら彼女がそう言って、隣の兄さんも顔を赤くさせた。それはすごい、そう思えるほどの出会いってなかなかないですよ、と耳触りのよい言葉を投げる僕。自分なのにまるで他人のようだ。運命なんて持ち出してもいいのなら、僕と兄さんはどうなるというんだろう。兄弟として同じ姓に生まれてきた僕らは紛れもなく運命の二人ではないのか?そんなふうに柄にもなく馬鹿馬鹿しい思考ばかり巡る。でも考えてしまうのだ。
「すみません。質問してもいいですか」
「はい、なんでしょう?」
あなたは曲がったスプーンを完璧に元の形に戻せますか?
超能力を使って。
なんて、言えるわけがないんだ。もう全部が遅いのだから。
「……二人はどこで知り合ったんですか?」

モブ霊(MP100)

高校から制服がブレザーになった。ネクタイを結ぶのが難しい。春休み中に花沢くんに結び方を教えてもらって、なんとか格好悪くないように結べるようになった。
「おーおー、モブがネクタイしてやがる」
師匠はブレザー姿の僕を見て可笑しそうに笑った。何が可笑しいんだかわからないけど少し照れる。ソファーに座っている師匠は事務所の入り口に立つ僕を手招きした。それに従って師匠の前まで歩いていき、向かいに座ろうと思って彼を通り過ぎかけたときにがしりと腕を掴まれた。
「練習したのか?」
師匠に腕を離す気配はなかった。仕方なく横に座って、はい、と返事をする。僕を見やる瞳が何を考えているのか汲み取ることはできない。
「花沢くんに教えてもらって」
「へえ」
と、師匠の指が僕に伸びた。それは僕の顎をなぞる。突然のことにびくりと体を震わせてしまった僕に彼は小さな声で「動くな」と囁いた。その口が楽しそうに歪んでいる。猫にするみたいに首の下を撫でられて、次に喉仏に触れられた。
「ちゃんときれいに出来るようになったんだな」
首筋をゆっくりなぞられて、つい息を呑んでしまった。くすぐったい。背筋がぞわぞわする。師匠の指は下降して、やがて僕のネクタイの結び目にたどり着く。形を確かめるように触られたあとにずぼっ、と襟元に指を突っ込まれた。一方師匠のもう片方の手は僕のブレザーのボタンを外している。器用ですね、なんて軽口をたたこうと思ったけれど喉がかさついてうまく声を出せない。ネクタイが彼の手によって緩んだ。
「せっかく頑張って結んだのになあ。悪いな、モブ」
絶対悪いなんて思ってないだろ、あんた。外されたネクタイが床に落ちて、拾う間もなく首筋にキスをされた。俺のも外せよ、という言葉を耳に吹きかけられたらもう拒むこともできない。……この人のネクタイも床に落としてやろう。僕にできる抵抗って今はそれくらいだ。

モブ霊(MP100)

師匠の唇に赤い紅が引かれる。ほんとにこれで潜入するんだなあ、と軽く絶望しながらスカートの裾をおさえている僕は待機中の暇を持て余しながらその光景を見つめていた。鏡の中に映る、決して完璧とは言えないメイクをつくりあげる師匠。自分の唇同士を擦り合わせたり離したりしながら師匠のそこは違和感だらけの赤色に染まっていった。へんだなあと思うのに、僕はなぜだかそこから目が離せない。師匠の赤い唇。やわらかそうなようで、近づいたらぱくりと食べられてしまいそうな。いつもとは違う、不思議な感じがする。
「熱心に見てくるな、モブ」
鏡越しに師匠が僕を見ながらそう呟いた。気づかれていた恥ずかしさから慌てて顔を逸らす。……恥ずかしいって、何がだろう。スカートをおさえる自分の手を見つめる。
「お前にもつけてやろうか」
「……え?」
思わず顔を上げると師匠は口紅を僕に見せつけながらにやりと笑って言った。
「遠慮するな。何事も経験だ」
なんだかおかしな話になってしまった。べつにつけたいとはまったく思ってないんだけど。いいです、と返す僕になんてお構いなしに師匠はこっちに近づいてくる。
「絶対かわいくなるぞ」
そう動く目の前の唇に気を取られている間に、あっけなく体を捕まえられてしまった。
ソファーに座らされて、じっとしているようにと伝えられる。いつものように座ったら「パンツ見えてるぞ」と言われたのでなんとなく足を閉じた。しかし僕にそう言ったわりに同じくスカートを履いているはずの師匠は足を大きく開けてソファーに座っている。パンツ見えますよ、と言おうとしたけど、口を開けることを止められてしまった。
「じっとしてろよ」
口紅をかまえた師匠が僕の唇にそれをゆっくりとつける。そのまま横にすっと引かれて、唇の形を確かめるみたいになぞられた。くすぐったいような、すこし気持ちが悪いような。自分の一部なのに自分のものじゃなくなっていくみたいだ。目の前の師匠の赤色がつやつや光っている。あ、そういえばこの口紅、さっき師匠が使っていたものなんだ。そう気づいたとたん手に汗がにじんだ。触られれば触られるほど僕が師匠の唇をなぞっているような気分になってきて、心臓の近くがかゆくなる。さっき師匠をへんだと思ったけど、どうやらへんなのは僕のほうだったらしい。師匠が僕を見て面白そうに笑っている。唇が、僕に見せつけるみたいに三日月の形にゆがんだ。
「かわいいぞ、モブ」
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