ベレスとディミトリが結婚した世界線でその娘に惚れられるシルヴァン(シルヴァンはレス先が好きだった)という謎すぎる設定
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「おじ様、私きっと母様よりも強くなるよ」
父親譲りの薄い青がじっとこちらを射貫く。これもまた父から賜ったきらめく金の髪は俺の頬をふわりとくすぐった。自室に招き入れた俺を寝台に組み敷いている少女は、14という年齢にしてはいやに達観した雰囲気をその身に纏っている。
「しかもきっと母様よりも美しくなる。楽しみでしょう?」
ふ、と浮かべられるその笑みはともすれば悪魔のようにも感じられた。さすがは、母親と瓜二つの相貌だといったところか。……と口にしたらきっとこの子は怒るだろうな。
「ねえ、おじ様。いつか私が母様よりも強く、母様よりも美しくなったその時には、私のものになると約束してくれる?」
「……『放蕩息子』なんて言われてる男をものにしたって何の得にもならないと思いますけどねえ」
「得かどうかは私が決める」
しなやかな指がゆっくりと俺の顎をなぞる。高潔な魂は視線と化して一心にこちらに注がれていた。どんなに堅牢な檻よりも逃れ難い、審判にも似た視線だ。
ああ俺は一生、この血筋に心臓を絡めとられながら生きていくしかないのだろうな。そんなことを脳のもっと手前の部分で実感する。それとほぼ同時に、彼女が俺の名前を呼んだ。さあ私の愛に応えてみせろと言わんばかりの声色で。いつもどおり、それに返事はしない。応えなんてしたら……、……きっときみの父上と母上に殺されちまうよ。