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ミヅクク(ポケモンSM)

「ミヅキもとうとうチャンピオンになったなあ、おめでとう!記念に何かプレゼントをさせてくれないかい?何でも好きなものを言ってくれ」
言ったら、ミヅキは微笑みを引っ込めて考え込むように俯いた。ひょっとしたら言いづらいものなのだろうか。「本当に何でもいいよ」と言葉を付け足してもその顔は上がらない。気を遣わせてしまっているかなあ、と少し反省しながら山の向こうに目を向けた。風がさわさわと凪いで心地が良い。ここでこの子と話したのも最近のことなのにずいぶん昔のことのように思えた。ポケモンリーグのことやポケモンとトレーナーに対しての思い、それを話したらこの子は笑ってくれたな。夕日に染まった頬をはっきりと覚えている。
「本当に何でもいいんですか?」
不意にミヅキがそう言ったので、慌てて視線を戻しながらもちろんと返す。彼女は唇を引き結び、ようやく顔を上げた。切羽詰まった様子でぼくを見ている。
「博士がいいです」
よく通る声だった。目がぼくを一心に捕らえて逸らされない。強い風が吹いて、彼女の少し伸びた髪の毛が揺れた。初めて会った日とは比べ物にならないほど大人びた、少女らしからぬ表情を浮かべている。子供の成長なんてあっという間だ。寝て夢を見て起きたら子供を辞めていた、そんな子だって少なくはない。その中で彼女は特にたくさん旅をしていろんな物を見ていろんな夢を見たのだ、大人にならないはずはなかった。ぼくはたぶんそれに一役買ってしまったのだろう。そういえばあの日、君は耳まで赤くなっていたっけ。
「私と浮気してくれませんか」
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