渡瀬眞悧は俺の胸に人差し指を突きつけた。制服と皮膚の底に隠したものを探り当てられたような気分だった。赤い瞳が俺の緑を染める。桃色の長髪がふわりと揺れた。綻びた口元は相手を安心させるためのものなのか、相手に恐怖を与えるためのものなのか。一概に笑顔といってもたくさんの種類があるが、渡瀬眞悧の場合はその笑顔がどれに分類されるものなのか、少なくとも俺には区別がつかなかった。渡瀬眞悧はただゆるりと笑っていた。

「どうだい?」

見た目のわりに低い声が鼓膜を揺らす。何が、とは奴も言わなかったし俺も訊かなかった。掠れた声を聞かれたくはなかったのだ。だから俺はただ黙って渡瀬眞悧を見つめていた。奴の赤を俺の緑で染めあげるために。しかし奴の瞳はいつまでも真っ赤なままだった。そうして赤が細められる。とん、奴の人差し指がついに俺を突いた。

「シビれるだろう?」


(^O^)?