僕は青春時代を借りてきた猫のように大人しく大人しく反抗もせず虫よりも小さく酸素を吸いながら過ごしてきたんだよ。君と違って将来の役に立ちそうもない数式の羅列を白い紙に書き綴って勉強がお友達とでも言うかのように問題集と見つめ合いながら細く細く二酸化炭素を吐いて生きてきたんだよ。君はこの前学年トップをとったらしいね、堂島さんから聞いたよ。あの人ね、嬉しそうに君の優秀さについて話すの。笑いながらそれに付き合う僕の口内は反吐の溜まり場と化してたよ。僕さ、君が勉強してるとこ見たことないんだけど。放課後はいつもお仲間たちと仲良く遊んでるよね?事件についていろいろ嗅ぎ回ってたりしてさ。でもそんなことばっかりしてるのにテストではひょいといい点とっちゃうんだ。君いつか死に物狂いで勉強してるクラスメートの誰かに刺されるよ。まあ安心してよ、その前に僕が君を殺してあげるからね。なんか君って見てるだけですっごい腹立つんだよね、なんでもそつなくこなしちゃって、いつも人に囲まれてて、青空がよくお似合いでさ。僕ね、そういう奴大嫌いなの。だからかなあ、この場所すっごい赤いでしょ。君に全然似合わないところをわざわざ用意してあげたんだよ。はは、こんなとこが死に場所になるなんて可哀想だねえ。でも君なんかより僕のほうがずっと可哀想さ。昔から勉強ばっかり強要されてやりたいことなんて全然できなかったし、やっと刑事になったと思ったらちょっとのミスでこんなド田舎に左遷されて。涙なしには語れないねほんと。そのへんの視聴率を意識してるのバレバレなドキュメンタリーよりよくできた不幸話だ。ほら、同情したでしょ?じゃあ同情がてらに死んでよ。お優しいリーダーくんならそれもできるだろ?ほら、ねえ、早く死ねよ!ああもう顔を見るだけで吐きそうだ!

「バッカみたいですね足立さん」

バカだって?何が、どこが!僕の何を知ってどこを見てそんな根拠もクソもないことを言ってんだ!バカは君だよ、大バカだよ君は!ああもう僕完全にキレちゃった。君には特別に警察のシンボルを使ってあげようか。ほら、重そうでしょ、怖いでしょ。これ一つあれば君の命なんて簡単に奪っちゃえるんだから。ああほら、君の頭に銃口が向いてるよ!おら、もっと間抜けなツラ晒したらどうなんだ!なに笑ってんだよ君は!

「引き金も引けないくせに何してんですか」

引けないくせにってなんだよ、引けるに決まってんだろ!僕は刑事だよ?バカにするのも大概にしろよこのクソガキが!ああ、撃ってやる、撃ってやる!てめえ動くなよ当たんないだろ!

「もういいでしょう足立さん」

はー、とため息を零す目の前のクソガキ。くそ、くそ、くそ!こっち来んなよバカが!これだから低脳は駄目なんだ、本当に撃ってくるわけないだろうとか思い込んでやがる!ああわかった、大人怒らすとどうなるか思い知らせてやるよクソガキ!くっそ引き金すごい重いんだけど!くそ、くそ!なんで引けないんだよ、なんで弾出ないんだよ!

「ほら、やっぱり撃てないんだ」

うるさいやめろ!撃てるよ、撃てないわけないだろ!くそ、ああ、なんで、なんで撃てない、くそ、なんだよこれ、くそ、

「可哀想ですね、足立さん」

本当にかわいそう。そう言った。言われた。ああ、もうだめだ、同情された。こんな、世間なんてなんにも知らないクソガキに。見下されたんだぼくは。ああもういや、いやだ。せかいなんてほろびてしまえ、おまえもはやくしんでしまえ。ぼくはおまえがにくくてにくくてしかたがない。ぼくはおまえがこわくてこわくて、しかたがないんだ。


何も考えずに書いたら急展開になったうえに足立が情緒不安定になった 落ち着けキャベツ太郎
番長は足立を怒らせたり焦らせたり怖がらせたりする天才なんじゃないかと勝手に思ってます