未プレイ時に書いたもの
----
鳥のさえずりが意識の向こうで聞こえて、瞼を持ち上げると部屋に日差しが射しこんでいた。ああ、朝か。いやもしかしたら昼かもしれない。久々のまともな寝床が気持ちよくてつい寝過ぎてしまったのか、体にけだるさを感じる。
昨夜、休憩場所を散策していたときに草の生い茂る地の奥にひっそりと存在している村を発見した。希望は薄かったが、村の入り口近くにいた老人にここで少し休ませてはもらえないだろうかと掛け合ってみたところ、意外にもあっさりと了承をもらえたうえに少しと言わずに一晩泊まっていけとありがたい言葉を頂いたのだ。そして、その老人の家で寝具を借り、ぐっすり睡眠をとって、今に至る。
やはり野宿とでは到底寝心地が違う。外で寝るには、いつ敵が襲ってきてもすぐ対応できるように座って眠りにつくことが多いから、こうやって横になれることが幸福に感じられる。もう少しだけこの幸せを味わいたくて、起きるのがだんだんと億劫になり始める。この辺り一帯の気温は低めだから、この毛布の温もりは反則だ。ああもう離さないぞむにゃむにゃ。

「おい」

私が毛布を強く握りしめたと同時に、布の上からから聞き慣れた声が降りかかった。耳に低く響く重低音はきっと、私の信頼するサポート役の彼だ。ん、しかし昨日村を訪ねたときにはいなかったのに、どうして今ここにいるんだろうか。思考していると、体を小さく揺すられた。

「そろそろ起きたらどうだ」

ゆさゆさと一定のリズムで揺られる体がむしろ心地よくて、また微睡みの中に飛びこんでしまいそうになる。起きろと囁く声も、もはや子守歌の代わりにしかならない。ああ、でも起きないと。せっかくルシフェルが起こしにきてくれているんだから、この温もりとも別れないといけない。それは頭ではわかっているが、いかんせん体のほうが言うことを聞かないんである。かろうじて滑り落とした言葉は、『あと5分』というただの悪あがきだった。

「あと5分とかなんとか言って、けっきょく1時間は寝るんだろう?ほら、早く起きろ」