文机に乗せるぼくの手に、ぼくより少し大きい亜双義の手が重ねられる。ずいぶん熱い。どちらの熱だろうか。溶けてなくなってしまいそうだと考えている間にも、ぼくの指の隙間に亜双義の骨ばった指たちが差し込まれていく。するすると埋められて、ついにはぴったりと合わさってしまう。思考が箒でも掃かれているみたいに散り散りになっていった。課題が残っているのだけれど。筆を動かさなければならないのだけれど。耳元で吐息がひとつ吹いた。もう何から何まで、熱い。
「成歩堂、龍ノ介」
名字と名前の間に3秒程の間があった。龍ノ介、と呼ぶ声ばかりが鼓膜のあたりで遊び始める。肩に置かれた片手は少しずつ上がっていった。詰め襟を過ぎるとぼくの首筋にたどり着き、そこで軽く爪を立てる。ああ三日月が刻まれた。
「あ、……亜双義」
「うん?」
「課題、終わらせないと」