「この前さ、綺麗なお姉さんと観覧車に乗ったんだよ」

とある日。久しぶりにカノコタウンに帰ってきたぼくたち幼なじみ三人は、それぞれ自由に故郷を懐かしんでいた。
お昼になったとき、今日はうちでお昼食べなよ、とトウヤがしつこく言ってくるから、断る理由もないかなと思い、ぼくはトウヤの家にお邪魔した。ベルは誘わないのと訊いたら、さっき誘ったけど後で来るって言ってた、と彼は言った。他にも様々な雑談を交わしながら、ぼくらはリビングの席につく。キッチンから『今作ってるからもうちょっと待ってね』とトウヤのママの声がした。わかりましたと返事をしてから、ところでお昼ご飯はなんなのとトウヤに訊いてみる。オムライスだそうだ。トウヤのママが作った、シェフ顔負けのオムライス。そんな贅沢なものをお昼ご飯に食べられるぼくは幸せ者だなあ、と少し満たされた気持ちになっていたぼく。そんなぼくに彼が言ったのが、最初の一言だった。
綺麗なお姉さんと、観覧車。観覧車とは、ライモンシティの観覧車のことだろう。あれ、確かあそこの観覧車って二人乗りだったよな。
トウヤはやたら嬉しそうににやにやと頬を緩めながら、恍惚の表情でそのときのことを語る。

「いやさ、秋になったからもう山男いないかなーって思って観覧車に行ってみたんだよ。そしたらOLの綺麗なお姉さんがいてさ、一緒に乗ってくれない?なんて言うからさ、つい乗っちゃったんだよ」
「……な」

密室。男女。2人っきり。ここから導き出される真実って一つじゃないか…?ぼくはそういうのにあんまり詳しくないけれど、そんなシチュエーションでやることならわかっている。それに、トウヤはやたら嬉しそうにしてるし。

チェレンに嫉妬させたかったらしい