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ある日所用で検事執務室を訪ねると、ぼくを迎え入れた亜双義の頭に猫の耳がついていた。よく来たな、といつもどおりの平静さでそう言った亜双義だが、しかし頭上のそれは小刻みに動いているしなんなら腰のあたりから黒い尻尾がニョロニョロと伸びている。当然ながら頭には大量の疑問符が浮かんだ。
修道院を見回りながら歩いていた夕刻、奥まった廊下にふとディミトリの姿を見つけた。虚空をじっと眺め、何をするでもなく立ち尽くしている。その目は何かをじっと捉えているようにも見えたし何も映していないようにも見えた。
「はは、やっぱりこりゃあいいもんだな。いちばん手軽かつ気が晴れる」
「ねえエーデルちゃん、詩を書いてみてくれないかしら」
酔っている、この場にいる全員。わかっていることはそれだけだった。今私の首筋を舌でなぞっているのはクロードで、私の頬を手のひらで撫ぜているのがディミトリ、それらを止めまいと後ろから二人の服を引っ張っているのがエーデルガルトだった。三人の表情には普段の聡明さや冷静さはほぼ失われており、自分もまたふわふわと脳が陽気な感覚に陥っていたのですこぶる場は雑然としていた。