エーデルガルト=フォン=フレスベルグはクロード=フォン=リーガンのことをよく理解できていなかった。初めて出会った頃から飄々とした態度と相手の奥底を覗き込もうとする瞳は変わらず、「油断ならない」という認識以外の確固たる印象を抱くことが出来ずにいた。その唯一つの認識は、彼女の手配した刺客の強襲があえなく失敗に終わったことでより強固となる。誰より早く逃げ出したクロードは、しかしきっとただ逃げ出したわけではなかった。何処まで分かっていたのか、あるいは本当に天の配剤とやらに賭けたというのか。かくして彼は村に『偶然』身を寄せていた傭兵を見つけ、あの危機をくぐり抜けたのだ。──エーデルガルトはクロードをよく理解できていなかった。


「ま、裸の付き合いってのもたまにはいいだろ。それに誰も彼もこんなに酔ってりゃあ朝には綺麗さっぱり忘れてる」
上着を脱いだクロードがそう呟く。その顔は常どおりエーデルガルトの得意としない得体の知れなさに満ちていたが、唯一その瞳だけは通常と少し違っていた。はっきりとした好奇心とわずかな劣情が浮かんでいたのだ。彼に跨がれた師が少しだけ眉を下げながら褐色の肌を眺めている。師の隣には頬を赤くしぼんやりとそれを見つめるディミトリの姿。エーデルガルトの頭はこの場にいる誰よりかは冷静なように、自らでは思われた。
「皇女さま、あんたはどうする。嫌なら帰ってもいいんだぜ」
褐色の少年は服の上から師の体をなぞりつつ、エーデルガルトに向かってそう問いかけた。



絶対に4Pしてほしいという意志は消えない