「初夜いうやつかこれ?」
「は?」
「いや、今の状況。俺がお前の家泊まる。お前一人暮らし。当然二人きり。ほんで俺ら」
「おん」
「こ」
「こ?」
恋人同士、とずいぶんな先細りを音声で表してから瀬戸はバッと俯いた。その耳は真っ赤に染まっている。いや、言い出したんお前やし、言ってる最中のこっち照れさしたろみたいな態度どこいってん。言葉と態度のデクレッシェンドが過ぎる。
「お前がそう思うんならそうなんちゃう」
「なんやそれ、その感じイヤやわなんか。俺に全部委ねるみたいな態度よくないで」
「いや、そんなん言われても。相手ありきのことやから俺の一存で『初夜や』とはならん訳やし」