「しゅ、しゅ、終一!DVD止めろ!今すぐ止めろぉ!」
僕に抱きついてそう大声をあげる百田くんは目尻に涙を溜めていた。自分より大きい人間に抱きつかれて身動きをとるのは難しい。百田くんのせいでデッキまで歩けないんだよ、と言ったけど聞こえていないようだった。まあそもそも僕が百田くんに「ホラー映画を観よう」だなんて誘ったのが間違いではある。最初はもちろん断られたけど、通りすがりの王馬くんに「うわ百田ちゃんホラーも見れないの!?だっせぇー!」などと野次を飛ばされたことで一気にムキになってしまった結果、この状態になったのだ。
「百田くん、今止めるから……」
「お、おう、でもビビってるわけじゃねーぞ!ただちっと用事を思い出してだな……」
「うん、わかってるから」
と僕が言った次の瞬間、スクリーンいっぱいに血まみれの怨霊が映し出された。文字にするのが難しい悲鳴をあげた百田くんはスクリーンから顔を背け僕の肩に顔を埋める。しがみつく強さはより増してしまった。