酒をしこたまかっくらい、もう右も左も正も誤もあやふやになってきた午前壱時、亜双義の部屋。ぼくはただひたすら気持ちが良く体がふわふわと浮かんで、箸が転がるだけで数分は大笑いしていた。脳の細胞がどんどん眠りについていっているような感覚がある。ああ酔っているなあと自覚することはできているのだが、だからと言ってこの異様な楽しさが消えることはなかった。向かいの亜双義のハチマキがたなびいている。面白い。
「成歩堂。キサマ、聞いているのか?オレは至極真面目な話をしているんだぞ」
亜双義は鬼のような剣幕でぼくが持ち込んだダルマさんに話しかけていた。まったく顔に出ていないがコイツも相当酔っている。「キサマは本当にこぢんまりとしているな」っておまえの中でのぼくの寸法はどれだけはちゃめちゃなのだろうか?目の前の光景を肴にまた一杯酒をあおり、美味しいなあと嘆息する。ううん、しかしツマミを初めのほうで平らげてしまったのは確実に失敗だった。酒だけではやはり口が寂しい。亜双義のヤツときたらなかなかの呑み助なのだから、もう少し多く用意しておけばよかったな。
「……おい!キサマ、まったく聞いていないだろう!」
亜双義が怒りを乗せた声でダルマさんを揺さぶる。そっちのぼくもこっちのぼくも亜双義の話をまったく聞いていなかった。ごめん何だっけ、と声をかけると亜双義は不思議そうにぼくのほうに振り返りダルマさんとぼくを見比べる。そして『キサマが本体か』と呟いたあと膝立ちでこちらに向かってきた。
「だから、先刻から何度も言っているようにだ。オレはキサマという男を愛している。先の弁論大会でのキサマの居姿にすっかり心を奪われたというわけだ!よもや男相手にこんな感情を抱くとは、と最初は驚いたものだが、キサマのことを考える時間が日に日に長くなり始め、ついには夜の……」
その後もなんだかべらべら喋っていたが正直二言目ぐらいから先はあんまり聞いていなかった。たぶん雰囲気的にぼくは褒められているのだろう。まったくコイツと来たらいつもそうぼくを過大評価してくれるので、光栄というか恐縮というか、くすぐったい気持ちになってしまうのである。へへ、と頭を掻くと、亜双義がぼくの肩をがしりと掴んだ。
「……つまりだ成歩堂。オレはキサマとまぐわいたい。強いては性交と洒落こみたいのだが構わんな?」


よいどれペッティングが書きたかったらしい