ジリジリと身を焦がす太陽がぼくらの頭に照りつける。いくら手で顔を扇いで涼をとろうとも、それはただの徒労に終わった。汗が顔の輪郭をなぞってそのまま顎から地面へ落ちていく。暑い。それしか言葉が出てこない。ぼくはそれくらいへばっているのに、隣の亜双義はいつもどおりしゃんと立っていた。暑くないのかと訊いても、「キサマが言うほどではない」だなんて余裕の返事。おかしいだろ。というか、ぼくは亜双義の生み出す熱風を隣で受け止めている分で亜双義より暑さが上乗せされているのではないかしら?もしそうならばなんて理不尽な。
そんな風に思いながら非難じみた目で亜双義の横顔を眺めていたとき、ふと一滴の雫が亜双義の首のあたりを流れていくのが偶然目に留まった。それはきらりと光って、ぼくの網膜を刺しながら服の中に滑り込んでいく。そのとき頭に浮かんだのは、やっぱりおまえも汗をかいているじゃないか、というような思いなどではなく、「見てはいけないものを見てしまった」という謎の感想だった。亜双義の首をなぞるただ一滴の汗。たったそれだけのものにぼくはなぜか、男相手にはあまり抱かない類のやたら桃色の気持ちを想起してした。してしまったのだ。つまりぼくは、亜双義の首筋を流れるその汗を、なんだかやけにいやらしいと感じてしまったのだ。
「どうした」
唐突に亜双義がこちらを向いた。ぼくが見つめすぎたからだろう。慌てて目を逸らし、ぼくは「なんでもないよ」と言いながらまた顔を手で扇いだ。扇ぐたびに熱くなっていく。