・大逆転

「もういい!ボスのバカ!」アゲモノになっちゃえー、って自分でもよくわからない捨て台詞を言いながら221Bに転がり込むと、アイリスが嬉しそうにアタシにお茶を淹れてくれた。「グレグソンくんとケンカしたの?」「うん。だってボス、いろんなことアタシに秘密にするんだもん」ううん、とアイリスはおデコに指を当てて考え込む。「それは多分、ジーナちゃんの為なんだと思うなー」「そんなワケないじゃん。アタシが子供で、信用できないから秘密にしてるんだよ」「でも、ホームズくんもあたしにいろんなこと秘密にしてるけど、あたしが子供で信用できないからじゃないと思うの。あたしのこと考えたうえで、内緒にしなきゃいけない理由があるんじゃないかなあ」言ってくれないのはやっぱり寂しいけど、と付け足してアイリスは笑う。ボスもアタシのことを考えて、いっぱい秘密を作ってるのだろうか。そう思うとなんだか怒りづらくなってくる。それに、アイリスのハーブティーを飲んでたらいろんなことが許せるような気持ちになってきた。「……ホント大人ってしょうがないね」「ねー!困っちゃうの」
(ジーナちゃん)

「怖がらないでくださいませね。私にすべて任せて頂ければ、あっという間に貴方は蝋へ生まれ変われますわ」そう言ってオレを寝そべらせ何やら道具を点検している横顔にはまだまだ幼さが残っていた。「よくやりますね、こんな仕事。確かあんた方、死体の型を取ったりもするんでしょう」「あら。よくご存知で」「近頃ゴシップに敏感なもんでね。……否定されると思ってましたが」「恐ろしい虚構も恐ろしい真実も、上手く操ればローザイクに箔が付きますわ」「したたかですねえ、その歳で……」オレが呟くと、少女は穏やかにこっちに微笑む。マダム・ローザイク。この歳の少女にはひどく不釣り合いな呼び名だと思っていたが、この笑顔を前にするとなかなか似合う呼び名だと感じる。天使のように、そして魔女のように唇を歪める姿はあまりに印象的だった。「私はこの生き方しか知りませんの」
(ドレッバーとローザイク)

最初に好きだと言ったら、そうか、と全く動じた様子もなく呟いた。二度目に好きだと言うと、分かったと返して腕を組む。三度目に好きだと言うと、もういい伝わっていると言って睨むようにぼくを見た。四度目、ついに目が逸らされる。五度目には顔が赤らんだ。「……キサマ、面白がっているだろう!」
(龍アソ)

「内臓の病気はしてる?」開口一番がそれだったので勿論ぼくは面食らった。彼女の瞳はとても真っ直ぐだ。「していません」と素直に答えると、派手な目がにこりと細められる。「じゃあ、多分すごくキレイだね。アナタの中」早く開きたいと呟きながら手術刀を研ぐ姿を前に、背中では冷たい汗が伝った。
(龍ノ介とロイネちゃん)

「キミたち相棒だとか言ってるようだが……相棒としてどこまで親交を深めているんだい?ボクとミコトバはもうキスぐらいならとっくに済ませてるよ。ベロベロに酔ったときに触り合いもしたことがある。キミたちも当然そこまでくらいは済ませているんだろ?」「え??いやそれはちょっと……」/「ミコトバ!ボクたちゲイなんだって!」「なんですかキミ!?」
(苺ましまろパロ)

いつだかに買ったワケの分からない独逸の歌が部屋に響いている。タイトルは何だったかな。キミ、分かるかい?「ホームズ」ボクの問いかけに答えず彼は静かに笑っていた。この世の終わりのような顔をして、大袈裟だね。そう思いながら鏡を見ると自分もなかなか似たような顔をしていた。「今まで有難う」
(ホームズとミコトバ)

「これが父の見た景色か」カズマ・アソーギは静かにそう呟く。深手を追った左手からは絶え間なく血が噴き出しており、彼が私の頬を撫でるたび不快な生ぬるさがこちらに伝わってきた。背中にも傷を負っているはずだ。何故こうなるまで私を庇った。そう口にしようとした瞬間、彼は「悪くない」と笑った。
(アソバロ)

赦す赦さないで話が出来るのならずいぶん楽になるのだろうが、生憎とどちらも其処まで単純ではないようだ。あの男――成歩堂であれば、もう少し明朗に感情を整理したのかもしれないが。皆が皆法を神として崇めていれば、そうも過ごしやすい社会は存在しないだろうに。「オレを赦すか」そう告げると、《死神》の燃えかすはかすかに顔を曇らせた。分からない、とその表情が存外雄弁に語っている。
(アソバロ)


・その他

最初はリップとかグロスだけだったレイアの化粧がどんどん付け足されていって、今やあいつは大人の女のような顔をして笑うようになった。酒を飲む姿にも違和感はない。「なあ、なんか浮いた話とかねえの?」「ええ?まあ、うーん。……実はこの前ね」俺は何を焦ってんだろうな?なあ、誰か教えてくれ。
(TOX2/アルレイ)

今まで僕はどれだけマリベルを傷つけ、失望させていたのだろう。そんなことを初めて考えた。「退屈な男なんてずっと嫌いだったわよ。ねえ、このあたしが平穏なんて望んでると思ってた?」「…ここまで言っても連れ去らないんだ。あーあ」あたし、あんたと結婚しなくてよかったあ。幼馴染はそう言った。
(DQ7/主人公とマリベル)