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高倉晶馬(輪ピン)

僕は愚かに思考していた。海に沈むんだみんな。難破船に乗り込んで幾ばくか時が経って、もうそこが家になりかけていたというのに。突然崩れだした。そういえば僕は僕というひとりの人間であり個体であり子供なのだ。冠葉は冠葉という人間であり陽毬は陽毬という人間なのだった。白い憂いを握りしめて土を蹴ることしかどうせ僕にはできやしない。僕は高倉晶馬だ。そして今日も表札には三人分の愛と戒めが詰め込まれている。僕の元素はガムテープの下に眠っているだけだ。そうすることで僕たちはカラフルになれたのだから。カラフルにならなければいけなかった、と言ってしまえばそれで終わりだけど、モノクロよりはいいじゃないか。僕たちの見えない糸も蛍光色で塗ってしまえばいいんだ、そうすれば糸を辿っていつでも会える。ああビビッドにすべてを任せてしまいたい、それが意図だなんて信じない。
でも、ひとつ、考えたことはあった。果たして僕たちはそれぞれの意志をほんとうに「僕たちの総意」と言い切ることができたのか。直列の思考回路を望んだって並列にしかなりえない人間たちの脳のつながりの中で、僕たちだけは違うと主張できたことはあっただろうか。なかった。そんなはずはないのだ。僕は誰にもなれないしあの子だってあいつだって何者にもなれないだろう?総意なんてうそっぱちなのだ。総じた意なんてこの世界には存在しない。僕は高倉晶馬だ。あいつは冠葉だ。あの子は陽毬だ。当たり前のことに気づけばとうとう僕はひとりになってしまった。励ますように回る換気扇が怖くて仕方がない。さて、これから僕は足掻かなければならないのだろう。


どんより晶ちゃん
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