「僕はたぶん君を見たことがないんだろうね」今さら気づいたのね、そうよあなたは本当のわたしなんて見たことがないんでしょうね。だってわたしのことが見えるのは王子様だけなんだもの。多蕗くんだけなんだもの。きっとそういう運命なんだわ。
(晶苹/僕には君が見えない)

「ねえ虎徹さんもし明日僕が交通事故か何かに遭って死んだらすぐ駆けつけてくれますか無理ですよねだって明日は楓さんの結婚式ですもんねええはいわかってます虎徹さん世界で一番愛してます嘘ですだってあなたを一番愛してるのは楓さんですもんね虎徹さん大好きですさようならまた明日」「おまえ怖い」
(兎虎/愛が重いバニちゃん)

「年老いてしわくちゃになっていくあなたに変わらずきれいだと囁きつづける仕事に就きたいんです」「なんか言い回しがめんどくさい感じだからだめ」「誰よりも近い場所であなたの一生を見守りつづけたい」「もうひと声」「ずっと傍にいさせてください」「はい合格」
(兎虎/末爆)

「きみが好きだ」「…紫苑」毎日毎日挨拶のように紫苑はおれにこう囁く。頭が痛くなりそうだ。好きだ好きだとバカの一つ覚えのように紡ぐ言葉のなんと重いこと。「それ言うのやめろ」「じゃあ何を言えばいい、愛してるって言えばいいのか」「あんたはおれにため息をつかせる天才だよ」
(紫ネズ習作)

「俺がジジイになっても好きでいてくれんの?」「え、あなたがおじいさんになるまで傍にいていいんですか…?」「…えっ」「えっ」
(おじさん無意識にプロポーズの巻)

「虎徹さん!」「僕です」「先輩でしたか」「また騙されましたね」「まったく気づきませんでした」「暇を持て余した」「先輩後輩コンビの」「「遊び」」
(ほのぼの兎折)

「はぁ」「今にも死にそうな顔で僕の家に居座らないでください」「あんた先輩も労れないんですか。ダメな後輩を持って僕は悲しいです」「僕だってこんな先輩持って悲しいですよ。ああいや反面教師としては最高なんですけどね」「死ねばいいのに」「軽々しく死ねとか口にするなよヒーロー」
(殺伐兎折)

入道雲が視界を奪う。蝉が忙しなく鳴き声をあげていた。チューペットが美味しかったり麦わら帽子を初めて被ったりだとか新鮮の連続が僕を襲った。夏がすぐ隣にいる。「田舎もいいものですね」「いいもんだろ」縁側の彼が微笑んだ。
(兎虎/虎さんの実家に兎ちゃんが押しかけたよ)

飛び散ったのは濁った同情だしこの人の体に新しい命が宿ることはないしまず愛情なんてものさえない気がしたので僕はただ淡々と後始末を始めるのだった。だから虚しくなるだけだからやめようって言ったのに。鼓膜を揺らしたのは冷めきった彼の低音である。
(兎虎/事後悔)

「僕にはあなたがいればいいんです」「俺はおまえだけしかいないなんてやだよ」
(兎虎)

「君はほんとうはものすごくバカなんだね。バカだから僕なんかに引っかかっちゃったんだろ。ほら、解放してあげるからもう泣くのはやめにしようよ」
(限りなくハッピーエンドに近い主足)