9歳の娘がいる。妻は5年前に他界した。きゅうさいのむすめがいる。つまはごねんまえにたかいした。ぐるぐるぐるぐる、同じ言葉が頭の中を駆け回る。ええ、ええ。わかってたつもりだったわよ。左手の薬指にはまった指輪の意味、とか。子供に慣れてそうだ、とか。そんなのもうとっくに。何回も考えてたわよ。何回も何回も、なんかいも、なんかいも。あの歳なら妻と娘がいたってぜんぜんおかしくない。でも、なに、死んだって。別れたならまだしも、死んでるなんて。死は鎖。死は人をぎちぎちに縛り上げて一つの生涯が終わるまで解放することはない。そんな言葉をどっかで聞いたことがある。あいつだってそうよ、一生を喜んで縛られるんだわ。ばかみたい、ほんとばかよあんなやつ。ああなにこれもうばっかみたいだわたし。それでも好きだなんてほんと、ほんとうに。ばかもほどほどにしたいわよ。