高校時代に仲良かったやつおってな、内海いうんやけど。そいつめっちゃ根暗やって、友達ぜんぜんおらんかってん。川のそばでいっつも本ばっかり読んでてな。眼鏡カチャカチャやりながらとにかく本読んでんねん。でも、いやそれやからなんかもしらんけどめっちゃおもろくてな。あれやな、誰とも喋らんと本ばっかり読んでたから知識量えげつないことになってたんやろな。根暗が功を奏してたんやろな。なんか言うたらめちゃくちゃ返してきてくれんねん。なんかそれがめっちゃおもろくて、せやからもう二年まで放課後ずっと内海と川のとこで喋っててん。でも俺が辞めてたサッカー部復帰することなって、内海も受験勉強でめっちゃ忙しなったからあんまり会われへんようなってな。そこからもうそんなに連絡取れてないねん。惜しいことしたなーって思うけどまあこれでよかったんかなーとも思うな。内海からしたらあの時間ってただの暇つぶしやったんやと思うし、内海が新しい人間関係築けていってるんやったらすごいいいことやし。まあ、ええんやと思うわ、これで。あー内海元気かなあ。未だに根暗なんかなあ。コンタクトデビューしてたら笑うわ。高校の同級生に内海の連絡先きいてみよかなあ、でも誰も知らんそうやわー。友達おらんかったもんなあ内海。あーあ。
「ってなるんかなーって想像したらめっちゃ嫌やったから言いに来た」
「……え、何を?」
卒業式の後、なんとなくいつもの場所で座っていたら瀬戸が来た。それに関してはなんとなく予想できていたので、いつもどおりだらだら喋っていつもみたいな調子で終わるんかなあと思っていたのだが、そこでこの言葉。何が言いたいんかまったくわからん。普段と違ってちゃんと制服を着ている瀬戸の手の中で黒筒の紐が風に揺れている。
「俺、卒業してもめっちゃ会うで」
「誰に?」
「お前や」
「……『めっちゃ会うで』って言われてもな。お前の中で思ってるだけやんそれ。ていうか俺東京の大学行くんやけど」
「まあ会いに行くわ。のぞみとひかりに送らせるから」
「新幹線のこと自分の女みたいに言うやん」
「またすぐ会おな、内海」
瀬戸はそう言うとにやりと笑った。夕陽が眩しいのか目を細めている。あ、あの日のと同じや。2月19日、この川で俺がお前に助けられたときの、あのときの顔。思い出になると思って覚悟していた。風化していく記憶を毛布みたいに大切に抱えていこうと。でもこいつはどうやら風化する気がないらしい。相変わらず一等星は空の上でびかびかと光っている。驚くくらい安心している自分に、少し笑いそうになる。
「うん、まあ。わかった」
「おう。次会うたときにまたバルーンさんの近況報告したるわ」
「ボラギノールのCM並に動きないやろそれ」



星のない世界聴いててセトウツだは…;;と思って泣いてたけど二人離れ離れにならないでほしぃ…スーパースターならきっとなんとかしてくれる スーパースターを信じろ(信仰)