オーディション最原とプロローグ王馬
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「僕は探偵がいいな」
ダンガンロンパのオーディション会場で知り合ったたぶん同い年の男子、○○くんはそう言った。どこかたどたどしい喋り方が印象的な彼だが、その一言ばかりははっきりとした声で口にする。気持ちはわかる、だってダンガンロンパにおいて自分の才能はこれ以上なく大切なものだからだ。才能次第で殺しかたにも死にかたにも意味と工夫が生まれてくる。オレは手元の『ダンガンロンパ計画ノート』と銘打った自らのノートに「○○くん:探偵枠」と簡単に書き込んだ。
「探偵っていうのは霧切ちゃんみたいな役がいいってこと?」
「いや、クロになりたいんだ。探偵がクロだなんてもう珍しくはないけど、ロジックを複雑にして参加者を困らせれば視聴者も面白いかなって思うし」
「へー、視聴者を楽しませるくらいの謎を残せる自信があるんだ?」
「いちおう、案はたくさん考えてあるけど」
そう言うと○○くんはオレと同じようなノートを鞄から取り出して膨大な数の殺人計画を丁寧に紹介してくれた。けっこう面白いし勝算はあるけど、これならたぶんオレの考えてるもののほうが面白い。
「○○くんはどういう役になろうって考えてるの?」
「オレは、とりあえず被害者かな。どうせなら狛枝くんレベルの、ファンみんなの記憶に残る死に方がしたいよね」
「へえ、勇気あるね。才能は?」
「いろいろ考えたんだけど、総統かな。どこかの大統領と同じ肩書きだけど、虐殺とは真逆で殺される側っていう引っ掛けにもなるし。何より必然的にカリスマ性が手に入るから参加者を撹乱しやすくなるしね」
「いかにもクロ側の才能だけど被害者なんだ。面白いね」
「そうだ、ついでにオレの犯行計画も聞いてくれない?○○くんの作戦に活かせるかもしれないし」