子供の頃のあいつを想うたびいつも不安になっていた。だって、大勢に囲まれて笑っている子供のあいつを俺はどうしたって想像できない。公園でたったひとりきりのままブランコを漕ぐあいつしか頭に思い浮かばないのだ。だからそこから今の話をよく考えてみればこれは至極当然の流れでしかないので、仕方がないといえば仕方がない。そりゃあお前、そう思うだろうな、と。少なくとも俺はひどく納得した。こいつはケイトさん以外の家族を失ってしまっているんだから。まったくもって仕方がない。仕方がない話だ。

「俺、子供はいっぱい欲しいな」

頬を掻いてはにかみながらユキは俺にそう言った。ああ、本当、いい夢だな。あったかくてささやかなお前らしい夢だよ。お前にたくさんの家族ができて、もうひとりで泣くことなんかなくなる日がいつか来るといい。絶対にその夢は叶えてほしいと思った。だから、だから俺はこういう、みみっちいことばかり考えている自分を殴りたいのだ。じゃあ俺とは無理だなとかそういう言葉を喉元に引っかけている場合じゃない、そういうことを話してるんじゃないだろうと、わかってはいる。わかってはいながらも今日も俺はこいつに這い寄る孤独を嫌っていて、追い払ってやろうと孤独に向かって必死に釣り竿を振っていた。たぶん死ぬまでやり続けるだろう。お前は大勢に囲まれて笑ってろよ。そのほうがお前には似合ってる。