アスリート達のうち、何割の人がインパクトの瞬間にグッと歯を噛み締めることによるチカラの使い方をしているのか、はたまた何割の人がその逆の、噛み締めない身体操法をしているのか?わかりませんけれど、シンタイコウにおいては、噛み締めて姿勢をセットしたり動作したり出力したりするやり方は、完全にアウトです。

噛み締めるやり方では、氣が通りません。そしてむしろ身体にダメージをもたらします。

格闘技ではなくても、マウスピースをする球技などの選手を見かけるようになりましたが、あれはアゴのジョイントを確りさせて身体がブレないようにチカラのロスがないようにするための有効な手段なのでしょう。

シンタイコウや強健術や古武術においては、アゴを締めることはしなくともフニャフニャ腰にならないのはなぜかというと、重心を脱落させるからであり上肚から下肚までを活かすからです。肚とはまた腸腰筋と言ってもよいのですが、この筋肉は決して筋トレと同じ文脈で扱うものではない。垂直軸のセンサーとして使われるのであるからして、そこに何かを込めてしまうということは、本来のチカラを封じ込めてしまうことになるのです。

歯を噛み締める とは、スポーツ的な意味での話にとどまりません。人が歯を噛み締めているときというのは、自分を守ることに必死なときです。強烈な自我意識の現れだったりします。そこで目にリキミが入ったりもしますから、瞳孔のフゲイもできにくくなる。そして瞳孔のフゲイが出来ないという状態は肥田式運動がちゃんと出来ないとかいうだけの問題ではなく、見えるものや観えるものに、色がつきすぎるのである。つまりコダワリの色眼鏡のフィルターが外れなくなるのです。世界をフラットに認識できなくなるのです。意味づけをしすぎてしまうのである。

自分の見たいものをより見たいように見るために、マウスピースは有効である。しかしシンタイコウは、そのやり方はまさに「ネック」である。上実下虚にもなりやすい。

自我が完全に消滅するには、肉体から離れるしかないとおもいます。死体は口が閉まらないらしいですが、私達は生きているうちは、それではまずい(笑)。 ですが、頭や首や顎を適当にゆるめたら死ぬわけじゃないし、むしろ、生きている とか 生かされている という実感は、リキミを放棄したほうが、如実になるのである。