少し以前に、北海道の僻地(地名忘れた)の漁師のドキュメントを見ました。
漁場には時々、熊が出ます。80代の、厳しい風雪を乗り越えてきたであろう風貌の、真っ直ぐな瞳と真っ直ぐな姿勢のその漁師は、熊を一喝して追い払います。その秘訣は、

キッチリロックオンする
腹の底から声を出す
決して退かない

だそうです。
昔はハンターに駆除してもらっていたらしいが、叱り方を会得したことで、自分達の都合による殺傷をせずに済むようになった。餌も与えず襲われることもなく、長年に渡って熊と人間は一定の距離を空けて共生しているそうです。

で、ある日。その漁場あたりの独特な自然が世界遺産に登録されるとかなんとかで、アメリカの博士とか登録委員会の人達がぞろぞろとやってきた。漁師もその集まりに加わって、ガイドをしていた。博士は漁師達が使う橋が世界遺産的に気に入らない。撤去できないのかとか何とか、話し合っているとき、熊が数頭現れた。ヤバい!とみんなビビりだしました。すると

『こらっ!』

漁師がいつものように一喝しました。熊達は去っていった。それを目の当たりにした一同、おったまげた。

アメリカじゃあ熊をそんなふうに扱うことなど絶対ありえない(キッチリ管理下に置くか駆除するということか)と言う博士は興味津々になり、予定を変更して漁場の小屋へ案内してもらい、そこで漁師にいろいろ話を聞くことにした。
だが結局、漁師達と熊との在り方を、世界遺産的に?認めることはなかったようでした。


番組の冒頭で漁師が言っていた言葉がよみがえる。
『人間と自然、じゃない。ワシら人間も自然のひとつなんです』


こらっ! 人間!。