昭和の自販機がブームだという。うどんとか焼きトーストとか、食べ物が出てくるやつ。なつかしくてキュンとする。商品もいいが、そうゆう自販機が設置された「無人オートパーラー」の雰囲気が好きだった。今ドキの夜中の「道の駅」は其れと少し雰囲気が似ていて、イイ感じではある。でも、オートパーラーの侘しさには及ばない。ちゃちいテーブルとイス。端が黒い蛍光灯。汚れた灰皿。ワビサビは会議室で起きてるんじゃない、パーラーで起きてんだ!。そしてなにより、オートパーラーには必ずといっていいほど、エロ本の自販機があったのだ!昼はパネルが銀色のアルミで覆われてて商品が見えへんかった。
中学生の時分、遊び仲間数人で金を出しあって、オトパラのエロ本を買おうということになった。人通りがあるので、コッソリとね。ジャンケンで負けたやつが買ってくる。ジャンケンポン! こういう時負けるのは大概、アホのキイチ君だ。「いいかキイチ、一番スゲーやつ選んでこいよ!」
といっても金を入れてからでないと商品がよく見えないシステムみたいだし、キイチもドキドキして焦ってる。そのうえアホだ。大丈夫か。頼んだぞ。
キイチが突っ走る。本人は忍者のつもりでもコッチから見ればプリンプリン物語の人形のごとくにギクシャクパペットだ。それでもなんとか金を入れボタンを押して本を抱えて猛スピードで戻ってきた。世界の盗塁王、福本豐さながらに!!
勇者キイチが大冒険の末持ち帰ってきた伝説の書に、皆が息を呑む。我々は表紙を食い入るようにのぞきこみました。
…おう。キイチこら。テメエ!なんじゃこりゃあボケエ、ワレどこに目ぇつけてんだコノ、トンヌラヤロウ、俺らの熱い想い、どうしてくれんだ!! クソが!オメエはショートフライをヘディングする宇野かっ!
…あーもうすっかり暗くなった。明日も部活かあ。チョーダリい。腹へったっぺ。もう家さけえるべ。じゃーな。じゃーな。
俺達は「アグネス・ラム写真集」を置き去りにして、とっとと家路に向かったのでした。
♪カーマカマカマカマカマカミーリーオー
(カルチャークラブ カーマは気まぐれ)