中国武術の形意拳には、ヘキ拳 サン拳 ホウ拳 と三種の打撃の型がある。
私はそれを若い頃に習っていたときは、クソの役にもたたないただのヘッポコ踊りみたいな動きしかできなかった。それが今じゃあ、一応中身のある動きがなんとなく出来る。なぜあんなコンパクトな動作で凄い威力があるのか謎だったけれども、それは神秘とかマヤカシではないことがようやく理解できるようになった。

肥田式的な姿勢からの動作とはケイ道(チカラの通り道)はやや違うけれども、中からのチカラということは変わりない。外側の姿勢がどんな型かなんていうのは、中のチカラをどう使ったかのアラワレでしかない。


役者の芝居は、舞台の芝居と2時間テレビドラマの芝居と映画の芝居は違うというか演出家の演出によってやるべき芝居のカタチは違うのですが、どうであれ重要なことがある。それは、演ずる中身にリアリティがあるかどうかである。舞台で出す声や2時間ドラマで喋るセリフは日常のリアルとは違う。でも、どうであれ失っていてはならないのは、たとえばそこであらわすのが「怒り」ならば役者はどんな演出であれどんなセリフであれ本当に怒っていることが大事なのです。たとえ台本上は「笑いながら喋る」だったとしてもね。


ホウ拳の台本は「半歩前に出て拳を前に出す」だけ。これで相手をその場に沈めるとか、普通ならわけわかんないですよね。「腰を入れて気合いを入れてチェストぉー!という発声とともに固く握った拳を力一杯ぶつける」とかいうならなんとなくソレっぽい演出になるけれど。

イチローが小学生の頃、バッティングセンターで、小さい体でポンポンとホームラン性の当たりを連発しているのを見ていた年上の御兄さん達は、「タイミングで合わせてるだけじゃねーかよ」といって、その打撃を認めようとしなかったそうです。 イチロー本人は(その通りですけど何か?)としか思わなかったそうです。つまり、御兄さん達にとっては、小学生が自分よりも打つのがとにかくオモシロクナイ!ということだったのでしょう(笑)
パワーもねえくせにと。しかし御兄さん達には、それほどの技術と、ありのままを観てありのままを認めるチカラが無かったのかもしれません。