浜辺に最近出来た防波堤。垂直ではないが結構な急勾配で立っている。私は無性にそこを登ってみたくなった。つるつるしたコンクリートなので足底でグリップしづらいし、手で掴まるものもないのですが、二本足で。いや、正確には中芯軸でね、登ってみた。そして降りてみた。

靴底のグリップに頼らず、足や脚の筋力で掴まるようにでもなく、精妙な重心感覚で、スイスイ〜と登る。スイスイスイ〜と降りる。面白いので何度も昇降しました。どことなく無重力感覚です。

(滑り落ちそうだ)などという心配は身体を固めて重心を固めてずらしてしまいますから要りません。足に全重心をかけて足の筋力を使おうとするならたちまち滑ってしまいますから要りません。このとき肉体パーツは腸腰筋が駆使されていますが、それは筋力というよりもセンサー力です。重ねた新聞紙を寸突きで破るときもそうなんですが、リキ感というものは、身体にこもってはおりません。

居着きもせず何処にも行かずイトを張ったスパイダー身体。非力でもなく目に見える物理にだけ作用させるのでもないドラゴンボディ。正中心力、といってしまうとどうしても肥田春充の体格や体力能力がモノサシになってしまうから、ここはひとつ、シンタイリキと言っておこう。シンタイリキには透明感がある。乳酸が溜まるという感じはほとんどありません。



次回予定
「肚はケチケチしていない」
「ダイヤモンドの神殿、出雲大社の亀甲紋、肚のカタチ」