フィルム映像の肥田春充の動作を初めて見た21才のとき、何が何だかわかりませんでした。
だが繰返し何度か見ていると、ふと、第四動の本動作に、不思議な印象を受けた。

胴体と脚が繋がっていないように見えた。悪い意味でなく、まったく脚で体を支えてはいないように見えた。今おもえば、空中浮遊をするヨガ行者の姿を連想させるようにも見えた。

重心はガッツリ落としているのに胴体が地面にまで落ちないのは、脚で支えているからではないとは思っていた。
だが、それだけではない。腰や腹の力でも支えてはいないではないか!


磁力的なチカラが、体を『沈め×浮かせ』ているのです。腹は下へ下へ引き寄せられ、逆に腰は反発的に跳ねる。


腰腹の姿勢をキメるという鍛練は、シンタイコウ流に云うなら、徹底的なチューニングである。

骨盤でなく腰椎を反りこむように肥田式強健術をやってしまう人が、逆に腰を痛める結果になるとかいう話はたびたび聞いていました。だが、骨盤(仙骨)を反りこむこともまた、正解とは言えなかったのです。

グーン!と落ちていくチカラと、ビーン!と跳ね上がってくるチカラは、腰や腹からつくるのではありません。チカラは『身体ではない』のです。身体は、しかるべき姿勢を『とらされる』だけです。




つづく