20日の出来事でした。

恋人が一部馬主として出資していたミンナノヒーローが盛岡競馬場で走るというので、ファンであった恋人は当然ながら、話を聞かされ続けて半ばうんざり気味であった私も何だかんだ言ってついて行ったのでした。

パドックでミンナノヒーローを背に恋人を撮影したりなど、レースが始まる直前までは、それはそれはお互い楽しみに待っていました。

いよいよレースが始まって、今回もぶっちぎりの1位を獲得する姿を見せてくれるものだと、私たちはもちろんのこと、観戦客のほとんどがそう思っていたに違いありませんでした。

ところが、あと少しでゴールというところで止まってしまったんですね。観戦席からは一斉に「えーっ!」と声が沸き上がりました。

もともと足の怪我や不調を繰り返してデビュー自体が遅れていたミンナノヒーローは、このたびのレースでまさかの足首を開放脱臼してしまったのです。

駆けつけたトラックにも痛がって上がることが出来ず、関係者が何人かで支えてもダメで、その場でしばらく立ち往生。どうなってしまうものかと観戦客が見守る中、関係者が観戦席に見えないようにブルーシートで現場を覆いました。

恋人が「あ・・・もうダメかも」と言って伏せてしまうと、間もなくミンナノヒーローはブルーシートの裏で倒れ込んで動かなくなってしまったのです。その場で安楽死の処置を取られてしまったらしい。ブルーシートにくるまれると駆け付けたローダーでどこかへ運ばれて行きました。

非常につらい場面を目の当たりにして、涙を堪えることは出来ませんでした。特にファンではない私ですらこうなのですから、この馬が可愛くて出資までしていた恋人のショックはいかがなものかと。

あとに恋人から聞いた話によれば、馬はあの巨体のわりに心臓が小さく、歩くか走るかして足を動かさなければ血液をうまく循環させることが出来ないそうなんですね。だから馬にとって足を痛めることは致命的なのだそうです。

足を痛めて動くことが出来なくなった馬は、あとは苦しみながら朽ち果てていくほか無いそうなので、早く苦しみから解放させるためにも安楽死の処置が取られるらしい。

とは言うものの、どこかしっくりと来ない・・・

人間の勝手な都合で自然死が出来ないわけだから。道楽の駒に使われた挙げ句、走れなくなれば邪魔だから殺されるということですよね。これなら戦争で騎兵と運命を共にするほうがマシではないかと思いました。

考えさせられる、たいへん貴重な体験になりました。これまでも競馬とは無縁でしたが、これからも自分から好んでやることは無いと思います。