2007年に放送されていた、連続テレビ小説「ちりとてちん」。最近感銘を受けたドラマです。久しぶりに心を揺さぶられた感がありました。

視聴のきっかけは、キャストの中に渡瀬恒彦さんの名前があったからです。「おしん」以来、彼のファンでした。彼の訃報を聞いたときには真面目に泣きそうになりましたね。

このドラマのオープニングの曲にはどこか聞き覚えがありました。放送当時、本編自体は見ていなかったんですけれども、休日の朝に居間のテレビからこの曲が聞こえてきた記憶があるのです。

2007年と言えば、かくゆう私も現在の職場に入社をした年でありました。入社をしたのは9月のことで、ついでに言わせていただきますと、このたび私はめでたく勤続10年を迎えることが出来ました。

さて、この「ちりとてちん」。主人公の和田喜代美と、自分自身がダブるのです。 当時の私自身は、まさしくこのドラマ序盤の主人公を描き写したような感じでした。劣等感の塊で、自分のことが嫌いで、そんな自分を変えたいと日々思っていた頃であった。

物語は、幼少の喜代美が父方の故郷に越してくるところから始まります。転入先の小学校で、自分と同姓同名でありながら全てにおいて自分よりも優れている少女と出会うのです。幼いながらもごく自然に植え付けられた劣等感は、その後も長らく喜代美を煩わせることになります。

喜代美の祖父は塗り箸の職人でした。製作所では、いつもラジカセで落語を聞いていました。傍らで一緒に聞いていた喜代美。落語を聞いていると不思議と心が安らぐのでした。祖父は、自分に自信を持てずに落ち込んでいる喜代美にこう語りかけるのです。

「人間も塗り箸と同じや。磨いで出てくるのは塗り重ねたものだけや。一生懸命生きてさえおったら、悩んだことも落ち込んだことも、きれいな模様になって出てくる」

間もなく祖父は他界します。

そののち大人になった喜代美は、亡き祖父に導かれるようにして再び落語というものに出会い、自身がその話し家を志して、そこから人生を大きく転換させていくことになるのです。

私はこのくだりにも、どこか自身を重ねて見ていたところがありました。私にとっては単にドラマの中の物語なのではなくて、実感として現実味を帯びていたのです。

祖父が喜代美に語りかけた、この、人間を塗り箸に例えた優しい言葉は、私にとっても腑に落ちるものでした。今ならばこの言葉の意味をよく理解できるからです。もし2007年当時にこのドラマを見ていたとしても、たぶん私はピンと来なかったのではないだろうか・・・そう思う。

今だから見ることが出来て良かったなあと思えたドラマでした。共感できるところが多かったもので、私には味わい深かったですね。



少しのあいだ、ブログを休止いたします。更新自体も元より少ない方ではありましたが。

来年、年明け頃に再開できればと思っております。