若い頃に勤めていた古本屋が、先月閉店しました。

勤めた期間は一年にも満たなかったのですが、幼い頃から通っていたのと、どこか人生を変えてくれた「アンネの日記」を購入したのもこのお店であったから、自分にとっては思い出の深い本屋と言えます。まさか閉店するなんて思ってもいませんでした。

この本屋の歴史は、自身の歴史でもあるんですね。心を豊かにしてくれた、ここには感謝の思いしかありません。

この本屋に勤めていた当時、私は精神的に不安定で、後半は上司から注意を受けることもありました。勤務形態もアルバイトでしたし、そのうち自分の中でも社会保険完備の毎日フルタイムで働けるところに行きたいと思うようになって最終的にそれが理由で辞めたのですが、自身、本が好きですし、また接客も嫌いではなかったので離れがたい職場ではありました。

その後、何となく自分には接客業は向いていないのだと思い、自ずとひっそり工場で働く製造業を求めて現在に至るのですが、いざこうして長いこと工場で勤務していると、その閉塞感からか、本屋に勤めていた頃が輝いて見えてくることがあります。




「如懿伝、紫禁城に散る宿命の王妃」を怒涛の勢いで観終えました。

原作、脚本ともに「宮廷の諍い女」を手掛けたリュウ・リエンズーであったから期待はしていましたが、それ以上にやられた感がハンパないです。主人公、如懿役のジョウ・シュンの演技力に魅了され過ぎて下手に感想も言えません。

制作スタッフは何としてでも主役にこの女優を起用したかったらしく、たいへん粘ったそうですが、ドラマを最後まで視聴してその真意が理解できました。如懿役にはこの声、この雰囲気が相応しかったのだと。それはストーリーの後半から実感できるようになります。継皇后ウラナラ氏といえば断髪の逸話が有名でありますが、その場面も然り。

宮廷ドラマのほとんどは争いに屈しず上り詰めていくストーリーですが、ドラマのタイトルにあるとおり、散ってゆく役柄を繊細に、かつ平静に演じきれる女優というのもまた限られてくるのかなと思いました。誰にでも演じれる役柄ではないんだろうなあ、と。

何やら噂では、リュウ・リエンズーは次回作となるらしい「徳妃伝」の脚本を書き終えたとか何とか。一日も早くドラマ化されることを願っています。まあ、とは言っても私の場合、視聴するのはツタヤで旧作になってからなので、だいぶ先のことになりそうですけれど。

新しいドラマや映画を観て、そのたびにそれまで知らなかった俳優に魅せられて、今度はその俳優が出演している他作品を観てまた違う俳優に魅せられていくことの繰り返しです。好きな俳優がだるま式に増えていきます。




中華に因みまして、私は最近クックドゥの四川式麻婆豆腐の素にハマっております。料理が面倒なとき、何を作ったら良いのか考えるのも面倒なときはコレを食べることが多くなりました。

自宅からわりと近いところに「ハルピン食堂」という、自分としてはいかにも気になる名前のお店があるのですが、先日ちょっと勇気を出して行ってみたのです。チャイナベストを着た、片言の中国人らしきおじさんが一人で経営しているお店でした。

メニューに四川麻婆があったので、すかさずそれを注文した私でしたが、店主のおじさんは片言で「ヤメトイタホウガイイデスヨ」と言うんです。とても辛いから食べない方が良いよ、と。

それでも押し切って注文したのですが、間もなく厨房から山椒と香辛料の粒子が飛んできてですね、くしゃみと咳が止まらなくなってしまいました。店主からしてむせながら作っている状態で、逆に注文したのが申し訳なく思えてきた。

涙目の店主が運んできた四川麻婆は言うまでもなく激辛で、これが本場の味だとするならば、これを美味として食しているのならば、地元の人たちの味覚は完全に麻痺していると思いました。

味わうレベルではなかったけれど何とか完食。水を飲みまくって舌を落ち着かせたところで、私は店の名前の由来を尋ねてみました。ハルピンの生まれだから、ハルピン食堂と名付けたそうです。他にも地元の話をいろいろと聞かせてくれました。

きっと店主は、四川麻婆を作るのも嫌だったんじゃないかなと思いますね。