映画「ナチス第三の男」を観ました。

自分も然り、ナチスに関心を持つ女性の中には一時であれ憧れを抱く人も多いのではないかと思われる、ラインハルト・ハイドリヒという男の、親衛隊に所属してから暗殺されるまでの過程が描かれた作品です。

二部構成になっていて、およそ後半は彼を暗殺したチェコスロバキア軍人とそれを助けた人々の物語、やがて来たるドイツによる凄惨な報復へと主眼が移っていきます。映像、コマ、演出すべてにおいて一切無駄を感じない見事な作品でした。

ハイドリヒは、ホロコーストの実質的な推進者でした。凛とした顔だちからは想像し難いですが、いかなる粛清や虐殺もいとわず行った非情に冷酷な男であったようです。

彼には妻子もおりましたし、根っから冷酷なわけでも、またキチガイでもなかったと思うのですが、なにせ彼自身にユダヤ人であるという疑惑があったもので、その疑いを晴らさんとでも言わんばかりにユダヤ人絶滅計画にはことさら心血を注いでいたのかも分からないですよね。

ナチスものの映画を観たのはだいぶ久しぶりのことです。若い頃に「カティンの森」でショックを受けて以降このテーマとは距離を置いていたのですが、離れているあいだに新たな作品も多数増えていて、今ちょっとドキドキしています。

悪名高いナチスドイツですが、彼らもまた時代の犠牲者であったのだと、今はそう思っています。命令に従ってただ精一杯に生きただけ。

あの時代は戦乱に次ぐ戦乱で世界中が苦しくて、ことに似たような運命をたどった日本とドイツには通じるものがあると思うのです。殉死を徹底して教え込まれていた両国にしか分かり得ない何かがある。

みんな、もっと違う人生を生きたかったろうと。もっと穏やかで、愉快な人生を。