話題:恋愛
貴方がくれた大切なイヤリングを失くしてしまいました。
それは、私達が付き合い始めて初めて迎えた私の誕生日‥
‥の122日前。何でもない薄曇りのどんよりとした平日に貴方がくれたアニバーサリーな物でした。
イヤリングをしていない私に、貴方は冷たくこう言いました。
『ワシに何か御用ですかな?』
ああ‥
私がイヤリングを無くした事が、よほどショックだったのね!
貴方の顔は、昨日より50歳も老けていました。
そう、まるで別人みたいに‥。
その夜、私は交番に駆け込みました‥。
「ああ‥それなら届いてますよ」
優しそうなお巡りさんが言いました。
私は、余りの嬉しさに涙が30gこぼれ落ちました。
でも、それは‥
貴方がくれたイヤリングでは無くて‥
誰かが食べ残したイカリングでした。
イカの種類は‥
真イカかな。
もしかしたら‥
紋甲イカかも。
……
知らないわ。
だって私、イカ釣り漁船の網元じゃないもの。
そんな比類のない悲しみに、流した涙が瞳の中に逆流しました。
でも、もっと悲しかったのは…
私の耳に空いた穴にイカのリングがピタリとハマった事…。
ガラスの靴がシンデレラの足にピタリと合ったように‥
私の耳にはイカリングがお似合いなのだわ。
でもでも、それより更にもっとずっと悲しかったのは‥
「実は僕‥こう見えて本当は、ハリー・ポッターなんだ」
お巡りさん‥
アナタはどうして‥
寂しい夜更けに、そんな悲しい嘘をつくの?
深夜の交番で独り【イカフライおかか弁当】を食べるハリーポッターなんて居るはず無いじゃない!
堪え切れない悲しみに、私は交番を飛び出しました。
きっと‥あのイヤリングは、私自身が見つけ出さなければならないのだわ。
だから‥
◆追記ページに【ロマンチカ写真】あり。