止まっているエスカレーターは絶叫マシンの対極にあるアトラクションだと思う。
スリルもサスペンスもない代わりに得体の知れない気持ち悪さがある、そう感じるのは恐らく私だけでは無いはずだ。
登っている最中の心地悪さは勿論、ただ眺めているだけでも脳がモヤモヤしてくる感じがある。
何と云うか‥あまりにも速度感が無さ過ぎる。
止まっているのだから速度は当然【ゼロ】な訳だけれども、エスカレーターに限っては止まった時に速度が【ゼロ以下】のマイナス領域に突入するのではないか?
などと云うと、恐らく皆様はこう思うに違いない。
「速度がマイナスとはどういう事か?」
例えば、此処に林檎が3個あるとする。そこから5個の林檎を取り除けば、残る林檎は−2個となる。
【−2個の林檎】
数学的には成立し得ても、現実的には存在し得ない状況だ。
つまり、私が云いたいのはこういう事だ‥
止まっているエスカレーターは“有り得ないぐらい気持ちが悪い”と。
それは、何となくだが【バミューダ・トライアングル】の不可解さにも通ずる気がする。
奇しくも、床を底辺と捉えると、エスカレーター部分を斜辺とする三角形が出来上がる。
そう考えると、エスカレーターを登ったり下ったりしている途中に、神隠し的に忽然と姿を消した人が居てもおかしくは無い。
つまり、私が云いたいのはこうだ‥
止まっているエスカレーターは“それぐらい不思議気持ち悪いものだ”と。
……
何だかんだ云って、結局さっきから「止まっているエスカレーターは気持ち悪い」と同じ事を云い続けているだけな気もするが、兎に角、そういう事なのだ。
そして、更に気持ち悪いのが【その原因が未だ科学的に明らかにされていない】と云う事だ。
一説によると、あのエスカレーターの段に刻まれた縦線の溝が人間の視覚を混乱させるのが原因だと云うし
また別の説では、エスカレーターは構造上、両端と真ん中では段の高さが違っている事が人間の感覚を狂わせ、それが不快感の原因だとも云う。
個人的には、例え止まっているとは云え、エスカレーターは幾らか帯電しているであろう事から、何かしら電磁的なエネルギーが関係しているようにも思えるが…残念ながら、これはまだ推論のレベルにも達していない単なる思考のチラリズムでしか無い。
いずれにしても、出来るだけ早く、この謎が解明される事を私は切に望む。
少なくとも、原因が判れば多少は納得して“あの気持ち悪さ”を味わえるような気がするからである。