話題:最近ハマっている食べ物
或る朝、私の元に一通の指令が届いた。
『おはようフェルプス君。最近、“ふりかけの棚”に顕著な変化が見られると云う情報を我々は入手した』
指令は、更に続いていた。
『そこで今回の使命だが‥最寄りのスーパーに潜入して現在の“ふりかけ事情”をそれとなく調査・報告する事にある』
うむ‥
これは、今までに無い困難なミッションだ。
『例によって君、もしくはメンバーの靴下が捕らえられ、或いは、破かれたとしても当局は一切関知しないからそのつもりで』
‥非情だ。
『なお、このテープは自動的に消滅‥しないので、スミマセンけど、そちらで処分してください。‥幸運を祈る』
途中で何故か丁重な口調になっている。
『追伸。【誤】テープ、【正】Cメール。【誤】処分、【正】削除』
私は本部からのCメールを削除し、丈夫な靴下に履き替えて最寄りのスーパーへ向かった。
それにしても、“ふりかけの棚の異変”とは、どういう事だろう?誰もが知るように、“ふりかけの棚”と云えば“おでんの具の棚”や“干物の棚”と並ぶ『日本三大・まったりした棚』の一つだ。
それに変化が‥いや、今ここで考えても、靴下がずり落ちるばかりだ。
私は考えるのを止め、一般の買い物客を装いつつ最寄りのスーパーへと潜入した。
(それとなく調査しなくては‥)
そこで私は、“ふりかけの棚”に真っ直ぐ向かう事を避け、まずは“おでんの具”が並ぶ棚に行くと、買い物客らしさを演出する為、近くにいた店員に物を尋ねるふりをした。
私『すみません‥グーグーがんも、置いてあります?』
店員「普通のがんもはありますけど、グーグーがんもはありません」
よし。
これで、普通の客に一歩近づいた。
私は続けて“干物の棚”に向かい。再び、近くの店員に尋ねた。
私『すみません‥ネッシーの開き、置いてあります?』
店員「ありません」
私『では‥ポセイドンの開きならあります?』
店員「尚更ありません」
グッジョブ!
最早これで私を疑う者は誰も居ないだろう。
私は勇躍、目的場所である“ふりかけの棚”へと歩を進めた。
すると‥
これはいったいどうした事だろう!
いつもはマッタリとしている“ふりかけの棚”に、何やら熱気のような物が感じられるではないか!
但しそれは、お菓子やお惣菜の棚のような華やかで賑やかな熱ではなく、あくまでも脇役の俳優が時折見せる静かで熱い情熱だ。
例えるならば、サングラスの奥で鋭く光る【大杉漣】の目。
係長席でゴクリとお茶を飲む【笹野高志】のノドボトケ。
私は早速、“ふりかけの棚”の異変を調査し始めた。
すると…
ふむふむ、なるほど。
新商品が実に数多く並んでいるのが判った。
お菓子やお惣菜の棚は、季節毎にかなりの商品が入れ替るが、ふりかけや干物の棚はラインナップが決まっている事が多かった…今までは。
これは‥密かに【ふりかけブーム】が到来しているのかも知れない。