かげらふ日報(虚構)05「未来人の言葉」


話題:短文


本誌遊軍記者のMが、かねてより街の噂となっていた「現在より400年後の日本からやって来た未来人」との接触に成功した。

世界を揺るがすに足る、否、世界をひっくり返すビッグニュース。本来ならば巻頭から大幅に頁を割いてスペシャル大特集を組むべきところが、このように控えめで小さな囲み記事になったのには勿論理由がある。つまり、インタビューには辛うじて応じて貰えたものの、肝心の質問に関してほぼノーコメントを貫かれてしまった、というのがそれである。

質問M「400年後の未来からやって来たそうですが、移動手段はやはりタイムマシンなのでしょうか?」

未来人『……我々の時代のテクノロジー関しては話せない決まりになっていますので、すみませんがノーコメントで』

質問M「貴方が来たのは未来の日本から、という事ですが、400年後の世界の枠組みや情勢についてお聞かせ下さい」

未来人『……残念ですが、未来に影響を及ぼす可能性のあるご質問にはお答え出来ないのです』

質問M「地球外生命体の存在は確認されているのでしょうか?」

未来人『……申し訳ありませんが、それもノーコメントで』

万事そんな具合である。流石にこれでは特集記事として成立させるのは困難だろう。それでも、1つだけ奇跡的に回答を得られた質問があり、そのお陰で辛うじて記事にする事が出来たという訳だ。

400年後の日本からやって来た未来人が、たった1つだけ教えてくれた未来の事、その質問とはこうである。

質問M「400年後の日本で一番人気のあるテレビ番組って何すか?」

何という投げやりな質問だろう。そもそも、そんな未来に今のようなテレビ放送があるという保証は何処にもない。更には口調もそれまでの「でしょうか?」から「すか?」とぞんざいなものに変わってしまっている。まるで部活の先輩―それも、ちょっとナメている先輩―に対する口調である。しかし、まあ、それもやむを得ない側面もある。何故なら、これまでM記者の放った936個の質問は全てノーコメントで返されていたからだ。これでは質問にイマイチ気持ちが入らないのも無理はない。

この質問も当然無回答だろう。M記者は確信していた。ところが、違っていた。未来人は一瞬、天を仰いだ後、キッパリとこう断言したのである。


未来人『ああ、それなら【クイズ脳ベルSHOW】で間違いありません』


ワーオッ!(←司会のますだ氏ふうに)なんと【クイズ脳ベルSHOW】は400年後の未来でも放送されていた!


長寿番組にも程がある。しかし、冷静に考えれば決してそこに不思議はない。役者や歌手、芸人などこの世にタレントが存在する限り、あの番組は続けてゆく事が可能であるからだ。400年後だろうと1万年後だろうとそれは変わらない。

それにしても、まさかの即答。未来の事を教えてしまって大丈夫なのだろうか。これによって歴史が変わったりはしないのだろうか。危惧するM記者。が、どうやらそれは杞憂に過ぎないようであった。

未来人『あ、それなら大丈夫です。知ったところで未来への影響は0だと思います。あの番組は時空の外側のゆる〜い世界に存在している事が証明されていますので』

さすが【クイズ脳ベルSHOW】!ただの番組ではないと薄々感じてはいたが、まさかそこまで凄い(と言うか、“どうでもいい”)番組だったとは。

未来人さんは続けてこう語った。

『優勝した時の賞品が[お米]という時代錯誤感や、「げげっ、この方まだ存命だったのか!」という不老不死感が妙に心地好いんですよね』

どうやら番組の中身もまったく変わっていなさそうだ。願わくばどうか、地球が滅亡するその日まで、そのままの緩さで続けていって欲しいものである。


〜おしまひ〜。


かげらふ日報(虚構)04「俺たち表記ん族」


話題:短文



『俺たち表記ん族』

文部科学省はこのたび『【かいきにっしょく】の漢字表記を従来の【皆既日食】から【怪奇日食】へと改める事を仮決定した』と発表した。

確かに、初めて【かいきにっしょく】という言葉を耳にした際、マトモな人間であれば(えっ!怪奇日食!?)と思うのが当然であるし、“皆既”日食が正しい表記だと知った後も、(いや、誰がどう考えても“怪奇”でしょ)とか(“怪奇”日食の方が百倍良いのに)などと、心の中では【怪奇】を採用している事は火を見るより明らかである。

今回の変更は、そのような国民の本音を汲み上げた結果とみられているが、これが本当に民意を反映してのものなのか、それとも大衆迎合の安易なポピュリズムによるもなのか、その判断は難しいところである。或いはそのどちらでもなく単なるアホだとの声もある。

更に、今回の変更に伴って【にっしょく】の漢字表記も【日食】に一本化し、公の場で【日蝕】の方を使用した人間に対しては、100万円以下の罰金もしくは100日のボランティア活動を義務付ける方針である事も合わせて発表された。

この変更について、言語表記の権威であり文科省の特別アドバイザーも務める柿方学(かきかたまなぶ)教授は次のように語っている。

『わざわざ難しい方の“蝕”の字を使いたがる人ってのは、つまりはアレですな、難しい方の字を使えばカッコ良く見えて、さぞや異性にモテるだろうと。どう考えてもこれ以外に理由はあらないのです。もう動機不純もいいとこ。よって、表記はもう簡単簡潔な【日食】のみで十分。ただし、虫が好きで好きで大好きで、文字の中であっても“虫”を使いたい、そんなファーブルな人たちについては特例を認める事も視野に入れて考えた方が良いかも知れませんな。まあ、正直、そこはどうでもよござんす』

なるほど、流石は柿方教授、多くの示唆に富んだ言葉である。

なお、同時に議題に上がっていた『【たいふういっか】の漢字表記を従来の【台風一過】から【台風一家】に変更する案件』に関しては、時期尚早の意見が出た事から今回は見送られる運びとなった。


〜おしまひ〜。

かげらふ日報(虚構)03『新雑誌創刊!』

話題:くだらない話

何かと大変な時ではありますが、引き締めるべきところは引き締め、尚且つ、精神的な疲弊を避ける為に、緩められる時にはしっかりと緩め、なんとか乗り切って参りましょう。戦々恐々と過ごす息の詰まる日々の中で、当場所が一服の清涼剤、一休の止まり木となれば幸いに思います。

あ、あと、ぷほ〜ね(すまるとぷほ〜ね=スマートフォン)がまたまた不調に(汗)……どうかこちらも早く元に戻りますように(・ω・`=)ゞ

と言う事で、本編をどうぞ♪









★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「こういう雑誌をずっと待っていたような気がする」―男性(39)ホチキスの針を入れる箱製造業。

「今まで無かったのがおかしいくらいだわ」―女性(47)ボウリングのピン専門デザイナー。

「ワーオッ!」―女性(21)ワオキツネザル飼育員。

「人生観が変わりそうです」―男性(96)読者モデル。

反響続々!日本全国1億人が待っていた!


【月刊もみあげダイジェスト】!


空前のもみあげブームを受けて
ついに創刊!

……気になる創刊号の内容は?

◆コンテンツ紹介◆

◇【総・力・特・集】!!

――徹底検証『次元大介はどこからがモミアゲでどこからがアゴ髭なのか?』


◇【もみあげプレイバック】映画・ドラマの中の名モミアゲたち。

――ドラマ西遊記(マチャアキ版)の中で圧倒的な暑苦しさを誇った孫悟空のモミアゲをクローズアップ。

◇【もみあげ懐古録】あのモミアゲにもう一度逢いたい。

――歌手・尾崎紀世彦さん。レコードジャケットに見るモミアゲの変遷。

◇【もみあげメイクアップ講座】お洒落の決め手は実はモミアゲにあった!

――尖らせたモミアゲの先端をクルンと巻いてダリの髭のようにしてみる。

◇【徹底討論】モミアゲをもっとよく知るために。

――@モミアゲとカリアゲは両立するのか?Aスキンヘッドにモミアゲだけフサフサはアリか?

◇【予防と対策】われらモミアゲ防衛隊。

――もしも散髪中に居眠りをして、誤ってモミアゲを剃り落とされてしまったら?

◇【もみあげ系名作シネマ紹介】

――時代劇「もみあげ忠臣蔵」〜四十七人のモミアゲ〜。宿敵・吉良上野之介のモミアゲを永久脱毛するという悲願を成し遂げた四十七人の義士たちが揃ってモミアゲを剃り落とすラストシーンは感涙必至!(切腹ではないので命に別状はないが)。

◇【街角もみあげ図鑑】あなたのモミアゲ見せてくれませんか?

――巣鴨とげぬき地蔵で見つけたシルバー世代の素敵なモミアゲさん達。

◇【もみあげ経済論】これからの世界経済はモミアゲの存在抜きには語れない。

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かげらふ日報(虚構)02『ピンク色のサインペンは売り切れ中』


話題:妄想を語ろう


『ピンク色のサインペンは売り切れ中』


茶川龍之介や夏目漱右など文豪らの御用達店としても知られる馬鹿(うましか)市の老舗文房具店[しょーん・ぺん]で三十年間まったく売れていなかったピンク色のサインペンとマジックが完売するという前代未聞の事件が発生した。

何故このような事態が起きたのか。地元住民への聞き込みなど丹念な取材を続けた結果、どうやら馬鹿(うましか)国際大学の男子陸上部が深く関わっているらしい事が判明した。

大学側の許可を得て訪れた男子陸上部の部室には三十人程の汗臭い若者たちの姿があった。背中で馬と鹿が肩を組み合い笑う悪趣味なデザインは国際馬鹿(うましか)大学陸上部伝統のジャージだ。単刀直入がモットーの私は挨拶もそこそこに核心の質問―ピンク色のサインペンを買い占めたのは君たちか?―をぶつけてみた。

一瞬の緊張が走る……かと思いきや、全くそんな事はなく、「ええ、そうですよ」、国際馬鹿(うましか)大学陸上部第72代キャプテン安部辺勉(あべべべん)君は事もなげにそう言い、ピンク色のサインペンを買い占めたのは自分たちであるとあっさり認めたのだった。更に「速く走れるナ〇キのシューズが欲しかったのですが、どうしても手に入らなくて……」と言葉を続けた。

履いた者が好記録を連発した事で話題となったナ〇キ製のシューズ。公平性の観点から五輪での使用を認めるか否かで物議を醸したのは記憶に新しい(結局、使用は認められた)。なるほど、陸上部としては確かに喉から手が出るほど欲しい存在に違いない。

次いで飛び出したキャプテンの発言には出発点と着地点の間に大きなねじれと言うか破綻があった。

「ナ〇キの靴。どうしても手に入らなくて、それで仕方なく自分たちで作ろうと、こうしてピンク色のサインペンをたくさん買ってきた訳です」

どういう事だろう?今の発言は、例えるならば「東京駅を出発した新幹線が関西国際空港に着陸しました」と言っているようなものだ。例のナ〇キのシューズが欲しくてどうしてピンク色のサインペンが必要になるのか。が、私の疑問をよそに馬鹿(うましか)大学男子陸上部の面々は一心不乱に各々のシューズをピンク色に塗りたくっている。そんな部員たちにキャプテンの檄が飛ぶ。

「いいかー!もっとピンクに!よりピンクに!とことんピンクに!靴がもっと綺麗でヴィヴィッドなピンク色になれば俺達もより速く走れるようになる!日本記録更新を目指す為にはまだまだピンキー加減が足りない!さあ、全身全霊で靴をピンク色に染め上げるんだ!」

いや、確かに例のナ〇キのシューズはピンク色をしているが、好記録の要因はそのソール(厚底)にあるのであって、ピンク色だから速く走れる訳ではない。

「靴が終わったら次はユニフォームをピンク色に染め上げるぞ!」

どうやら、彼らはとんでもない勘違いをしているようだ。ピンク色の物を身に付けて速く走れるようになるならば、林家ぺー師匠は間違いなく日本記録保持者になれるだろうし、モモレンジャーに到っては音速を超えるかも知れない。

大会で恥をかく前に彼らにその事を教えてあげなければいけない。そう思って口を開きかけた私であったが、次に放たれたキャプテンの一言がそれを押し止めた。

「いやあ、靴をピンク色に塗り始めてから、皆、自己ベストを大幅に更新しているんですよね」

恐るべし自己暗示!信じる者は救われる。しばらくは彼らの様子をこのまま見守った方が良いかも知れない。

「ユニフォームを満足できるピンクに染め上げる事が出来たら、次はメーキャップで顔をピンク色にしようと思っているんです。あ、今のはオフレコでお願いしますね、ライバル校に真似されたくないので」

それはやめておいた方が良いと思う。そして、真似される心配はまず無いだろう。

「さあ、張り切ってピンク色に染め上げるぞー!」

まるで染め物職人のようだ。逆に感心した私は思わずこう呟いていた。

「部室を全面ピンク色にしちゃうってのもありだよね、楳図かずおさんの家みたいにさ」

瞬間、部室のあちこちから「オオーーッ!」と歓声が上がった。

「ありがとうございます!そのピンキーなアイデア有り難く頂きます!」とキャプテンは目を輝かせた。

単なる冗談のつもりだったのだが、それはそれで面白そうだ。今後の国際馬鹿(うましか)大学男子陸上部から目が離せなさそうだ。


〜おしまひ〜。



かげらふ日報(虚構)01「N町商店街の復活」


話題:みじかいの


◆◇◆◇◆

私鉄N駅の北口を少し進んだ先に昔ながらの個人商店が50軒ほど軒を連ねる化石のような商店街がある。N町アーケード商店街。昭和の中頃までは賑わいを見せていたその商店街も、今は全ての店の戸口に埃を被った鈍色のシャッターが降りている。俗に言うシャッター商店街である。街路灯も所々切れており、ついている灯りも何処か薄暗い。閑古鳥の鳴き声すら聴こえないほど寂れてしまった“かつての銀座通り”。

ところが、完全に廃墟と化していたN町シャッター商店街の50軒全てが何の前触れもなく復活したのである。しかも、申し合わせたわけでも無いのに50軒中49軒がタピオカ屋としてオープン。この無意味なシンクロニシティというか、何ともバランスの悪い復活劇に町の人々はさぞや驚いているだろうと思いきや、実はさにあらず、(またか……)との声が嘆息まじりに上がっているという。“町の生き字引”の異名をとる吉村嘉兵衛翁(384才―自己申告―ギネス申請中―フザケるな、とギネス社怒られ中)に拠ると、この商店街はいつもこんな感じでブームにあやかろうとするのだそうだ。それも明らかにブームから出遅れている。過去にも1軒を除いて全店ナタデココ屋になったり、同じく1軒を除いて全店ティラミス屋やベルギーワッフル屋になったりした。そしてブームが完全に去ると全店同時に閉店し再び廃墟に戻るのだ。

今回のタピオカ復活について、N町の出身者であり、著名な商店街評論家でもあるケロリンパ斉藤氏は次のようなコメントを残している。

「いや、この前ね、食卓の上にタピオカミルクティーが置いてあったのでちょっと失敬して飲んでみたら……タピオカじゃなくてカエルの卵だったよ。孫が川で見つけて捕ってきたらしい。濁った泥水がミルクティーに見えたんだな。今頃お腹の中でオタマジャクシになってかもよ。ワッハッハ」

K商店街と共にケロリンパ氏の今後からも目が離せないところである。


〜おしまひ〜

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