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ジョン・オーウェン=ジョーンズ コンサート in ジャパン

John Owen-Jones Concert in Japan
2015.8.27 19:00〜
東京芸術劇場 コンサートホール


歌唱テクニックの素晴らしさ。
余韻がまだあります。

セットリストが貼り出されていて嬉しい。
以下感想。
曖昧なとこあるかも。
あと通訳なしでMCやるから聞き取れない英語もけっこうあったのが悲しい。
とにかく以下感想。




『Nature Boy』
うわぁぁぁ始まったいきなり始まった!
ちょっと太り気味なのでとても抱き着きたくなりました

続けて気合入った“1.2.3.4...!!!”からの
『Thunderball』
ネクタイちょっと緩めていて首元が色っぽい

“楽しんでるよな?”からの
『Kiss of The Spiderwoman』
妖しい歌い方が艶っぽかった
JOJが若い頃に蜘蛛女のキスやってたら…垂涎ものです

“次はオペラ座の怪人から”、との紹介で会場からは拍手
『Music of the Night』
はい、ジェントリー
声が紳士的で誘惑されるのも仕方ない
途中サックス?かなんかが暴走してて気になりました

“オペラ座の怪人は好き?
次の曲は僕一人では歌えないんだ”
会場のざわめきを裏切らない
『All I Ask Of You』
新妻さんとデュエット
新妻さんと声あんまり合ってないかな?
二人で余り練習できてないのかな?
っていうのが正直な感想

新妻さんソロ
『Man of La Mancha'』
めちゃくちゃ上手い
声質にあった声の出し方をしていてとってもパワフル
ドレスの裾を広げたのがワイルドで素敵

余り寝てないらしいJOJ
“歌ってる間にも寝落ちしちゃいそうだから、寝そうになったら叫んで起こして欲しいな”、という新手の手法で声援を求める
そして喜んで叫ぶ観客

ジャパニーズプレミアとか言ってた気がする
『Kiss the Air』
最後にGoodbyeと言われて無性に寂しくなりました

“次の曲はクワーキ(ピアノ奏者)が一緒に歌ってくれます”、からの
『I'd rather be sailing』
囁きと美しい高音で魅力を抜群に発揮
とても素敵な歌なので調べたらA New Brainというミュージカルの曲みたいですね
うーん、観てみたい

暑いわーと言いながら徐に扇子を出して扇ぎ始めるところからのクワーキとの小芝居が面白かった
“君も扇いで欲しい?”
“ああ”
“気分はどう?”
“スバラシイ!(日本語)”
しかもマイクを差し出してインタビューするみたいにするところがまたチープでいい

どっかのタイミングで、
“終わったらビールで一杯やりたいね、ビールは日本語でどう言うの?”
“ビールゥ!(日本語発音)”
“ジョン(クワーキ)、ビールやろうな!”
っていうやり取りがあったんですけど、どこだったか思い出せません
面白かったしお茶目で楽しかった

“休憩前にあと2曲ね
初めて見てから演じたいと思ったものです”と割とあっさり紹介して始まる
『Why God Why ?』
表現が難しいんだけど、なんでか可愛らしい感じの声で歌っていて、曲の内容考えるとそのギャップで却って悲しくなりました

“次の曲が最後だね……休憩前の”
っていうちょっと意地悪な言い方に誰も動揺しないのでちょっとばつが悪そうなJOJがとても愛しいです
『Anthem』


休憩20分
トイレが混んでて入れず


登場したら胸元が肌蹴てて驚いた
『Feelin' Good』
生演奏との相性抜群
“新しい夜明け、新しい生活、そして僕は気分がいい”ってあの声で言われたら堪らなくなる
個人的に好きな曲だったのでけっこう嬉しい選曲でした
あと吐息が聞こえた

『Motherless Child』
拍手を求められ、みんなで拍手
ジャズのちょっと影のある感じと力強い歌い方がけっこう珍しい雰囲気だったかな
しかしそんなことより最後に一拍音が止まるところで指を口元で立てて静かにって要求したのに心を持っていかれました
何あれ
何、あれ!
大阪の時に曲が終わったと思われて拍手が起こって曲が台無しになったのの対策だとしたら、サンキュー大阪
あんなんされたら何時間でも黙っていますわ

『This is the Moment』
JOJのやるジキルとハイドが観たくなる商法
明るい曲調が嬉しい

“さて、ロックコンサートはおしまい、ミュージカルに戻ろうか?”
でみんな笑う

JOJの“Every night, I used to stand on a stage. Listening to song of singing(たぶんそんなような言い方)”って言い方がとても好きで忘れないようにしようと思った
歌う為にステージに立ってたんじゃなくて、ステージに立って、歌ったり歌うのを聞いたりしたっていう並列感が素敵です
“いつも聞いていて、僕はとても好きで口ずさむこともあった曲だよ”
“ついにはレコーディングしてCDにも収まってるからタワーレコードでも買えるやつなんだけど”、って言うJOJの営業力に脱帽です
『Wishing You Were Somehow Here Again』
初めて聞いたから感動した
女性の歌も似合うんだなって思った
とても優しく歌うから
なんかもう何も考えられなくなる歌声なんだ
ファントムのDV声も出せるのに信じ難い
共演者が歌うのを聞いて、いい歌だなー、好きだなー、って思うのは、ミュージカルを愛して、自分の仕事とちゃんと向き合っている証拠だと思う
そういう生き方も全部好きです

『Til I Here You Sing』
感情移入して歌ってくれてる感じがファンには嬉しい演出でした
ファンサービスのレベルが異次元
JOJファントムの完璧さを思い知る
望むものに手を伸ばすのに届かない感じがほんともう苦しくなるくらい伝わってくるの
ラブネバは好きではないんですけど
歌は好き

歌についてのエピソードからの
『Tell My Father』

『The Prayer』
新妻さんとデュエット
声ぴったりで、声質、ビブラートもほんと相性良くて感動しました
まさかのだけどオペラ座の怪人より良かった

『I Dreamed a Dream』
新妻さんソロ
歌唱力が抜群にいいのでレミゼを思い出して泣きたくなりました
好きなon my own歌われてたら泣いてた
歌の後に、はけようとする新妻さんを引き止めて言ったJOJの、“I love youは日本語でなんて言うの?”からの、“愛してる”、を聞き出す手法に驚愕
これは使える

次が最後の歌です、にえーっと言われて戸惑うJOJが愛しい
“世界で長く愛されていて、僕も好きな曲です”、と紹介
『Sudderly』
正直、レ・ミゼラブルの中でもこれを?っていう曲でどこに使われてたか思い出せないくらいでしたすみません
初めてまじまじと聞いたら、とてもいい曲です
歌詞覚えて口ずさめるようになりたいな

『Bring Him Home』
神聖な歌声
コルム・ウィルキンソンさんと顔までそっくりになっていて、行き着く場所があるのかなって思わされる
眉根を寄せて歌う姿に切なくなる


アンコール
新妻さんと舞台からはけた後に走って戻ってきてくれて、最後まで本当に手を抜かずにサービスしてくれるので、プロってすごいなあと感動しました
しかも新妻さんも歌いはしたけど、たくさん歌ってくれたのも嬉しかった

“もう一曲ね、この曲は、皆さん、日本の方へ…”からの
『You are so beautiful to me』
私に歌ってくれているんだという気持ちになり胸がいっぱいになる
なんか変なんだけど、平凡な男の愛の告白って感じがぐっときました

『Rise Like A Phoenix』
全員総立ちで聞き入る
カラオケのため音量がちょっと大きかったのとJOJが先に歌い終わり生演奏の素晴らしさを思い知る


鳴り止まぬ拍手


今でも胸がいっぱいだし思い出すと時間は戻らないという単純な事実に打ちのめされて何も手に付かなくなります。働きたくない。

山岡 龍貴/初恋

※BL
※拗らせた片想いを指摘されてキレる
※普段は名前、人前では苗字で呼ぶ




2年前に異動したのに、神田さんは今でも西東京支社の人達に歓迎されているらしい。特にパートのお母さん方に人気があるらしく、一緒に居る俺達まで差し入れしてもらえるから笑える。

あれは、マダムキラーってやつだ。

その神田さんは、平野にバイクの乗り方を教えていて、遠くから見ていても確かにいい男だ。

「お前さ」

神田さんを眺めていると、突然、隣に座っている深水が呟いた。

「先週、森田と遊ぶ約束してた?」
「俺はしてないけど。吉田はしてたんじゃねえかな」

そんなことを言っていたはずだ。

「待ち合わせ場所に行ったら、森田しかいなかったんだけど」

ウケるな。

俺が笑うと深水はイラっとした顔で俺を睨んだ。琢磨が見たら怖がりそうな顔だけど、今は琢磨がいないからなんとも思わない。深水は目付きが悪いから、後輩は深水の顔を羨ましがっていたけど、俺にはよく分からない。

俺は琢磨みたいな顔が好きだ。

「お前、吉田と居た?」
「いつ?」
「先週の土曜の午後」
「あー、土曜は授業あったろ。学校に居たわ」
「ハァ?」

深水は多分、学校に来てない。授業サボっておいてこっちの文句を言う辺り、我が儘だよな。

深水は土曜にほぼ登校しない。俺は学校なんてダルい時に適当に休めばいいと思うけど、深水は律儀に土曜ばっか休むから、深水の性格が出ててそういうとこ面白いのに、教師はそれを嫌っている。土曜授業に抵抗してると思われているのかもしれない。深水のは、そんな深い考えじゃねえと思うけど。

先週も授業が終わってから、中澤に深水のことを言われたんだった。その後、琢磨とコンビニで買ったものを適当に食べて、それから、どうしたっけ?

「岩尾は?」

あー、そうだ。思い出した。

「それだ。なんか岩尾がしつこくて、吉田が嫌がったから飯食った後すぐ帰った」
「だったらこっち来いよ」
「吉田の機嫌が悪かったんだよ」
「機嫌とかどうでもいいわ。こっちは森田と二人だぜ」

深水は舌打ちしてタバコの火を消した。

森田はクラスでいじめられてたとかいうんで、琢磨が最近仲良くなった奴だ。琢磨のことだから、理由は同情とかじゃなくて、大好きな京平先輩に関係するもの全部知りたいとか、詰まんないことを楽しくしたいとか、そんなことだろう。

京平先輩が森田を助けたとか、森田をいじめてた連中をシメたとか、一時期話題になったから俺も少しは聞いたことがある。京平先輩を信奉している琢磨は、だから森田のことに興味を持ったのだろう。森田自身の魅力とは関係ない。

俺だって、あの京平先輩のお気に入りなら、会ってみたいと思った。

深水はそういうの興味ないだろうけど。

しかし、現実は違った。

森田は詰まんない人間で、京平先輩が助けたとかいうのも多分勘違いで、琢磨の友達にしてはなんの取り柄もない平凡以下の奴だった。気に掛ける価値のない奴だった。

でも琢磨にとっては、どんなものであっても、京平先輩と関わりのある人間が居たら近付かずにはいられないらしい。馬鹿だからな。

それで琢磨が満足するなら構わない。

森田と仲良くしようとは思わなくても、琢磨を森田から遠ざけようとも思わない。

『俺がいじめられても、京平先輩は助けてくんないよな』

先週の土曜、琢磨はそう言った。

それで岩尾と喧嘩になった。

琢磨にとって森田は、今でも京平先輩の特別な存在らしい。岩尾が否定しても琢磨は耳を貸さない。

森田のせいで、最近、琢磨と岩尾がよく喧嘩をする。俺としては琢磨さえ良ければなんでもいいのに、岩尾はそうは思わないから喧嘩になる。

その森田と二人?

「どうでもいいだろ。そんなの、置いて帰ったんだろ?」

俺ならそうする。

琢磨が森田と仲良くなりたいだけで、俺とは全然関係のないことだ。だから森田と二人ってのは俺一人だけと変わらない。

深水を見ると、もう一本タバコを出して火を点けていた。

そして深い溜め息をひとつ吐いた。

「そういうの、ひでえよな」
「は、何が」

酷いか?

何が?

「お前って吉田のこと好きなの」

深水はそう言って俺を見た。キレた時の猛獣みたいな目付きじゃなくて、もっと複雑な、ちゃんと人間の目だ。だから多分、怒ってる訳じゃないんだろうな。

よくわかんねえ質問。

琢磨のこと?

「好きだろ、そんなの」

当たり前過ぎる。

俺は即答した。

大体、琢磨が好きだっていうのは深水には何度も話している。

「つか、流れわかんねえんだけど」

なんでこんな流れになったんだよ。俺には全然分からない。深水は割とわかんねぇこと言うキャラだけど、今回のは、ほんとに分からない。

「分かれよ」
「ハァ?」
「吉田以外好きじゃねえのかってことだよ。森田と吉田がそんなに違うか?」
「別人だろ」

当たり前の事実だ。

神田さんに聞いても同じことを答えると思う。

「だから、てめぇの好きは、おかしいっつってんだよ!」

深水は何故かキレた。声がでけぇ。

「なんだ、急に。まじでわかんねー」

分かれってなんだよ。

深水って我が儘だし、よくわかんねぇこと言うけど、俺に対してキレるっていうのはレアだ。琢磨にはたまにキレてるのを見るけど。俺とは気が合う方だから意外だしビビるわ。

「お前、吉田とデキてんの?」
「は?」
「そういう好きかって聞いてんだよ」
「は?」
「おかしいだろ。俺が連れて来た平野とは普通に話すのに、なんで森田はダメなんだよ。それって嫉妬だろ」
「ハァ?」
「いま吉田が誰かとセックスしてたとして、お前は別にいいって言えんのか」

何言ってんだ?

馬鹿か?

俺は深水の口からタバコを奪って投げ捨てた。ついでに胸倉を掴んでやる。

「琢磨は童貞だ!」

俺は叫んだ。叫んでから、神田さんの居る方を見ると、二人には聞こえなかったらしくまだバイクに乗っている。俺は決して冷静ではなかったけど、なんとなく、助かった、とだけ思った。

琢磨は童貞。

俺はなんでそんなことを言ったんだ?

深水に目を戻すと唖然としていたし、俺も自分の言ったことに呆然としていた。意味なんてない。事実かどうかも分からない。

そういうの、願望って言うんじゃねえの。

琢磨は童貞。

「悪い。そうじゃない」

俺に同情したのか、深水は目を逸らして優しく否定した。

深水のこういう言い方は初めて聞いたかもしれない。それぐらい不慣れで優しい言い方だった。こいつは女にもこういう言い方はしない。

俺は固まった掌を無理矢理開いて、深水の胸倉から手を離した。

『悪い。そうじゃない』

深水はなんで謝ったんだ?

琢磨が童貞だと聞いてしまったから?

不適切な例えだったから?

琢磨で俺を追い詰めたから?

俺には琢磨のことばかり頭に入ってくる。そんなの、幼馴染みだから当然だ。琢磨だけが俺を変なあだ名で呼ばないんだから、俺だって琢磨を特別扱いして当たり前だ。幼馴染みで、付き合いが長くて、琢磨はたぶん童貞だし、俺のことを頼ってくるし、俺は琢磨のことが好きだし、お互い好きなら仕方ないだろ。

琢磨がセックスしてる訳ない。

だってあいつは童貞だから。たぶん。

でも、もし、してたら?

俺は相手を寝取る。

ああ、それが答えか。

「そうじゃないって、どういう意味?」

俺が尋ねても、深水はこちらを見ずに、力無く足元に視線を落としている。

「お前、マジだろ、それ」
「は?」
「誰か知らない女とセックスしてたら許すのかって聞いたのに、お前、そんなの微塵も信じねえじゃん。それ、恋愛の好きだろ」

『恋愛の好き』

衝撃だった。

俺はまた深水に掴み掛かった。でも深水を殴りはしなかった。できなかった。

「ハァ?」

俺の恋の相手は琢磨か?

「キレてんじゃねえよ。クソ、シャツが伸びる」

深水に腕を掴み返されて、俺は素直に指の力を緩めた。

「恋愛?」
「そうじゃねーの」
「俺は琢磨を好きじゃない」
「馬鹿言え。お前は吉田のこと大好きなんだろ」

そうだな。

でも違う。

「恋愛とか気持ちわりー」

琢磨に対する好きは、そういうんじゃなくて、もっと深くて、時々は喉の奥が詰まるような、でもすげーハイになって抱き付きたくなるような、そういう、見返りを求めない、掛け値もない、深くて、熱くて、簡単には捨てられないものだ。

こんなの、他の誰でもない、琢磨にしかできない。

琢磨じゃなければ、こうはならない。

これは、なんなら、琢磨が居なくても、俺一人だけでも十分成り立つくらいの強烈なものだ。最初に琢磨が三回笑ったら、あとの百万回は俺が笑う。セックスしたいかどうかに行き着く女に対する好きとは全く違う。

ある瞬間、思い出す度、心臓を掴まれるようなこの感情が恋なら、世界はもっと変わっていると思う。

「だから、お前いま気持ちわりぃんだよ」

深水は眉間に皺を寄せて言った。

そうか?

でも琢磨も俺に対して同じことを思っているはずだ。

琢磨も気持ち悪いってことか?

「死ね」

俺が言うと、深水は苦々しく笑った。




【初恋】

グリーン/二番目

行きつけのバーにもルーセンは現れなかった。居なくなった。突然、急に。

人を殺しに行ったのだろうか?




【二番目】




若い頃は好きだと思ったら止まらなくなった。気持ちを抑えられるほど大人でもないから、辛い思い出が沢山ある。俺の価値がどんどん下がって、弟に呆れられるのが悲しかった。

好きでも嫌いでもない人と楽しく生きればいいんだって、漸く見切りを付けられるところだったのに、それを、ルーセンが押し曲げたんだ。

ルールを破らせた。

希望を持たせた。

ルーセンが手を差し伸べたから、俺は、捨てられる覚悟も捨てて、縋ろうと思ったのに。彼の瞳の奥にある暗い闇に触れようと思ったのに。

余りに酷い。

拒絶されるよりも、受け入れられたことを無かったことにされる方が辛い。

「僕のところへ来てくれたのは、僕のことが好きになったからですか?」

キースが言った。

黙っていると怖そうな冷たい表情も、彼が優しく話すと王子様みたいに高貴で美しくて見惚れてしまう。

「二番目でもいいって言った」

俺の言い草にキースは苦笑した。

「ごめん。あれ、忘れてください」
「なんで?」
「なんでですかね。理由は僕にも分かりませんけど、考えが変わりました。二番目は嫌です」

キースはそう言って俺の頬を撫でた。

俺は今でもキースの顔が好きなんだなと思う。こうして間近で見詰められるとドキドキするし緊張する。付き合っていた頃にはなかった強引さとか、逞しさとか、ちょっと苦労した感じとか、益々好きになってさえいる。

ルーセンとの出会いで、俺は何も成長しなかったんだ。あんなにルーセンが好きで好きで堪らないと思ったのに、離れられたらあっさり他の男にくっついて、優しくしてもらって喜んでいる。

俺って節操ない。

それに、女々しい。

気付くとキースの手は俺の頬から体に流れて、そのままゆっくり撫で始めた。その触り方はなんとなく俺の存在を確かめるような手付きだったから拒めなかった。

「来るって分かってたら掃除したのに」

キースはくすりと笑って俺のお尻を撫でた。

「ちょっと」と言って、さすがにキースの手を抑えて制止したが、それで止まらないのが今のキースだった。

「お尻触らないで」
「え?」

キースは笑みを絶やさず俺のお尻を撫で続けている。というか揉んでいる。

それを俺はもう拒否しなかった。

「僕を一番にしてください」
「そういうかっこいいこと、お尻を触りながら言わないでよ」
「僕は、かっこいい?」

キースは笑顔で、俺のシャツのボタンを外しながら尋ねた。軽く首を傾げる姿には色気がある。

昔みたいに綺麗なだけの男じゃないって思うと、キースの何でもない仕草でも俺の心をくすぐる。俺は恥ずかしくて顔が真っ赤になっているのが自分でも分かった。

「かっこいいよ」

キースは脱がしたシャツを近くの椅子に引っ掛けて、俺の身体をぐいぐい押してベッドまで誘導した。キースの荒々しい手付きは俺のことも十分煽る。

かっこいいよ。

すごくかっこいいよ。

「ありがとう。嬉しいです」

キースは嬉しそうに、本当に俺にはそう見えるような緩んだ顔で、笑って、俺にキスした。口の中の奥まで味わうようにゆっくり舐めて、それがけっこう気持ち良かった。

こんなの、昔やってたっけ?

あの後覚えたのかな?

キースは俺を優しく扱った。嘘みたいだったけどそれは現実だった。

こんなの狡い。

「一番好き?」

キースは何度も尋ねたけど、俺は一度も頷かなかった。
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