話題:妄想話


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【木曜日】

午前6時。会社の仮眠室で目を覚ます。しまった。仮眠をとるつもりが本格的に朝まで寝てしまった。

大失態。…とは言え、これで遅刻の心配は無くなった。ここは一つポジティブに捉えるとしよう。始業の9時まであと3時間もある。という事で二度寝を決行。グンナイベイビー。キングトーンズ。で、再び目を覚ましたのが午前11時。ものの見事に遅刻が決定する。

今年に入ってから3度目の遅刻だ。これはマズい。と言うのも、うちの会社は売上金の横領や商品の横流しには寛容だが、その一方で遅刻には非常に厳しい。つい先月も尊敬する上司の一人がセントヘレナ島へ島流しになったばかりだ。

【モーレツ平社員A】の上司ですらあっさり孤島に幽閉されてしまうのだから【うきうき平社員C】の私などどんな目に合うか判ったものではない。

どげんかせんといかん。

何か名案はないか?

…うーん…

…うーん…

…そうだ。午前中に直接得意先を回ってから出社した事にしよう。これなら遅刻扱いにはならない。ホッとして枕元の置き時計を見る。午後1時。アレ?確か午前11時だったはずなのに…。

どうやら遅刻を正当化する言い訳を考えていて再び眠ってしまったようだ。恐るべし最高級フランスベッド With 丸八真綿の羽毛布団。モミアゲも2枚2倍。

午後1時10分。得意先の会社に電話するつもりが間違えて高校時代の友人に電話してしまう。何やかんやで昔話に花が咲き、約2時間の長電話となる。来週、ゲームセンターで待ち合わせる約束をして電話を切る。彼とはテーブルホッケーの対戦成績が現在、通算で2999勝2999敗。どちらが先に3000勝に到達するか。早くも心が燃え上がる。

午後3時。今度こそ得意先の会社へ電話。午後2時ぐらいまでそちらへ行っていた事にして貰う。これでアリバイは成立した。

残る問題はただ一つ。如何にして誰にも見つからないよう仮眠室を出てオフィスに戻るか。普通に出て行けば間違いなく誰かに見られる。

どげんかせんといかん。

午後3時30分。非常用の縄梯子を窓から外へ垂らし、仮眠室から脱出。無事、15階の高さから1階へ到達する。足がガクガク震えている。

午後4時。ようやく足の震えが治まってきたので、ビルの玄関に回り、何食わぬ顔で社内に戻ろうとしたところで、脱いだ靴下を仮眠室に置き忘れていた事に気づく。
物的証拠を残すのは危険だ。

そこで、降りて来たばかりの縄梯子を上り仮眠室へ。靴下を履き、再び縄梯子を下りる。下りている途中で、今年はナボナ誕生50周年のメモリアルイヤーである事を思い出す。

今度こそ堂々と正面玄関を通りオフィスへ。タイムカードを押す。

午後5時10分。

遅刻どころか完全に無断欠勤となる。ずっと会社に居たのに…。

ペナルティで【うきうき平社員C】から【よぼよぼ平社員D】へ降格。社内の紙コップ自販機の“氷なし”ボタンの使用資格を失う。同時にエレベーター内における“すかしっ屁”が1日2回までに制限される。

厳しい処分。しかし、取り敢えず、遅刻は免れたし島流しも回避した。今日は今日。過ぎた事を悔やんでいても仕用がない。ここはポジティブに考えるとしよう。

午後7時。行き付けの店(バッティングセンター)へ。左肩の開きに気を付けながら約300球を打ち込む。

今日も一日頑張った。素直にそう思えた。

さあ、明日は待望の休日だ。
何をして過ごそうかな?


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金曜日〜は例によってまた明日以降に♪ヽ(´▽`)/。