ウソ発見器と沈黙の容疑者(後編 PART1)。


話題:SS


最新鋭の【ウソ発見器】は町村の予想していたようなレトロなメカではなく、数ヶ月前、ソニーから発売された“折り畳み型タブレット”のような形状をしていた。

『では、ちょっと失礼して…』

“仁来”と呼ばれた白衣の技術担当者が二つ折りのタブレットを開くと、案の定、開かれた内側は液晶モニターとなっている。そして、電源ボタンが押されると僅かな間を置いて液晶画面にオレンジ色で【EMMA】なる文字が浮かび上がって来たのだった。

『では、今から各センサーの確認をしますので、そうですね…二分少々お待ち下さい』

それから仁来は、タッチパネルの液晶画面を色々操作していたが、その作業内容は機械に疎い町村には正直チンプンカンプンである。ただ、液晶画面に最初に登場した【EMMA】と云うのが、この最新型ウソ発見器の名前で、恐らくそれは“閻魔大王”に由来しているだろう事は容易に推測出来た。

閻魔は、どんなウソをも簡単に見破ると云う…。なるほど、これは良いネーミングだ。町村は変なところで感心していた。一方、テストされる側である容疑者の男は、黙々と作業する仁来の様子を興味深そうに見つめていた。

そうこうする内、液晶画面の中に、対面に座る容疑者の上半身が大きく映し出された。背面に仕込んであるレンズが捕らえたものだろう。やがて、その容疑者の姿が赤→紫→青→緑→黄色と色相変化をみせた。それが何を意味するのか町村には全く理解出来なかったが、仁来の『センサー正常作動、確認』の言葉で、今のがセンサーのチェック作業である事を知った。もっとも、それがどのような類いのセンサーなのかは知る由もないが。

やがて、作業を終えた仁来は【EMMA】から手を離し町村に向かって軽く頷きながら云った。

『スタンバイ完了です。』


《続きは追記からどうぞ》♪

 
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ウソ発見器と沈黙の容疑者(プレ後編)。


話題:SS


容疑者が“最新鋭のウソ発見器”という言葉に興味を示しているのは明らかだった。勿論、町村がそれを見逃すはずはない。だが、待ちに待った突破口とは云え、あまり露骨に食いつくのも、如何にも自分が精神的下位にいる事を証明しているようで上手くない。ここは、あくまでも自然な流れを装わなければならない。

『うん。ウソ発見器…ポリバケツだかポリグリップとか云うやつだ』

『……ポリグラフですよ』

取り調べ開始から六時間、ついに“開かずの扉”が開いた。

『そう、それだ』

内心では(よしっ!)と握りこぶしを固めた町村だが、気持ちは表には出さずに淡々と言葉を続ける。

『俺みたいな現場一筋の人間には正直よく判らんのだが、何でも現代の科学技術の粋を尽くした【ウソ発見器】が完成したらしくてな…』

『…それは興味深い』

いい感じだ。このペースを保って行こう。町村はそう考えていた。

『まあ、俺としては…現場の人間の力量を信用されてないようで素直には喜べないんだが、聞いた話に拠ると、科捜研レベルじゃなくて科学技術省も絡んだプロジェクトらしい』

『…ますます面白そうですね』

話す言葉自体は、ぶっきらぼうと云えるほど短く簡単なものだが、少なくとも会話はちゃんと成立している。これは良い傾向だ。

『俺はあんまり信用してないんだがね…上の方の“お墨付き”ってやつで…どんなに訓練をつんだ人間でも、この【ウソ発見器】を騙す事は不可能なんだとさ』

町村は敢えて、“自分はそんな機械には興味がない”といったふうを装った。人は基本的に、“押せば引き、引けば押す”生き物なのだ。町村は、引けるだけ引き、容疑者が押して来るのを待っていた。

『…それは今後の為にも是非見ておきたい』



《続きは追記からどうぞ》♪

 
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ウソ発見器と沈黙の容疑者(中編)。


話題:SS


無機質の時間が流れる乏しい色の空間、麹町署の取調室で、容疑者の若い男は机の上に並べられた十六枚の写真に視線を落とした。

取り調べを担当する町村警部は、僅かに開けられている鉄格子つきの小窓を背に、写真を見る容疑者の反応を伺った。

並べられた十六枚の写真は、今回の事件(ヤマ)である【連続窃盗事件】における盗難品を写した物だが、そこには全くと云って良いほど“統一性”が欠如していた。

写真に目をやりながらも相変わらず沈黙を続ける容疑者に対し、町村警部がやや気軽な口調で話し掛ける。

『なあ…この脈絡のない写真、お前さん、どう思う?』

何時の間にか相手に対する呼び掛けが“お前”から“お前さん”に変わっている。これは、フランクな雰囲気を作り出し、多少なりとも容疑者の気を緩ませようと云う、町村の心理的作戦に違いなかった。

しかし…

『………』

当然の事ながら、この程度の揺さぶりで口を開く相手ではない。町村も、それぐらいは承知している。だが、今はどんな事でも試してみる他ないのだ。

『こんな物を盗み集めて何しようってのか、俺にはサッパリ解らん。あ、そう云えば…昔、ガラクタを集めて溶接して変なオブジェみたいなの造る“ゲージツ家”とかいう見た目のごっついオッサンが居たな…タモリの番組によく出てた…名前何てったっけ?…トラさんじゃなくて、ゴリさんじゃなくて…お前さん、覚えてないかい?』

『………』

饒舌を続ける町村だったが、いずれも空振りである。もしこれが野球であれば、とっくに空振り三振バッターアウトだろう。それでも、バットを振らなければ球には当たらない。この容疑者は、黙っていても四球で自滅してくれるノーコン投手とは違うのだ。とにかく、今はバットを振り続けるしかない。

『思い出した、クマさんだ。篠原ナンチャラとかいう。…これ盗んだヤツも、そういう素人にはよく解らん“オブジェ”みたいなアート?ってやつでも造るつもりなのかな?』

『………』

やはり反応はない。

小窓から流れ込む外気に肌寒さを感じた町村は、静かに窓を閉めると改めて容疑者の向かいに座り直し、机の上の“写真集”に目をやった。

並べられた十六枚の写真の間には、どう考えても繋がりらしきものは見受けられない。


《続きは追記からどうぞ》♪

 
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ウソ発見器と沈黙の容疑者(前編)。


話題:SS


麹町警察署の第一取調室では、かれこれもう六時間近くの間、容疑者への尋問が続いていた。

もっとも、それを“尋問”と呼ぶ事が果たして適切かどうかは大いに疑問の残るところではあるが。

ただ調書を書く為だけに使用される、機能的と云えば余りに機能的に過ぎるくすんだ灰色の机を挟んで向かい合う格好で二人の男が座っている。

鏡が据え付けられている壁を背に、ネクタイを緩めに結んでいる白シャツ姿の四十男が取り調べを担当している町村警部で、反対側に座るジーンズに青シャツといった極めてラフな格好の二十代半ばと思しき男が容疑者である。

『なあ…いい加減、名前ぐらい教えてくれたっていいだろ?』

『………』

『ダンマリ作戦続行かい…』

町村警部はウンザリしたように首を振った。

取り調べ開始から約六時間…ずっとこんな調子なのだ。とにかく何を聴いても喋らない。確かに、長年の経験上、黙秘権を行使する容疑者は多い。しかし、それもせいぜい二時間が限界である。

どうやら“沈黙を続ける”という行為は、思ったよりも人間にとっては苦痛であるらしい。人は貝にはなれないのだ。

ただ、稀に筋金の入ったようなヤツもいる事はいる。しかし、そういう人間は大抵見ればすぐに判る。ところが現在、町村の目の前にいる男はどう見ても、その手の“筋金入りの犯罪者”とは思えなかった。そして、その事が町村をかつてない程困惑させ、同時に焦らせていたのである。

『十六件の内…』

町村警部が容疑者の目を真っ直ぐに見据えながら云う。

『…十四件で、お前にソックリの男の目撃証言が取れてるんだよ』

『………』

だが、男の涼しげな表情は崩れる気配さえない。新卒で採用された銀行員といっても通用しそうな見た目の一体どこに、ベテラン取調官を鼻であしらう“精神的図太さ”があると云うのか…。

そんな事を思いながらも、町村は粘り強く尋問を続ける事にした。

『それでな…目撃証言の取れてない残りの二件含む三件でも、お前に酷似した男の姿が商店街の防犯カメラにバッチリ映ってるんだ。別に人を殺した訳じゃなし、素直に自白すれば罪も軽くなるってもんさ。な、よく考えてみろよ』


《続きは追記からどうぞ》♪

 
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【ほら吹きニュース】ホットヘッドライン。


話題:妄想を語ろう


ミュンヒハウゼンチャンネル・ジャパン提供《ほら吹きニュース》ホットヘッドライン。

【4/21付け】。


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@【邪馬台国の所在地がついに判明!?】

今月20日、頓珍漢大学の考古学チームが長年の謎であった邪馬台国の真の所在地をついに突き止めたと発表した。

発表に拠ると、邪馬台国があったのは“アフリカのウガンダ共和国”でほぼ間違いないとの事。

ウガンダ共和国の辺境の村に住む或る老婆が『ここだけの話、実は私が卑弥呼なのよ』と語った事が場所特定の決め手とされているが、これには国内の“畿内説派”と“九州説派”が猛反発しており、

近々、“畿内説派”“九州説派”“ウガンダ説派”3派の代表3人が集まり、カラオケで[少年隊の仮面舞踏会]を熱唱する予定となっている。


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A【スタジオジブリのマニア集団が映画製作発表!!】


スタジオジブリのコアなマニア集団が立ち上げた映画製作会社[スタジオガブリ]が、記念すべき第一弾となる映画の製作を発表した。

タイトルは『となりの崖の上の借り暮らしのカリオストロと千尋の宅急便のもののけの動くぽろぽろ豚』。

作品のテーマは“デジャヴ”で、昔どこかで見た事があるような懐かしい感覚を観客に感じて貰いたい、と宣伝部は語るが……

(本家の場面をパクッてツギハギにするつもりでは?)と、関係各位から早くも内容を危ぶむ事が上がっている。

なお、この作品は前編と後編の2作品に分かれており、前編の上映時間が約7分、後編が約6時間45分となる予定である事も合わせて発表された。

因みに、[アニメ映画]ではなく[活動弁士映画]になる可能性が高いとの事。


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B【オリンピックに、あの競技が!?】


3412年の五輪招致を共同開催という形でいち早く表明した千葉県と埼玉県は、[千玉五輪]決定の暁には開催地の発言力を生かし、五輪競技に幾つかの新競技を加える計画がある事を発表した。

その新競技は…


@めんこAポコペンBあっちむいてホイCろくむしD金魚すくいE鬼の顔にボール当てるやつFほっかむりでどぜうすくい(安来節・採点競技)


いずれも日本人には馴染み深いものばかりで、もし、これらの競技が正式に採用されれば金メダルの数が大幅に増えるだろうと期待されている。

招致成功には、まだまだ難題が山積みであるのは事実だが、既にウガンダ共和国が[千玉五輪]を全面的に後押しする事を非公式ながら発表するなど、俄かに現実味を帯び始めている。


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以上、4/21の《ほら吹きニュース》ホットヘッドラインでした。

 

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