話題:SS


かくして、最新型ウソ発見器【EMMA】が初めて実践の場で使用される運びとなった訳だが…

尋問を始めようと口を開きかけた町村警部の機制を制する形で、先に口を開いたのは意外な事に容疑者の方であった。

『その前に…』

『…ん?』

出鼻をくじかれた町村が少し間の抜けた表情で容疑者を見る。

『その前に…この最新型ウソ発見器を使った取り調べがどのような流れで行われるのかを聞かせて欲しいのですが』

窃盗事件の容疑者という立場でありながら、よくもまあ、そのような事をぬけぬけと…。町村は、半ば呆れたような表情で云った。

『お、お前なぁ…自分の立場ってものが判ってんのか?』

しかし、容疑者は平然と言葉を続けた。

『確かに容疑者ではあるけれども、最新型ウソ発見器の実験という観点から見れば協力者とも云えるでしょう?』

確かに…彼の同意なしに【EMMA】を使った取り調べを行う事は規則上出来ない。それは判っているのだが。

『それに…今の話は、どちらかと云えば、私は貴方よりも横にいる白衣の方に向かってしているのですよ』

そう云いながら容疑者の男は、町村の横に立つ仁来の顔を見た。

『お…』

これには流石に町村も言葉を失っていた。今の今まで取調室において主導権を握っていたのは間違いなく町村である。それが【EMMA】の登場と同時にアッサリと脇役に追いやられた形になっている。

『仁来さん…』

町村は明らかに不満の滲む声で白衣の技術者に視線をやった。当然、仁来は容疑者の要望などにべもなく却下するはず、町村はそう思っていた。

ところが、

少しの間、何かを考えるように黙って【EMMA】に視線を落としていた仁来の口から飛び出したのは、町村の予想を裏切る言葉であった。


《続きは追記からどうぞ》♪

 
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