話題:連載創作小説
まさか、面接そのものがダミーだったとは…。面接担当の三人は、マモルの用心深さにカメレオンのように舌を巻いていた。
マモル『窓のブラインド…降ろして頂けますね?』
この段に至っては、もはや三人ともマモルの指示に従うより他に道はない。
社長『仲本常務、頼む』
社長に命じられた仲本が窓のブラインドを降ろしてゆく。全てのブラインドが降りたのを確認したマモルは、ようやく椅子にその腰を下ろしたのだった。
マモル『ありがとうございます。これで向かいのビルから狙撃される心配は無くなりました』
社長『では早速面接を…と言いたいところだが、面接に来た訳では無いのだから面接しても意味はないし…』
マモル『ええ。僕はセキュリティをもっと強化するよう進言をしに来ただけです』
そう言いながらマモルは鞄の中から2枚のディスクとバインダーで綴じられたファイルを取り出し、机の上に置いた。
常務『それは?』
マモル『セキュリティ強化の為のマニュアルと、新しいファイアウォールのプログラムソフトが入ったディスクです。どうぞ、お納め下さい』
社長『それは非常に有り難いが…何故そこまでしてくれるのかね?』
マモル『先程も申しましたが…僕は或る人に頼まれてやっているだけで、詳しい事は何も知らないのです』
部長『そう、そこが気になってたんです。或る人、って誰なんですか?』
マモルが少し呆れたような表情を見せる。
マモル『おや…まだお気づきにならない?』
マモルの言葉に三人が顔を見合わせる。だが、口を開こうとする者は一人として居なかった。
マモル『仕方ありません。お答えしましょう。僕にダミーの面接を受けさせ、誰にも疑われる事なくファイルとディスクを受け渡しするよう依頼した人物は…』
三人がごくりと唾を飲み込む。
社長『…人物は?』
マモル『他ならぬ…守田マモルその人です』
三人の口がぽかんと開く。
部長『えっ、だって…守田マモルは君でしょ?』
思わず口走る小谷部長に、マモルが驚いたような仕草を見せる。
マモル『まさか…守田マモルは人前にのこのこと姿を現すような軽率な人間ではありません』
常務『えっ、じゃあ、君は守田マモルでは無いのかね!?』
マモル『はい、僕は守田マモルのダミーです』
何という事だろう。面接もダミーなら、面接を受けに来た人間もまたダミー。守田マモルという人物の用心深さは本当に底が知れない。
社長『すると、君はいったい誰なんだ?守田マモルの友人か?』
マモル『いえ、友人とは呼べないでしょう。何故なら、守田マモルの正体は誰も知らないからです。名前はマモルと男性っぽいですが、実際、男なのか女なのかも判りません。勿論、年齢や経歴も一切不明…守田マモルの用心深さは尋常では無いのです』
部長『…そう言うけど、君の用心深さだって相当なものだと思うけど。床に落とし穴のトラップがあるとか、普通は考えないよ』
マモル『いえ、違うのです。あれらは全て守田マモルの指示に従っただけで…だって、向かいのビルからスナイパーが狙ってるなんて有り得ないじゃないですか普通。しかもコロンビアの殺し屋とか…正直、自分で言いながら“何でやねん!”と突っ込みたくなりましたよ。しかし、守田マモルが“そう言え”と指示を出して来た以上、言われた通りにせざるを得なかった…とまあ、そういう訳です』
常務『ちょっと待ってくれ。今のの話を聞く限りでは、君はリアルタイムで守田マモルから指示を受けていたように取れるのだが…』
マモル『はい、その通りです』
常務『それはおかしい。この部屋には我々三人と君しか居ないんたぞ。どうやって君は我々に知られずに守田マモルからの指示を受ける事が出来るのだ?』
マモル『ああ、それはですね…』
おもむろにマモルは自分の口に手を突っ込み、何かを探るように少し動かした後、口の中から歯に被せる銀冠のような物を取り出したのだった…。
―――――
【追記】
本当ならば今日完結する予定でしたが…余りの蒸し暑さに完結が一回分延びてしまいました。
因みに本日の体感気温は6800℃。
体感湿度は92億%でした。
ここまで蒸し暑いと、人類の進化に影響を及ぼしかねません。
猿
↓
類人猿
↓
ガッ〇石松さん
↓
人間(現世人類)
↓
小籠包
…こんな感じで(/▽\)♪