話題:詩
遠い夏の午后三時
金魚のいない金魚鉢で
光だけが泳いでいる
‐10秒‐
小さく揺れる向日葵は
亡き妹の面影を映しては消える
‐15秒‐
あの夏に僕が失ったのは
本当は
古びた麦わら帽子と
針の動かなくなった腕時計
なんかじゃなく
きっと、もっと大切なもので…。
‐25秒‐
『抑え込み、一本!』
柔道家で詩人の彼の得意技は
横四方ポエム固め。
寝技で相手を抑え込みながら
頭に浮かんだ即興のポエムを
ローレライの人魚のような
魔力を帯びた美声で吟う。
彼の造り出すポエティック寝技世界に囚われた者は、詩を浴び続けたわき腹に美しい季節の花を咲かせ、汗にまみれた柔道着からは
麗しき愛の香りを放つという。
畳の味は初恋の味。
もう逃げられない。
いや、逃げたくない。
柔道がJUDO と呼ばれるようになろうとも、彼は詩人の心で相手をふわっと優しく抑え込む。
私がそんな柔道詩人と初めて出逢った遠い夏の午后三時。
苔むす夏の柔道場。ラムネ玉のような透き通った瞳が今も忘れられない…。
〜終わり〜。
…何だこりゃ?(◎-◎;)